表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/215

第83話 合流と変更と

 貫奈との待ち合わせ場所は、この付近では一番栄えている駅の改札前だった。

 ちょっとした広場のようになっており、周囲には結構な人混みが出来ている。


(桃井は……まだ来てない、かな……?)


 集合時間の少し前に到着した春輝は、ザッと周囲を見回してそう判断した。


 改札の方に身体を向け、スマホに目を落とす。


「ちょっとちょっと」


 するとすぐに、横からそんな声が聞こえてきた。


「なにスルーしてくれちゃってるんですか、先輩」

「へ……?」


 聞き慣れた声と呼称に、そちらへと顔を向ける。


「うおっ、桃井いたのか!?」


 するとそこに待ち人の姿があって、驚きの声を上げてしまった。


「さっきからずっといましたよ」


 貫奈がジト目を向けてくる。


「す、すまん、気付かなかった」


 謝りながら、春輝は己が貫奈の存在に気付けなかった理由を知った。


 彼女の印象が、普段とかなり異なっていたのである。

 いつもは下ろされている髪が、今日はアップで纏められていた。

 服装だって、会社でのシックなものではなく可愛らしい雰囲気。

 メガネのフレームの色も、いつもより明るめだ。


「その、ちょっといつもと雰囲気が違うもんだったからさ」

「……似合いませんかね? こういうの」


 正直に伝えると、貫奈が軽く前髪を弄りながら尋ねてきた。


「いや? 普通に似合ってるけど。あー……その、可愛いよ」


 これも、正直な感想である。

 後半は、流石に少し恥ずかしかったが。

 小桜姉妹と暮らすようになって『女性のことをちゃんと口に出して褒める』ことを学んだ春輝は、照れながらもどうにか口にすることが出来た。


「本当ですか? ありがとうございますっ」


 弾んだ声で礼を言う彼女の笑顔は、あけすけで。


 それもまた普段と印象が違い、春輝の心臓がトクンと跳ねる。


「……時に先輩、服の趣味が少し変わりましたか? 以前は、もっと地味だったような気がするんですけど」


 直後、別の意味で心臓がドキリと跳ねた。


 本日の服装は、先日伊織に選んでもらったものだったためである。


「ま、まぁな。俺だって、多少は好みが変化していくさ」

「それもそうですね。先輩の私服なんて見るの、随分と久しぶりですし」


 若干声が震えてしまった気もしたが、貫奈はあっさり納得してくれたようだ。


「ところで、結局今日はどこに行くんだ?」


 これ以上掘り下げられる前にと、さっさと話題を変えることにする。


「あ、はい。それは……」


 そこで、言葉を止めて。


 貫奈は、なぜか春輝の顔をまじまじと見つめてきた。


「……先輩、何かありました?」

「っ……」


 ジッと目を覗き込まれながらの質問に、春輝は息を呑む。

 露華の件は一旦頭の中から追い出していたつもりでいたのだが、それすら見抜かれたということか。


「前にも言いましたが、先輩はわかりやすいですからね」


 いつかと同じセリフを口にして、貫奈はクスリと笑う。


「あのですね、先輩。今日考えていたプランは、私なりの『大人のデート』ってやつだったんですよ」

「うん……? あ、うん、そうなの?」


 急に話が変わったように思えて、春輝は戸惑い気味に目を瞬かせた。


「ですが、大幅に路線を変更しようかと思います」

「え……? なんで?」


 先程から、貫奈の意図がイマイチ掴めない。


「そうしたい、気分なんです」

「そう、なのか……? いや、お前がいいんならそれでいいんだけどさ……」


 元々、貫奈に誘われての今日である。


 彼女がそう言うのであれば、春輝に拒絶する理由はなかった。


「あの時みたいに……今度は私が、出来ればいいんだけど」


 ポツリと漏らされた貫奈の呟きの意味は、やっぱりわからなかったけれど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版1巻2巻、発売中!
JK3姉妹
※画像クリックで書籍紹介ページに飛びます。


JK3姉妹2
※画像クリックで書籍紹介ページに飛びます。


小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