第9話 vsリントヴリム 後編
なんとか16時に間に合いました。
懲りずに読んでみてください。
結局中編と文字数はあまり変わらなくなりました。
「何をしている?急げ!」
「ハ、ハハァ!」
そうして幹部たちは慌しく動き出した。リントヴリムを滅する狩場へ。
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ードッー
リントヴリムは破壊の限りを尽くす。そう言うプログラムをされているからだ。
破壊がリントヴリムの全てだ。
そしてこの集落にいるリントヴリム3体は気づいた。
この集落には人が居ないと言うことを。
リントヴリムはその上位種族ドラゴンの精神を生命を探すことに集中させた。
そうすれば言わずと見えてくるのだ。
何処に、どれだけの、人、命の反応が有るのかが。
何かが解ったようだ。
リントヴリムは駆け出す。正確には進み出す、と言った方が良いのかもしれない。
リントヴリムはしなやか、で強靭な四肢の無い体をくねらせながら前進する。
不気味な音が立っている。
鳥肌を立てる様な。
後ろの集落は、もう暗い。全てが破壊され、文明の痕跡がまるで無かった。
別の場所でも同じ様な事が起きていた。
例えば『この場所』では、リントヴリムが炎の吐息で集落を跡形も無く燃やし尽くしている。
『あの場所』では、リントヴリムが集落を喰べ尽くしている。
どちらの場所のリントヴリムも『此処に人っ子は1人もいない』と悟ると、生命の反応のする方へ向かって体をくねらせながら向かう。
そして、『この場所』では炎が消える事なく燃え続け、『あの場所』では集落の長屋などの残骸が大量に残っていた。
召喚されたリントヴリムはほぼ同時に、向かったのだ。全てのエトルリア人が非難しているメナス集落へと。
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「え?リントヴリムコッチ来んの?」
噂と言うものは直ぐに伝わる。
先程幹部たちが狩場作戦を実行に移した。
通常ならわかる訳がない。
民に知らせたら誓って混乱すると思った幹部たちは民に勘付かれない様、水面下で行動していた。
だが、民たちも馬鹿ではない。少しだけ、本当に少しだけだが、微かにメナス集落を取り巻く空気が変わったのだ。
それはリントヴリムが近づいてきたことによる空気の一変ではない。
メナス集落の中心、つまりは指導部の纏う空気が変わったのだ。
でも、それだけなら「え?リントヴリムコッチ来んの?」とは噂にならない。
と、何処かで勘ぐるったヤツがいたのだろう。
「もしや」と言うものを妄想として膨らませ、誰かに伝えた。
愚かにそれを真に受けてしまった誰かさんがまた広める、広める、広める、という感じで繰り返していったのだろう。
「は、マジで?リ、!?」
結界の維持に全力を注ぎ、互いに励まし合い賑わっていた広場に静寂が広がる。夜じゃないのに。
「嘘、だよな?リントヴリ?」
その場にいた全員が固まった。思考停止じゃない。物理的に体が固まったのだ。
ようやく状況を理解した者から足が震えだす。
そりゃそうだ。今までずっと自分らを苦しめてきたリントヴリムが5体も一斉にやって来るのだから。
「で、噂によれば、司令官がワザとリントヴリムをこのメナス集落周辺に誘導するらしいぞ」
事実である、て、コイツダァぁぁぁぁぁ!!!!
全ての噂をお前が広げたんだよなァァァァ!なぁぁぁぁぁ!?
と、とにかく、全ての噂を広げた張本人が発見されて良かったと思う事にしよう。
「は、アイツふざけんなよ!昔から秀才だったのは認めるが、それだからって全エトルリア人見殺しにしろってんのか!?」
「ふざけんなぁ!」 「ふざけんなぁ!」 「ふざけるな!(NGワード)!」
NGワードさえ除けばふざけるな、と言う言葉しか聞かない。
そろそろ起こりそうだ。何がか?
そんなの決まっているではないか。どの歴史でも必ずトップが混乱すると起こるアレ、暴動だ。
「し、司令官殿。このままでは、リントヴリムと戦う前に、エトルリア人が内部崩壊…ッ!?」
司令官の同僚の1人が司令官に諫言をしようとしたが、それは司令官の手によって止められた。物理的に。
「それ以上言うな。それに、我々が何かしなくても、エトルリア人の中にはこの暴動を抑えられる者が多少存在する」
司令官は至って冷静だ。
「で、ですがもし、いなかったら」
最悪の事態を同僚が言った。
「もしその者が居らず暴動が起きたら、全族長たちに兵団を動員してもらうしか…」
「…念の為言っておくが、私は正気だ。『神』も仰っていたであろう。『これしきの事もどうにか出来ぬのでは、えとるりあ人は後200年には滅びる』と」
そこまでは言っていない。唯、『俺の力を借りる様じゃどうせ俺が居なくなったら直ぐに滅びる』と偉っそうーにカミラ・ウェーズリーその人が言ってたのは事実だ。
「で、では現れなかったら」
(恐らくこの場では、もうエトルリア人は助からないだろう、と司令官殿は言うだろう)
「ああ、私は家に帰ってあらかじめ準備しておいた荷物を持って南に逃げる」
言わなかった。それに今なんか、とんでも発言を司令官がしてしまった。
南に逃げる?パスポート持ってんのか?それよりも、祖国的存在であるエトルリア見捨てんの?お前。正気?
