第7話 vsリントヴリム群 前編
次が中編か後編になるかは未定です。
ご了承ください。
「なんですと?昨日放ったリントヴリムが帰ってこない?」
男は思考する。もしかしたら、エトルリア人が対リントヴリムの魔法、もしくは兵器を開発した?
男はその様なありもしない仮定の事態に戦慄を覚えた。
エトルリア人は今はあんなんだが、2000年前には西側諸国全てを領土としていたのだ。
どの人種もそうだが、勢いに乗ると手がつけられなくなる。
本当ならばここで根絶やしにしておきたいところだが、さっきの仮定が正しかった場合、1体の製造にたがくの費用がかかるリントヴリムが全滅する危険がある。
それは国家として考えても、国際的安全的にも危うい。
そんな博打には個人の判断では決めかねる。
新型の対エトルリア人魔獣を作るにしても多額の費用が掛かるし、開発の間に新型への対抗手段を手に入れる可能性もある。
「いや、現実的に不可能だな」
前例から見ても不可能だ、そこへと行き着いた。そして、
「リントヴリムの大群をエトルリアの森に送ろう。そうだな、7匹ぐらいがいい。そうそう1匹目のリントヴリムは15時42分に変更しろ」
近くにいた部下に向かって命令を下したのだった。
「エトルリアを下したと言う名誉を、私の手に」
野望を胸に。
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エトルリアの森 現在時刻、14時。
「す、素晴らしい」 「御、見事」 「ようやく、ね、むれる」
ードサッー
5人の族長たちが倒れた。流石に7時から昼御飯を食べずに14時まで会議をしてたら死ぬよな。もはや最後の方になるとスタミナのない2人の族長は話す事が出来ていなかった。
そりゃそうだ。7時間。永遠に感じる作戦会議。
1時間会議しても「まだ後こんだけ?」となるのだから。
ちなみにで、誤解を解こう。決して殺人が起きたわけではない。
俺が殺したわけでもない。そもそも俺は族長たちの部屋いなかったしな。
「昼飯ぐらい奢れよ」?俺は疲れてるしエトルリア人の自立の為にも!
さっきまでずっと寝てたしな。
「だ、大丈夫か?」
俺は念の為聞いた。死んで、はないよな?
沈黙。
寝てるな。これ。
後リントヴリム襲来まで2時間か。1時間睡眠、残りの全1時間を配置に使う。それで間に合うかな。
で、作戦はどの様になったんだ?
俺は作戦の時に使ったのであろう、駒が置いてある机、そして『リントヴリム完全攻略計画』と書いてある紙を見た。
『完全攻略計画』、ゲームじゃん。
気を取り直して、
計画は?
俺は『リントヴリン完全攻略計画』と机の上を見比べた。
「…、これは」
俺は口元にうっすらと笑みを浮かべたのだった。
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でもな、昼食食べないと肝心の16時に倒れるかもしれない。
恐らく彼ら族長は重要な戦力になる。と言うか俺が何もしないからいわばリーダーである、ですので、彼らには可哀想だが昼食を食べてもらい16時の決戦時に倒れないでほしい。
「起きろ」
心を無にして、【威圧】。
「な、何じゃぁ?」
すると続々と族長たちが起き始める。
「は!神!」
「なんじゃと!?」
「「「「「ははぁ!」」」」」
一体いつのまにか『俺は神』と言うのがエトルリア人の共通認識になったのだろう?
お前らの祖先がリアルゴットを信仰してたのに、お前らはエセゴットを信仰してどうする?
俺が消えても途方に暮れたりするなよ。
そんなんだから『エトルリア人撲滅』が世界共通認識になったんだぞ(多分)。
「エトルリア人逝ってやがる」の認識ができてしまったんじゃないのか?
そうなるとエトルリア人が迫害受けてるのは半分は自業自得?
比較的そこら辺は寛容な俺も「こいつら等ヤベェ」って思ってるからそうなのだろう。
「とりあえず、族長たち、君達は昼食食べなよ」
「し、しかし」
何を戸惑う。神の前でもありがたいものは受け取ってもいいんだぞ。
ちなみに族長たちの頭の中では、
(我々の問題なのに神からアドバイスを貰うのはどうなのだろうか?今、もしや試されているのか?いや、そもそも神の決定事項に対してこの様な疑問を持つことは不敬なのでは?)
