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おばあちゃんとの思い出
気が付くと私はあの頃のおばあちゃんの子守歌を口ずさんでいた。詩はほとんど覚えていなかったけれど、優しいメロディーが心の中に流れてきた。しばらくすると、原田さんも一緒に歌っていた。
歌が終わってしばらく余韻に浸った後、原田さんは静かに口を開いた。
「不思議ね。私は実際にこの村のことを知っているのに、私の曖昧な記憶で描いた絵よりもゆりなさんの絵の方がよっぽど私の思い出に近いわ。
ゆりなさんの絵を見ていたら、たくさんのことを思い出したの。紹ちゃんとの会話も、その時の音も、匂いも。一人で絵を描いている時は思い出せなかったのに…
これからは納得のいく故郷の絵が描けそうだわ。私たちの故郷を描いてくれて、私に大切な記憶を思い出させてくれて、本当にありがとう。」
「私も、原田さんの絵を見ておばあちゃんのことをたくさん思い出しました。忘れていたと思っていた大切な記憶を取り戻すことができました。今日、原田さんに会えて本当に良かったです。」
おばあちゃんは幼い私とずっと一緒にいてくれた。そして毎日、たくさんのお話をしてくれたんだ。