「な、成程。悪くない。確かに、今世界的に見て安全なのは南のみですしな」
納得するな!とんでも発言を追及しろ。
「だろ?」
調子に乗るな!司令官。そろそろ酷い目に遭うぞ。
「おや?司令官殿、外の空気が…」
違和感を持った同僚が広場の見える窓を覗いてみた。
すると、少女1人が広場にて、エトルリア人に訴えかけていた。
♦︎♦︎♦︎
「き、来たぞ。待て、まだだ。まだ撃つな」
狩場①
ここの狩場には3体のリントヴリムがやって来ていた。
「フー、フー、フー」
全ての兵士が武者震いをしている。当然、かな?
何回か語った気がするが、エトルリア人のリントヴリムによる被害は甚大なものだ。
当然、エトルリア人は、家族を失って、全てを失って、リントヴリムへの復讐の気持ちだけで生きている者が大半だ。
ーズド〜ンー
ーーーーーー…ーーーーーーーーー
えらいシュールに落ちた。
エトルリア人からしたらラスボスなのに、リントヴリム、えらいシュールに落ちた。『落ちた』と言うよりは『堕ちた』。
そして、哀れな事に、堕ちたリントヴリムには気を休める間も無く、エトルリア人の怒り、つまりは一斉攻撃が降り注ぐ事になる。
「ぃ今ダァ!怒りを、1500年の怒りを!リントヴリムに。憐れみなどいらん!殺れぇ!」
最早エトルリア人が悪役でいいだろコレ。別にさ、リントヴリムはプログラムされてるから人間食べるだけで、望んでこうなった訳じゃ無いんだよな。
さらに言えば、元々はエトルリア人がヤバい事したから迫害されてるんだろ?
被害妄想。
と言う様にエトルリア人を悪く言ってはいけない。
エトルリア人もその日を生きるのに必死なのだから。
エトルリア人はそれぞれの奥義を放つ。
別の場所でも、同じ様なことが起きていた。
リントヴリムの叫び声が響き渡る。
リントヴリムの眼は「憎しみ」だった。
リントヴリムの体には矢、槍、剣、様々な物が突き刺さっていた。
リントヴリムは遂に力尽き、灰となって消えていったのだった。
そうして、エトルリア人は、リントヴリム5体討伐に成功した。
「なぁ、意外に楽勝だったな」 「ああ」 「俺たちも出来るんだな」
と言う歓喜?の声が聞こえて来た。
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[リントヴリム5体討伐成功より少し昔に戻る(時間超越)]
「クッ!こんなにも攻撃を浴びせかけているのに、どうしてだ!どうして未だに1体もリントヴリムを倒せない!」
「それよりも、速くリントヴリムを倒し、安全を証明しなければ、エトルリア人は内部崩壊しかねないぞ」
リントヴリムに自身らの最終奥義を浴びせながら話し合う司令官の幹部。
そんな時間あるんならもっと頑張れよ。と言ったらいけない。
「広場にいる民を少し連れてこれば」
「…いいだろう。連れて来い」
彼らは忘れている。リントヴリムが広場に出現しない理由を。
「あ、隊長!危ない!」
幹部の部下がリントヴリムの火炎放射から、庇うように幹部の盾になった。
「も、モブAェェェェェ!」
酷い扱いである。幹部よ。お前も一応はモブなのだぞ。
ついでに、なんか火炎放射が消えている。
相殺、ではない。中和、でもない。破壊だ。
そして、魔法を破壊できる存在はエトルリアの森ではただ1人。
「か、『神』?」
違う。あいつは此処にはいない。
と、なると、
「フ、なんとか間に合ったな。ユイカ」
このガキはルーカス。そう【無限破綻】だけで無双する素質があるルーカスである。
(あ、あの時の偉っそーなガキィ!?それと、メナス族長の一人娘?何故ここにいるのだ?そ、それに、その後ろにいるのは!?)
広場にいたエトルリア人である。
ユイカがなんか説得(人心掌握)したらしい。
人心掌握、それは例の歴史的ペテン師たちも使ってきた史上最強の兵器。
ユイカはソレを能力では無く自力でやってのけた。
ルーカスとは大違いである。
「さあぁさあぁ、さぁ。リントヴリム、集団リンチしましょう」
沈黙が下りた。
「ルーカス、お前、悪役だな」
周りの大人たちが言った。正しい。
(ルーカス、お前はマジで悪役だから、言葉に気をつけた方がいい)
何処からか声が聞こえて来た。聞こえるのはルーカスだけ。
(申し訳ありません。神』様)
カミラ・ウェーズリー、偉大である。
そこからは急ピッチで進められた。
既にvsリントヴリムは消化試合とばかりに、速やかにリントヴリムは駆逐され、祝酒で乾杯が為されたのだった。
だが、エトルリア人たちは忘れていた。と言うか知らなかった。
リントヴリムはもう1体いることを。
そして、結界の無いメナス集落の広場には、いつでも最後のリントヴリムを出現させることが出来るのだ。
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