第4話 魔獣狩り①
本当は1話で『魔獣狩り』は終わらせるつもりだったのですが、もう少し続きそうです。
カルジア帝国
500年の歴史を持ち、北側諸国の盟主的立ち位置にある歴史的大国。
2000年前には原型となる国があったとされている。その国の名は神聖ロード王国。
英雄戦争の時代、ロードという名の者が戦乱の中仲間と共に建てた国だ。
だが、建国当初のロード王国は別に強くなかったのでロードの仲間は貴族になるまでの権力を持てなかったので貴族になれなかった。
簡単に言えば初期のロード王国は完全実力主義。
時は流れ500年前。
ロードの子孫たちは着々と王国の版図を広げてゆき、遂に、太祖武帝こと覇王カルジアの代に全ての北側諸国の服従に成功した。
やがてカルジアは死に、子のシルドの代となった、が、
シルドは王になるのを拒んだ。
代わりにシルドは北側諸国にカルジア連盟という国際同盟を結ばせ自国をその盟主とした。
そしてカルジアの帝国という意味で神聖ロード王国をカルジア帝国と改名したのだ。
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「何してんだ?」
ベージャヌさんが聞いてきた。うざいな、なんか。
さっきもこんなこと聞いてきたんだよな。
「本読んでるだけですよ」
「何それ?面白いの?」
「面白いわけないでしょ。もっと軍事力ランキングとかネタバレみたいですよ」
「あー、ネタバレね。俺はあまり好きじゃないね。マトウが言ってたんだけどさ、それって普通は分からないことを分かるやつだろ?この世界に例えるとあまり敵の情報を知れてもいい事ないし、初めから勝てないって思うのがやなんだよね」
「そう言う考えもあるんですね。ところで、軍事力ランキングに対する感想は?」
「特になし。お小遣いで買いなさい」
えぇぇ、と言うかこの世界にもあるんだ。軍事力ランキングの概念。
「カルジア帝国のランキングはどれくらいなんですか?」
聞いてみた。
「しらね」
そっけなさすぎでしょ。酷くない?
「あのなぁ、この世界はお前の前世と違ってこの世界では個人の力が戦闘を左右するから、しょっちゅう変わるんだよ。軍事力なんて」
ちょっと流そうか。しかし、なんでこの人は俺が転生者であることを知ってるんだ?
『次に参ります列車は 19時26分発 西側諸国関門行き 特急ノースドレイク です』
言い忘れていたが、
ここは帝都シルロード、シルロード駅。都営地下鉄や国内線、国際線があるカルジア帝国随一の鉄道の駅である。
広さは東京駅2個分。
「そう言えば、西側諸国関門までどれくらい掛かるんですか?」
「んー、だいたい5時間くらいだね。もう少しくらい速く行くこともできるけど、その列車に乗る金なんてない」
・・・この人、貧乏だな。
「ベージャヌさん、あなた貧乏でしょ」
聞いてみた。すると、
「フッ、やはりな。イケメンは悩んでいる時の顔と悩んでいない時の顔の落胆が大きいのだな」
し、しまった。勢いが増してしまった。
いやさ、この人元男の俺でも見惚れるくらいのイケメンなのに所々の発言で人物像をダメにしてしてしまうんだよな。
「あ、列車着きましたよ」
列車は普通の電車というより新幹線。
にしても、5時間、か。・・・速くね?
