第5話 魔獣狩り②〜兼会議
「もはやこの話に魔獣狩り関係ないよな」そう思う回となってしまいましたが、読んでみてください。
宮殿だろ、これ。
前世で宮殿の跡はこんな感じです、っての見たことあるぞ。
とにかく、剣だ。剣。
ちょっと接近戦が今の俺だとキツすぎる。
と、探していたら案外すぐに見つかった。
そりゃそうだな。宮殿なのに護衛の兵がいなかったら王様、すぐ殺されるだろうしな。
だが、錆びついていた。
どれだけ昔の宮殿なんだよ。
と、ここで役立つのが【反逆】。
何を望むのか?剣の錆を無くすことを望む。
「無駄遣いだ」と思っているそこの君。違う違う。これは無駄遣いじゃない。
有能過ぎるこの【反逆】が悪いのだ。なんとも罪深い。
剣の錆を取ることって何も反逆してなくない?
ふとそう思ってしまったことは秘密である。
そうして剣の錆を取った俺は歩きだしたのだった、が、
ートスー
俺じゃなかったら見逃してたね。矢が俺の横を通過した。
知性を持つ魔獣が、この森にいる!
負ける気がするな。戦ったとしたら。だって俺が今まで戦ってきた魔獣は全て知性を持っていなかった。
(と思う)
ので攻撃がワンパターンで対処できた。だが、知性があるのなら学習する。効かないと分かったらすぐに別の方法を使ってくるだろう。
すると、【反逆】をあまり使い慣れていない俺は対処できないだろう。
だが、逆の見方をしたら、知性があると言うことは可能、不可能が分かると言うことだ。
だから勝てないと分かったら逃げるか、降伏するかもしれない。
知らんけど。
「誰だ?誰かいるのか?」
俺は【反逆】で威圧しながら聞いた。返事はない。だが、代わりに俺を狙い撃ちにしたやつの位置が分かった。
前じゃない。後ろだ。
けど、前の方にもいるな。
俺は自分の周りにシールドを展開する。魔力によるシールドは魔素の消費が大きいがこれは能力だから問題は無い。
「〔火炎俥〕!」
黒髪の少女が飛び出してきた。俺と同年代だろうか?
あの、魔獣だと思ったら人間が飛び出してきたんですが?
すると炎の魔法が俺に向かって一直線に飛んできた。
と思ったら、急に方向転換したではないか。
馬鹿だな。そっちの方はシールドだ。魔法は絶対通さない。
俺は動かない。動く必要がないからな。
でもなぁ、何かが引っ掛かる。知性がある生物というか人間だ。人間特に魔法が使えると言うことは魔法使いの類か?そんな者が俺のシールドを見て魔法を通さないと気づかないのか?
一応俺はシールドを解いて炎の魔法に対抗することにした。
俺は剣に野望の力を送り込んだ。剣が漆黒にひかる。
車輪と剣がぶつかる。
衝撃波。
ん。
ちょっと待て、これはーーー!
俺はあまりのことに驚愕した。
人体に害がない。
ただ、押し出すだけだ。
何故押し出す。
後ろ!?
俺は思い出した。
後ろには矢を撃った人間がいることを。
「消えろ!悪魔!〔星流弓矢!」
後ろの弓矢が星の様に光った。
マズイ。後ろの方にシールド展開をーーー。
矢が放たれた。光の如くの勢いで俺の背中へと迫った。
シールド展開が間に合わない。せめて横へとーーー。
「甘いな」
あ、さっきの黒髪の少女。俺の前に佇む姿は敵への脅威を植え付ける。
「〔火炎獅子〕!」
終わったわ。
まず俺が思った言葉。
にしても最後反逆者として生涯を終えるのか。なんか、やだな。
だから死ねない。
覚醒もどき!
【反逆】!
奴らの魔法に使っている魔素を吸い取る。
「な、何が起きたんだ!?」
フフ、少女よ。やはり困惑するか。そう言えば、まったく剣使わなかったな。
今回運が良かっただけだな。うん、そう言うことにしよう。
「ま、まだだぁ!政府の犬が!死ねぇ!」
少女よ。もう諦めろ。お前たちじゃ勝てない。
「俺は政府の犬じゃない。誤解だ!」
俺の必死の弁明も虚しく、抵抗。された。
10分後
「死ねぃ!政府の犬が!」
剣を持った男、他の人より身なりが豪華だから指導者か何かだろ。
「だから!政府の犬じゃないっての!」
峰打ち!
