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プロローグ
ずっと私の心の中にある風景
長い山道を歩いた先に、明るい光が差し込む
山の谷間にぽっかりと開けたその場所に、茅葺き屋根の家が立ち並ぶ
山の斜面に沿って棚田が続いていて
初夏の夕暮れには田んぼの水面が真っ赤な光を反射して輝く
暗くなる前に帰らないと、そう思った時、どこからか夕食の魚が焼ける匂いがして…
深い記憶の中にある風景を、初めて絵にしてみた。
描いている内に埋もれていた記憶が次々に掘り起こされて、その時の音や匂いまで思い出せるような気がした。
これは私の想像の世界じゃない。
それまでぼんやりと抱いていた思いが確信に変わった。