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召喚
――自分勝手だと、罵られて良い、どれだけ醜かろうと、みっともなかろうと、それでいい。だから、だからどうか!あの人を救えるのは貴方しかいないから――
炎帝魔祖、と男は人々の中で禁句となっているその名を躊躇わずに叫び、自身が描いた陣の中で、胸をかきだき、天を仰ぐ。
美しい顔は苦悶に歪み、額からは玉のような汗がしたたる。
ただ乱雑に木を積み重ねただけの小屋の中で、男はひたすらに祈る。
悪神、と罵られる彼に向かって。
世界中から、死んで良かったのだ、と嗤われる彼に向かって。
きっとこの願いは、祈りは、誰の耳にも届くことはない。
どの神でさえも目を背けるような、身勝手で、どうしようもない想いだから。
助けようと、慈悲深い誰かが手を差し伸べる価値だってない。
それでも祈る。
たった一人のために。
一人を救うために。
――たとえこの命に代えたって良い!あの人を。彼を、元に戻すことができるなら……!――
だから、どうか。
男の慟哭は、果たして塵と化した彼の魂に届いたのか。
揺れる視界の中で、確かに男は笑うと、もう二度とは戻ることの出来ない世界を呆気なく手放した。