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エピローグ
私は仏壇の前で手を合わせた。毎朝の習慣だったけれど、あの日からは、写真の中のおばあちゃんがそれまでよりもずっと大切な人に思えた。
仏壇の横には私が描いたおばあちゃんの故郷の絵と、原田さんが描いた絵が何枚も飾ってある。
あれから私は、おばあちゃんが話してくれたことや村のたくさんの風景を絵に描いていくことにした。原田さんも、故郷の絵を描き続けているそうだ。
絵が完成したら、私たちはお互いの絵を見せ合う約束だ。
もちろんはっきりと思い出せないお話も多くて、私の想像で描いた絵も多かったけれど、そんな絵も原田さんは大切な宝物を見つめるように、嬉しそうに眺めてくれた。
私も完成した原田さんの絵を見せてもらうたびに、おばあちゃんの優しい声でいつかのお話が聞こえてくるような気がした。
私は一人じゃなかった。私にはずっとおばあちゃんがついていた。
そして今も、おばあちゃんとの思い出が懐かしい村の風景と一緒に私の中に残っている。





