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Episode.1 永久追放された不遇職

「このギルドから出ていけ!」


と、俺は冒険者ギルドの受付でギルド長から門前払いを受ける。


いきなり門前払いかよ……。

まあ、毎度の事だから今更感はない。


どんな凄みであったとしても、全く動じない自分が時々怖く感じる時がある。

正直、慣れは怖いと感じた。


毎度のお馴染みの質問をしてみるか……。


「依頼を貰えないと?」

「あぁ、誰かお前のような不遇職に……人殺しに依頼を与えるものか!」


いつも通りの返答だ。


「……俺が【従魔師(テイマー)】であり、過去に仲間を見殺しにしてしまったからか?」


ギルド長の表情から察すると、俺の問いは百発百中の確率で的中しているようだ。


ギルドから門前払いを受けた理由は2つ。


・俺の職が不遇の【従魔師(テイマー)】である事。


・過去、依頼中に仲間を見殺しにしてしまった事。


この理由で俺はギルド側から嫌悪され、99ヵ所のギルドから依頼拒否をされている。

場所によっては出入り禁止通告を受けているギルドもある。

今回は門前払いのみで済んだ。

と、思っていたのだが、そんな簡単に事が進む訳がなかった。


「……分かりました。では、失礼します」


依頼を拒否されても表情を変えず、俺は淡々と会話を済ませ受付から離れる事にした。


「これで依頼拒否されるのも、ここで100ヵ所目って事か……」


「はぁ……」と大きなため息をして落ち込んでいると、四方から冷たい視線と私語(ささめごと)を感じる。

中には殺気すらも。


完全にアウェイだな……。


ギルド内にいる全ての冒険者の視線は俺に向けられている。

特に2階にいる連中から。


2階の連中、分かりやすい殺気だな……。


『モテモテだね、ラック(笑)』


男に好かれても嬉しくねぇよ。

て、いきなり念話で語るな、ライム!


ポヨン♪ ポヨ~ン♪


と、俺の肩上で跳ねているのが【デーモンスライム】のライムだ。

俺のかわいい従魔だ。


『どうするの?』


どうするこうするも、あんなのは無視だ、無視!


『りょうか~い♪ 無視♪ 無視♪』


ライムの指定席はいつも俺の肩。

通常のスライムは水色だが、ライムは真っ黒なスライムだ。

デーモンという名に相応しい程に漆黒の色に染まっている。


「無視してんじゃねぇよ……」


と、2階から微かに声が聞こえた。

振り向くと、眼前には中型の【火炎玉(ファイヤボール)】が迫っていた。



【炎系魔法】


火炎玉(ファイヤボール): 初級魔法。炎の塊。小・中・大のサイズ指定可。




「こんな所で炎系魔法? 危ないじゃないか……」

『ラック、あの魔法を食べてもいい?』

「あぁ、食べて良いぞ……」


歓喜が高まったライムはポヨンポヨンと跳ねまくり、そのまま口を大きく開口し、【火炎玉(ファイヤボール)】を一呑(ひとの)みし【補食】した。



【スキル】


 捕食: 対象を体内に取り込む。

     効果の対象は、有機物・無機物に限らず、         スキル・魔法にも及ぶ。

     取り込んだ対象を解析・研究をし、作成可能        アイテムを創造する。

     コピーを作成する事も可能である。

     対象のスキル・魔法の習得も可能。

     捕食対象を収納可能。

     作成された物質の保管も可能。

     収納されると時間効果が及ばない。

     解析の及ばない有害な効果を収納する。          無害化を行い、魔力に還元する。




ゲフッとライムの口からゲップが出た。


『ご馳走さまでした♪』


魔法を放った冒険者は唖然としていた。


「ま、魔法を食べた!?」


ライムの行動にギルド内はざわついていた。

魔法を食べるスライムを誰も見た事がないからだろう。


美味しかったか?


『不味かった……』


素直な返事だな(笑)


ライムのこういう素直な部分が好きだ。

愛おしく思える。


さてと、この場をどうするか……。

相手は有耶無耶にする気は毛頭無さそうだ。


「てめぇ……殺してやる……」


2階にいた冒険者達が次から次へと1階のフロアへと手摺(てす)りから飛び降りてくる。

ほぼ、BからCランクのゴロツキの冒険者達だ。

厄介事からなるべく回避したかった俺はライムにある命令を下す。


ライム、さっき食べた魔法を奴らに返してやれ。


『うん、分かった』


あ、言い忘れてた。【分裂】するのを忘れるなよ?


『りょうか~い♪』



【スキル】


 分裂: 母体を複数体に分裂させる。

     


ライムは俺の肩からボヨン♪と飛び離れ、宙に浮いたまま複数に分裂し、口元に魔法陣を展開させ、先程食べた【火炎玉(ファイヤボール)】をゴロツキの冒険者達に解き放った。


『この魔法、返すね♪』

「なっ!? で、でかい!!」


あ、忘れてた……。

食べた魔法の威力を数倍に跳ね上げるんだった。


少し大きめの【火炎玉(ファイヤボール)】が全ての標的に命中し、各々(おのおの)の爆発が凄まじく轟音(ごうおん)とともにギルドは呆気なく崩壊した。


ふぅ……

死ぬかと思った……


ギルドが崩壊する寸前に俺は転移スキル【瞬間転移】で外へと転移し逃げていた。



【スキル】


 瞬間転移: 数百メートル圏内で位置を指定し転移する。



あちゃー、ギルドを破壊するつもりは無かったのにな……。


『崩壊しちゃったね(笑)』


笑い事じゃないんだけどな。


無邪気に笑っているライムを見て、俺は何も言えなかった。

それよりも今後の方が俺的には心配だ。

何せ、ギルドを崩壊させてしまったのだから……。


「本当にどうしようか、この状況……」


スライムであるライムがギルドを崩壊させてしまった。

多分、いや100%の確率で依頼拒否の理由がもう1つ追加されるだろう。


「……ラッ……クス……ラックス・ヴァンネッド!!!!!」


と、瓦礫(がれき)と化したギルドから怒号(どごう)が鳴り響く。

瓦礫が崩れると、中からボロボロになったギルド長が姿を現したのだ。


「ご無事だったみたいですね、ギルド長……」

「あぁ、おかげ様でな……」


ギルド長、かなりキレてるな……。

そりゃ、そうだよな。

完膚なきまでにギルドが崩壊しちまったんだ。

あのゴロツキの冒険者達も戦闘不能。

負傷者も多く出しちまった。

これでキレない訳がない。

本当に俺、どうしよう……。


「貴様は永久追放だ……」

「へ?」

「冒険者の登録を解除する! 賠償請求もする! 貴様は冒険者ギルドから永久追放だ!!!!!!!」


まあ、そうなるよな……。


俺の予想が的中した。

冒険者ギルドから登録解除をされたのだ。

しかも賠償請求もあり、つまり借金地獄まっしぐら。

前代未聞の大事件となり、冒険者がギルドを崩壊させたと歴史に刻まれる事になる。


「俺の人生、もう終了しました……」


俺の人生は永久に閉幕となった。

と、この時はそう思った。

この後にあんな事になるまでは……。





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