ードッー
剣を持った男は倒れた。白眼剥いてるよ。
「父上〜〜〜!」
さっきの少女の父親だったらしい。
「よくも。よくも父上を!」
少女がこちらに向かってきた。
近づいて、峰打ち!
と思わせて何もしない。
「なんのつもり?」
怖い怖い。睨まないでよ。
「誤解なんだよ。俺は政府の犬でも何者でもない。少なくとも、お前らが思っている政府の犬ではない」
「結局は政府の犬じゃない。矛盾してるわよ」
適切な指摘をありがとう。だけど、そこは俺も譲るつもりもない。だって俺政府の犬じゃないもん。どっちかと言うとその政府の犬に追われてるんだよ。
「byケレムの手下たちに追われてるんだ」
「ケレムって、誰?なんかムカつく名前ね」
少女とは意外にも息が合いそうだな。この勢いに畳み掛ける!
「とにかくさ、同じく政府の犬に追われている身通しのよしみだ。お前らが嫌ってる政府の犬を倒すのを手伝ってやるから、俺を、信じてくれよ」
「・・・分かったわ。信じるけど、決して馴れ馴れしくする気はないからね」
「感謝するよ」
そうして俺は少女の集落へと招待されたのだった。
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あの、この屋敷豪華なんですけど。
「改めまして、我らエトルリアの民は貴女を歓迎します。名前は?」
「ありがとうございます」
目の前に果物が出された。俺はありがたくいただく。
「あ、カミラです。以後お見知り置きを」
「そうでしたか。私はユイカ、エトルリアの民の族長、タイセイの娘です」
「ユイカさんですか」
「ユイカでいいわ。貴女に『さん』付けで呼ばれると何故か背中がゾッとするからね」
ひ、酷くない?確かに前世はニートの男だけどさ。
気を取り直して、
「じゃあユイカ、さっき気になったんだが、この集落、色々と破壊されてる?」
「事実ですが、部外者の貴女に話すわけないでしょ!?」
何故か沈黙が下りた。俺、言ったらダメな事言った?
自覚がないな。
「いや、俺はなんとなくで言っただけで」
ゴニョゴニョ言ったが聞き入れてもらえませんでしたとさ。
「いいですか?この集落にも色々と事情があってですねーーー」
あっさり話し始めた。
ユイカは話し始める。
「エトルリアは元は帝国でしたーーー」
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エトルリア帝国
エトルリアの歴史と言っても、文献で伝えられているのはエトルリア帝国崩壊直前からですが、聞いてください。
その様に始まった。
エトルリア帝国は神教を信仰する宗教国家でした。
帝国崩壊の時は2000年前。英雄戦争終結の刻です。
ちょうどその年、最後の五天帝、尭帝が、英雄戦争に敗れて処刑されました。
そして同時に、尭帝に味方していたエトルリア帝国は敗戦国となりました。
通常ならエトルリア帝国は多額の借金を背負い本当の意味で終戦する筈でした。
ですが、時の連合国軍は違い、『完全服従』か、『民族玉砕』か、その二択を迫ってきました。
『完全服従』は『民族皆奴隷』と同じだ、そう考えた当時のエルトリア国家首脳陣は徹底抗戦を選択。
これが世に言う聖杯戦争です。
神の支配から解き放たれた東、北、南の全てを敵に回してしまった西のエルトリアは当然のことながら大敗し、帝国軍は後の神聖ロード王国初代国王、ロード率いる解放軍に敗れ、帝王はロードに斬られました。
皇族は三族まで皆殺しにされました。
「!!」
はい、ロードはその功によって北側諸国に巨大国家を作る権利を連合国軍からもらったのです。
今知りましたね。
とにかく、重要なのはそのあとです。
前振りが長いですね。
意外にも、連合国軍はエトルリアの民を侮蔑的には扱いませんでした。
宮殿こそ壊しましたが、首都以外の民はそのまま定住し、首都圏の民は新興国家の都市部に移されるだけで済みました。
ですが1500前、首都圏の民が居たオリビア共和国周辺に大量の魔獣が出現したのです。
オリビア政府はその原因をエトルリア皇族の怨念と断念。
