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炎帝魔祖  作者: 夜斗
前戯
3/4

我愿意相信

「消えた、消えたぞ!やっとだ!」

炎帝魔祖(えんていまそ)がいなくなったってことは魔が消えるのか」

「いや、そうではないらしい」

「だが、良かった。あいつがいなくなれば、また元のように戻るだろう」



人々の歓喜の声が、世界に満ちる。



「それにしても、呆気ない終わり方だったな」

柳氏(りゅうし)酋長(しゅうちょう)が倒したらしい」

流花永君(りゅうかえいくん)が……?確か炎帝魔祖(えんていまそ)と同年の友ではなかったか」

「何言ってるんだ、あいつのせいで柳氏(りゅうし)は焼き討ちにされたのだぞ?」

「恨んでいても致し方あるまい」



炎帝魔祖(えんていまそ)によって歪められた世界は、彼を憎み、恨み、彼の死を喜ぶ者達の声によって埋め尽くされていく。


誰一人として、彼の死を悼む者はいない。

誰もが、当然の報いだ、と死んだ彼を指さす。


死人となり、何も言えない彼を嘲笑う。



「……でも一度死んで、魔に堕ちて蘇ったんだろ?もしかしてまた蘇るんじゃ」

「いや大丈夫だろう、御三家の方々が何度探しても骸はおろか、彼の物は何一つ見つからなかったんだ。残ったのはおぞましい書物だけさ。」

「ならいいが……また蘇りでもしたら、それこそ災厄の再来だよ」



民の密かな不安は一年、また一年と時が経るうちに消えていく。

四季が巡るたびに、炎帝魔祖(えんていまそ)の本来の姿はおろか、彼が行った所業でさえも歪められていく。



1200年。

人にとっては長く、祓魔師にとっては短い時が神が瞬きをするような間に、過ぎ去っていった。


それだけ過ぎてしまえば、人々の間で炎帝魔祖(えんていまそ)など、神話にも近くなる。

誰も、彼が生き返るなど、蘇るなど、夢にも思わなくなる。


そして、今日も。

彼がいない世界で彼らの生活は平穏と安心をたたえ、変わらず営まれ続けていた。

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