「あの、考えたら5時間で着くって速くないですか?魔法の技術では無理な気が」
と、ぶっちゃけって本音をぶつけてみた。すると、
「うん、速いよ。だからね、乗ってみたら分かるけど景色全く面白くないよ」
どうしたら話の流れで「だから」につながるのか分からないのだが。
「それはいいんだよ」
「分かりました」
そう言って俺は列車に乗り込んだのだった。
♦︎♦︎♦︎
ここはカルジア帝国皇帝の私室、ではなくその隣にある親衛軍待機室。
「ゼロ様、反逆者カミラの居場所が分かりました。西側諸国関門駅です」
「そしてその場所には、ベージャヌ様がいるとのこと」
待機室がざわめきに包まれた。だがゼロはそれを片手で制す。
ゼロは思考する。そして思念を送る。
「ゼロ様は暗殺者を送り、殺さない程度に痛めつけてから連行せよ、ベージャヌは無視して良い、と仰せだ」
ゼロの腹心の騎士ハリスが代弁した。それに反論する者は誰もいない。
反論してもゼロは殺さないのだが、誰もゼロを疑わない。ゼロの言うことは全て正しいと信じて。
「「御意」」
[西側諸国関門駅]
「人、めっちゃいますね」
圧巻だ。シルロード駅にはこんなに人はいなかった。
「あのなぁ、ノースドレイクの終点駅が栄えて無い訳ないだろ」
確かに。
「これからどこ行くんですか?」
「ああ、ちょっとここからはオリビア共和国に行くよ」
「?何故?」
オリビア共和国。弱小国。西側諸国最弱と名高い。
理由は魔物の発生率が高く、文明を破壊されるから、らしい。
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着。
ーフォンー
唐突な空間移動。
ーフォンー
『危険 入るな』
看板が目に入った『危険』?前には森。
沈黙。
「ヤバいじゃないですか!」
「うん、ヤバいよ」
そんな顔で言われても!
「え?修行つけてくれるんじゃ無いんですか?」
「言ったよ。修行つけるって」
何ドヤ顔してるんですか?
「だったら」
「だから、これが修行だよ。この森の中にいる魔獣を全て倒すんだ」
「無理ですよね」
疑ったよ。森の中にいる魔獣を全て倒すなど。
「出来るよ!君は能力ぶっぱしてるだけで魔獣殺せるんだからさ」
ーガシッ フォンー
掴まれ、その瞬間に空間移動。
森の中。
「君は、俺が見たところ国を乗っ取るというイかれた野望が大きい」
あ、それ前世です。
「【反逆】はその野望の意思の大きさがそのまま力に直結する。だから【反逆】に野望の意思を送り込んで望むままに魔法を使ってみなよ。出来るから。多分。じゃあ、俺はこれで」
「あ、待っーーー!」
ーフォンー
逃げられた。
やれやれ、頑張るしかないか。
俺は途方に暮れて魔獣を探して倒す。それだけの作業を始めた。
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「久しいな。ベージャヌ。いつぶりだ?」
そう聞いたのは銀髪の美女。
「んー。ざっと200年ぶりですかね。竜帝様、いや、元竜帝様か」
ベージャヌが皮肉っぷりに言った。
「ん?私は200年前に会った覚えがないぞ」
気にしてないが。
「そりゃぁそうでしょ。貴女が会ったのは俺の分身ですから、久しぶりに来たのに何も変わっていなかったから帰ります」
ベージャヌはくるりと後ろを向いて颯爽とその場を立ち去ろうとした。
それを良しとしない『元竜帝』は威圧でベージャヌの動きを止めた。
「待て待て、久しぶりにストレス発散に来たのではないのか?なんなら私が相手をするぞ」
「貴女強いけど、俺との技属性の相性が良すぎて楽しめないんですよ」
「だが、私には一度も勝ったことがないがね」
ベージャヌは決まりが悪そうな顔をして急に黙って、言い訳を考えてから如何にもわざとらしく言った。
「殿が死んだから俺が貴女を超える必要がなくなったのです。必要ならば、今すぐにでも超えてみせましょう」
「フッ、まあせいぜい励め」
あえて挑発しない。
「あそーそー、俺昨日弟子を取ったんですよ。でね、今森の魔物を全滅させろ、って言う無茶振り命令を出したんですがね、彼女素質あるからすぐに敵なしになると思うんですよね」
