星の瞬き夏の始まり
じっとりと汗ばむ熱帯夜に鈴虫の声と微睡みの中。
空に浮かぶ星の海から溢れ落ちた雫が瞬いて、ゆらゆらと落ち葉の様に暗い闇に消えていった。
あぁ、なんて綺麗な夢だろうか。
ギシギシとベッドを鳴らして寝返りをうつ僕の背中に、扇風機が生暖かい風を当てる。
流された風が頬を触れて髪を抜ける。
なぜだかそれが冷たく感じて、それがまた心地よくて、僕は深い眠りについた。
耳に響く様な蝉の声と何度も鳴るインターホンの音で起こされた。
せっかく気持ちよく眠っていたのに起こされた僕は半ば不機嫌になり、寝ぼけ眼を擦りながら画面に写った人を見る。
友人の拓実のようだ。
「何か用?」と聞くと「今日は一緒にプールに行くんだろ!」と怒られた。
しまった、すっかり忘れていた。
「ごめん!今から準備するからちょっと待ってて!」
と、拓実に言いインターホンの接続を切る。
「まずいまずい、拓実は怒らせると厄介なんだ」
僕は急いで出かける支度をする。
青いビニールバッグの中にタオルと水着を入れ、寝ていたままのタンクトップと半ズボンにボサボサの頭のまま玄関を出る。
ドアを開けるとすぐ左に壁にもたれかかった少し不機嫌な拓実が居て、「約束は忘れんなよ」と言ってきた。
「ごめん!次から気を付けるよ」と言うと拓実はやれやれと言った表情で「じゃあ行くぞ」と歩き出した。
「行ってくる!」と言い残して、アパートの階段を降りた。
外は日差しが照りつけ、まるで鉄板の上に立っている様な気がした。
今日も楽しい夏休みの1日が始まる。