という思考回路が成されていた。だが、当然の事ながら読心能力を未だ有していないカミラがそんな事知る余地もない。
「いいのか?このままじゃリントヴルムに負けるぞ。せっかく考えた作戦も宝の持ち腐れだな」
俺はわざと挑発する様に言った。乗ってくれないかな。族長たちは悩む。
(そうだな。『神』の言う事が間違ってる訳ないか)
「確かにそうですな。分かりました」
あれ、乗るわけでもなく納得してゾロゾロ出てくのか。
「おい、昼食の用意をしてくれ。食べたら各族の指揮官級と作戦会議じゃ」
族長が召使に命令した。
まあ、俺はマジで何もしないから頑張りたまえ。エトルリアの民諸君。
俺は、また寝るとするか。
寝たらダメか。邪魔になるし。少し散歩しよう。
俺は屋敷を出た。
「か、神だ!」
なんだい?ガキ(ガキと言っても俺より少し年上、17歳ぐらい)。俺は今からどっか行くんだよ。
さらば!
ーフォンー
ベージャヌさんを見てコツを掴んだ瞬間移動を、俺は使う。
「カミラ様」 「…」 ーフォンー
「カミラ様」 「…」 ーフォンー
「カミラ様」 「…」
エトルリア人ヤバくね?素で引いちゃうよ。殺すよ。
と、いけないいけない。
「なんだい?ガキ。俺は今忙しいんだ。集落に戻ってくれないかな?」
少しだけ威圧しながら言った。
威圧の使い方のコツを掴んだ俺の威圧を受けたら、もはや一般人は膝を折ってしまう。
ガキなら倒れ伏してしまうだろう。
実際このガキも倒れ伏s…てない!?
「おいガキーーー」 「美しい」
沈黙が下りた。美しいだと?まあ、正しいが、前世が男だからそう言うのは望まないのだよ。
「さすがは神だ!カミラ様、私めをカミラ様の下僕にしてください!」
え、やなんだけど。
いや、別に下僕にしてもいいんだよ。だけどさ、下僕として連れ歩いたらさ、なんか変なこと言いそうなんだよ。
「カミラ様は神なのだ!」とか。そうすると俺の人物像に誤解が生じてしまう。
だが、ここで「え、やなんだけど」と言ってしまったら神ということで通っている俺の立場が終わったワ状態になるかもしれない。
だから、
「いいよ。ところでさ、どうして君神じゃない俺に仕えたいの?」
これさ、神じゃないってバレたら死神特攻されかねないから一応の確認である。
「オーラが凄いんです。貴女の下に着いたら私めは特に何もしなくても勝ち馬に乗れる。そんな気がしたんです」
目を輝かせながら言われた。←プレッシャー
「あ、そう」
理由しょぼくない?死神特攻絶対されないじゃん。神じゃないってバレても。聞いて損した気分である。
ま、まあ部下が増えるのは良いことだ。
だけどな、個人的な願望として、強い部下が欲しい。
「じゃあ、君には部下になってもらう。名前は?」
「ルーカスです」
ルーカス。意味は確か、光。まじかよ。目の中に持っているものをそのまま表している。
名前ってすごいな。
他にも『南イタリアからきた男』と言うのがあるらしいけど。あんま変わらんだろ。
「じゃあルーカス集落に戻って」
俺は集落の方を指差した。
「は?」
「ん?」
決して甘い雰囲気のないタイプの沈黙。
「何故ですか?私めは下僕にしてもらえないのですか?」
なんだ?しつこいガキだな。ルーカス君。
「つまりだよ。俺の部下になりたいのならリントヴリム1匹殺して。別に殺さなくてもいいけど、一応部下の実力は知っておきたい…」
「勿論ですとも!リントヴリムごとき2、3匹余裕で倒しますし倒せますとも。では!」
ーフォンー
食いつくの早いな。やっぱり、ガキだな。いや、俺もあれくらいの年頃の時はあんな感じだったのかな?
転生して16年経つのに前世に想いを馳せる俺、どうなんだろうな?