「ーーー、何が言いたい?」
「アハハ、勘が鈍りましね」
「君、死にたい?」
竜帝の拳がいつのまにかベージャヌの喉元に突きつけられている。
「だからですよ。彼女のいる森にファイヤー・ドレイクを何匹か送ってくださいよ」
「やっぱお前馬鹿だわ。聞いて損した」
竜帝は元居た玉座に戻ろうとした。
「待ってくださいよ」
ベージャヌはその腰を抑えて止めた。
「俺に弟子を思いやる気持ちに感激したでしょう」
そう言って竜帝に涙目で訴えるベージャヌ。
「まあ、いいよ。送ってやるよ。で、どこの森?」
もう飽きられている。
「そりゃもちろんシパの森」
そう言ってベージャヌは魔法で地図を出した。
「おい、ベージャーーー」
「で、結局どのドラゴンをーーー」
まったく話が噛み合っていない2人。
「少女、いないぞ。赤髪のだろ」
竜帝がそっけなく言った。
そして、2人の間に沈黙が下りた。
「?マジで?」 「マジで」
沈黙。
話はこれより先には続かなかったと言う。
♦︎♦︎♦︎
結構慣れたな。最初はこの森にいる魔獣が強く感じたが、少し経ったらこの様だ。
これは俺が強いのか、魔獣たちが弱いのか。
俺は襲いかかってくる魔獣の牙を【反逆】で作ったシールドで防ぎながら思う。
【反逆】で斬撃を創り、周りに群がった魔獣を斬りつける。
ベージャヌさんが言ってた通りだよ。自分の野望を【反逆】に送り込むだけでやりたい事ができる様になる。
ケレムが言ってたことにも納得だ。
確かにこれを野望がある者が使ったら国家転覆も出来るかもしれない。
まあ、野望があったから俺が【反逆】を獲得したのだろうけど。
なのに、俺は自分の野望が何なのか、いまだに分からない。
とにかく、今はこの森にいる魔獣を倒し続けよう。
にしても、どうしてだろうな?
オリビア共和国にはこういう魔獣がわんさか居る森は山ほどあるのに、どうして敢えてこの森を選んだんだろうな?
(ベージャヌのなんとなく感覚で選んだのである)
ープニィー
ん?何かが俺の頭の上に乗った。悪意を感じなかったから気づかなかった。
この柔らかい感覚。
スライムか!
殺しとくか。
だが、待て、スライムは自分の意思がないいわば人間で言うところの植物状態!
つまり、生存戦略に必要な物以外には無害のはず。
だから無益な殺生はする必要ナッシング。
(「全部殺しなよ」)
ダメだな。思い出した。「全部殺せよ」的なことを、ベージャヌさん、言ってたな。
ごめんよ。可愛いスライム。君には消えてもらう必要があるんだ。
「〔雷撃〕」
なるべく苦しまずに死んでくれ。
よくよく考えたんだけどさ、これ、意外にも苦しむんじゃないのか?
しかも、スライムは繁殖能力が高いから、スライム1匹いたら周りに100匹居る、そう聞いた事があるのだが。
案の定スライムの群れがいた。囲まれてるね。これ。
「シールド!」
待て!スライムの攻撃はぶっちゃけ攻撃というより抱擁。つまりは、俺のシールド、つまり攻撃しか防げないシールドではスライムを防げないと言うことだ。
だがぁ!
「〔斬撃・十閃〕!」
広範囲斬撃を10回行ういたってシンプルな技。だが、これでもスライムなら耐えられないだろ。
ープニィ ザザザザー
なんかごめん。まさか、人生でスライムが切り刻まれてるところを目撃するとは。
グロ注意だね、これは。
これ以上見たくなかったからすぐさまその場を立ち去った。
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と言うかさ、きついんだよね。接近戦がさ。マジでシールド壊されたら上手くかわして魔法を当てるしか方法がなくなる。
だから剣が欲しい。【反逆】
これで剣を手に入れる。
ベージャヌさんの言う通りならなんでも出来るんだろ?【反逆】は。
何も起きないな。
拗ねた俺は歩き始めた。
少し開けた場所に来た。・・・嘘です。かなり開けた場所に来ました。所々に大きな窪みがある。
まるで文明のリキで作った様なその空間に俺は思わず見惚れてしまった。
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