実際は政府の魔法兵器開発が原因で起きたのですが、オリビア政府は国民の不満を別方向に向けるためにエトルリア人を犯人に仕立て上げました。
首都圏の民は半数が奴隷化され、もう半数は宮殿跡地に居住区を移されました。
魔獣は数年で駆逐されたのですが、「同じ過ちを繰り返さない」という言い訳を使ったオリビア政府はエトルリア人絶滅を試みて、居住区に意図的に大量の魔獣を送る様になりました。
そして現在に至る。
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「ん?てことは、本当はこの森全体が居住区ということ?」
「はい、ですから檻で覆われているはずなのです。ですから、何故貴女が入ってこれたのか分かりません。それもあって我々エトルリア人は貴女を警戒してるのです」
檻、なかったんですけど。
「あの、檻、なかったんですけど」
「ああ、なら貴女の勘違いです」
「そっか、後さぁ、俺のこと普通にカミラって呼んでくれよ。貴女、っていう呼ばれ方は慣れてない」
「了承しました」
意外に素直だな。
「で、その魔獣を倒せばいいんだろ。どこにいるの?」
「カミラは馬鹿なのですか?」
あ?カチンと来たね。
「魔獣は毎日来るのですが、16時です」
「16時?」
「はい、分かりませんか?午後4時です」
「そ、それくらい分かるよ」
「だったらふざけないで下さい。こっちは民族の存続に関わるんですよ」
確かに、今のは悪かったな。真剣に考えよう。
「すまなかった。続けてくれ」
俺は謝罪した。
「ん?もう16時過ぎてるじゃん。今日のはもう倒し終わったのか?」
「違います。来たのなら集落がもっと大きなダメージを受けてますし、死者が出ます」
やめろ、呆れた様に言うな。
「なあ、もしかしたらなんだけど、俺ここに来る途中に倒したかもしれない」
「はあ、そんな訳ないでしょう」
ええぇ!?
「カミラが倒したのは元からこの森に棲む魔獣ですよ。最近は減ってきましたが」
元から。
「と言うことは、環境には無害なのか?」
「はい、環境を壊すのは元々この森にいなかった政府の魔獣兵器と森に棲む魔獣を殺す者、貴女だけです」
俺、か。俺は目を点にした。
「ちょっと待て、てことは今日来るはずの魔獣はどこに行ったんだ?」
ずっと気になっていた疑問。
「恐らく別の集落を襲いに行ったんでしょう」
にしても、
「じんだな」
突祭に口から出た言葉はそれだった。
「え?何か言いましたか?」
「りーじーだな」
「もう一度はっきり言ってください」
「いいよ、『理不尽だな』って言ってるんだよ」
「!!」
ユイカは驚きを隠せない様だ。
「どう言う意味ですか?」
何故かユイカが聞いてきた。分からないのか?
「だってさ、いや、俺は初めてだから、あんまり分からないんだけどさ、ユイカ達ってさ、昔から、ずっと差別されてきたんだろ」
「?そうですよ。昔からずっと。それに、私たちエトルリア人もずっと理不尽だと思っていますよ」
「思ってないだろ。だって、何も変えようとしてないじゃないか」
「「「「!!」」」」
その場にいた全ての人間が何かに気づいた様だ。遅いんだよ。
「な、何も変えようとしてないんじゃない。変えれないんだ」
その場にいた1人が言った。
「だけど、変えようとする努力はできるよな」
「!」
よし、なんか言ったらこの場を一時的に支配できたぞ!
みんな泣いてるし。
この機会を使って、
「そこで、だ。この森の全ての集落の長を集めて、政府の魔獣が二度と来ない様、作戦会議をしたい。ユイカ、出来るか?」
勢いよく言ったが、ねえ。勢いだけでは絶対解決できないので聞いてみた。
「もちろんよ。今すぐ父上に頼んで長たちを集めてもらうわ」
ち、父上?そう言えば!
「ユイカ、の父親、大丈夫だったか?」
「ええ、あれからすぐ起き上がったわ」
頑丈かよ。マジで?あれ一応本気でやったんだが。俺はユイカの父親の頑丈さに恐怖、戦慄してしまったのである。
続きをもっと良くしたい!
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