というかルーカス、お前、瞬間移動使えたんだな。
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「以上である。配置に着け。エトルリアに栄光を」
「「「「「「エトルリアに栄光を」」」」」
もうじき16時。
リントヴリムが襲来する時間である。しかも、今回は7体。リントヴリム、昨日破壊された個体を除けば全戦力の7体である。
[ヘコ族集落]
ーフォンー
リントヴリム1体が空間転移された。そして、近くの小屋にはエトルリア人観察員。
(1体、か。と言うか、16時じゃないじゃないか。急ぎメナス集落へ報告しなければ)
ーフォンー
観察員も空間転移した。
「何!?16時じゃないのにリントヴリムが出現したのか?」
「場所は?」
「ヘコ集落です」
その時、指揮官たちは少しだけ冷や汗を額に浮かべた。だが、すぐに思い出し、冷静さを取り戻した。
「どうしますか?距離を置きますか?」
観察員が聞いた。
「大丈夫だ。まずは確実に1体持っていく。だから我らは仲間を信じて結界魔法に徹すればいい」
指揮官が自身ありげに言った。
「それに、リントヴリムはここには来んしな」
その場にいた全員が頷いた。
実際に、ここはメナス集落。だが、いつもと違い多くの人がいる。その人々は決して避難しに来ているわけではない。
結界を張りにきたのだ。
空間転移は結界の張ってある場所には出来ない。それを活かした戦略をとったのだ。
そして、エトルリア人集落の中でも真ん中に位置するメナス集落に全てのエトルリア人を集めることで各集落に行きやすく、そして他の集落を盾と使うことで圧倒的に守りやすくなっている。
エトルリア人を生かすことだけを考えたのである。
「ところで、ヘコ集落には誰を送ったのです?」
観察員が聞いた。
「ああ、実は、息巻いて『リントヴリムぶっ殺す』と言ってたガキがいたからそいつと、戦い慣れているであろうヘコ族魔道士部隊、ヘコ族弓矢部隊に行かせた」
「ちょっ!?」
観察員が驚いた様に言った。何故なら、魔獣退治のパーティに必要な『あの存在』と後衛の比率が圧倒的に偏っているのだ。
ちなみに『あの存在』とは前衛である。じっさい魔王
しかも、今回はエトルリア人を生かす為の戦いであるため、1人の損失も軽く見てはいけないのだ。
それなのに、と言いたそうな観察員に向かってヘコ族長が言った。
「我だって言ったさ。ガキに。『ヘコ族部隊は1人も殺させるなよ』と、だがガキは、『心配に及ばない。この戦闘はカミラ様の威信が掛かっておるのだ。1人も死なせん』と意味わかんない事を言いおったのだ。
しかも『神』を本名で呼んで」
「な、なんと」
観察員はもはや呆気に取られており、さっきの話を半分も聞いていない。
そして、
(そんな自信があるんなら今までも頑張って戦えよ)
と思っている。
だが、ヘコ族長は、
「心配になって『神』に聞いてみたのだが、『あー、あいつは多分大丈夫っしょ。だってあいつ、どういう訳かさ、能力持ってるんだよね』と言っておられた」
「は?」
観察員の目が点になる。これは観察員がおかしいのでは無い。目が点にならないほうがおかしいのだ。
今まで散々リントヴリンにやられて来たエトルリア人の中に、しかも1000年間ずっと現れてこなかった能力持ちがヒョコンと登場したのだ。
「本人は何故今まで気づかなかったのですか?」
観察員は聞いてみた。何故だ。このガキが気づいていたらもっと救える命があったのではないか?と。
実際に、この観察員は家族を全員リントヴリンに殺され、しかも目の前で食べられている。
「能力を発動するには、強力な意志が必要らしい」
「!」
(能力を使うには強力な意志がいる?では、そのガキの強力な意志とはなんだ?)
観察員はルーカスの『カミラ様に認められたい』という意志を知らない。
「ん?ちょっと待ってください。と言うことはそのガキは今…」
「ああ、きっと先頭に立って戦っていることだろうさ」
♦︎♦︎♦︎
[ヘコ集落]
「「「防御魔法」」」
「「「魔法弓矢」」」
後衛となるヘコ族部隊が後ろから一方的にリントヴリムの攻撃を防御、射撃し、その部隊たちの前には前衛となるべきルーカスが先頭に立って戦って…、
いなかった。
ルーカスはどこにいるのか?
少し魔導士部隊の後ろの方にある小屋を見てみよう。
なんと、ルーカスが、ドーピングをしていますよ。
(薬を飲んでいる訳ではありません)
(カミラ様に認められるんだッ!)
という思考回路を作っています。
(お、も、もちつけ!リントヴリム一体ではカミラ様に失望されてしまう。だから、最低でも3体は討伐しない と)
勿論だがそんな事は無いしあり得ない。そもそもカミラ自身、鉄壁を誇るリントヴリムは最大でも2体しか討伐できない。3体目を討伐しようとしても魔素切れで気を失う。
(しかし、3体討伐する為には1体1体にどれだけ消耗しないかが重要だ。つまり、出来るだけ一撃で仕留める!)
「ク、防御魔法がもう限界だ。あの偉そうなガキはまだか?」
魔導士部隊の隊長が怒りながら言った。
「ここにいますよ。隊長さん」
(ポン、と肩に手を乗せるな)
隊長はグッと怒りを抑えた。
「今からオレがどうにかしますから、ちょっとだけ防御魔法を中断して、必殺の攻撃魔法の準備をして下さい。オレが『今だ』と言ったら放ってください。じゃ」
そう言ってルーカスはリントヴリムの前に出たのだった。
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