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第75話 再起と不審と

 思わぬところで出会った貫奈と、春輝が雑談を交わす傍ら。


(桃井さん、そんなにまでして春輝さんの趣味を理解しようとしてたんだ……)


 伊織は、胸の前でギュッと拳を握る。


 先程の、春輝がきっかけで葛巻小枝のファンになっていったという貫奈の発言。

 春輝は結構なショックを受けた様子だったが、伊織としても衝撃を与えられていた。


 伊織とて、春輝の趣味を理解しようとはしているつもりではる。

 けれど、彼女程の情熱を注いでいるかと言われれば首を横に振らざるをえない。

 今日のライブだって、春輝と白亜が誘ってくれたこそ来ただけだ。


(それに……十年も想い続けて……)


 自分の抱く感情が恋心であると明確に気付いたのは、いつのことだったろうか。

 少なくとも、一年は経過していない。

 出会った当時は、ただの同僚だと思っていたから。


(凄い、なぁ……)


 ズキンと痛む胸を、手の平で押さえる。


「いやぁ、十年も想い続けてるとはねぇ。その一途さには流石に脱帽だよね」

「相手の趣味を理解しようとして、ここまで踏み込んでくるっていうのも凄い」


 露華と白亜も伊織と似たような感想を抱いたらしく、小声で感嘆を口にしていた。


 ただ、二人が伊織と違ったのは。


「ま、だからって負けてあげるつもりはないけどね」

「愛の強さは、時間と比例しない」


 その瞳に対抗心が燃えてはいても、後ろ向きな感情は少しも感じられないという点だ。


(……そう、だよね)


 そんな妹たちに、大切なことを教えてもらったような気分で。


「うん……負けないようにしないと、だよね……!」


 再び拳を握る伊織の目にも、今度は前向きな光が宿っていた。


「ふふっ……お姉もやる気満々みたいだけど、ウチも……」


 そんな伊織に、挑発的な笑みを向ける露華。


「……げっ」


 その顔が、どこか気まずげな調子で固まった。


「……?」


 疑問に思って、伊織は彼女の視線の先を追う。


「今日のライブ、神ってたねー!」

「チケット当たって良かったー!」


 そこにいたのは、伊織と同年代くらいであろう二人の少女だった。

 興奮した様子ではあるがそれは周囲の客の多くにも見られる傾向であり、特別変わったところがあるようにも見えない……と、判断しかけて。


(あれ……?)


 ふと、伊織は引っかかりを覚えた。


(どこかで、見たことがあるような……?)


 思い出すのには少し時間がかかったが、露華に関連して記憶が蘇ってくる。


(あっ、そうだ! たぶん、露華のクラスメイトの子たち!)


 何度か露華の教室を覗いた際に、見かけた覚えがあった。


「あっ、てか、皆さんさ! こんなとこで立ち話もなんだし、場所移さないっ? ほら、喫茶店とか! ライブについて語ったりするなら、そっちの方がいっしょ?」


 伊織が記憶を掘り返していた傍ら、露華が春輝たちにそう提案する。


「まぁ、確かにな」

「それもそうですね」

「ロカ姉の言うことにしては、一理ある」


 春輝、貫奈、白亜の順で頷いた。


「伊織ちゃんも、それでいいかな?」

「えっ……? あっはい、大丈夫ですっ」


 件の少女たちの方に目を向けていた伊織は、春輝に話を振られて慌てて頷いた。


「それじゃ、行こう」


 春輝が先頭に立って、一同移動を開始する。


「ねぇ露華、良かったの?」


 そんな中、伊織はスッと露華に歩み寄って小声で尋ねた。


「ん? 何が?」


 何のことかわからない、といった表情で露華は首を捻る。


「さっきの子たち、クラスメイトでしょ? 挨拶とか、しとかないの?」

「っ……」


 しかし伊織が先の少女たちに言及すると、再びその顔が強張った。


「いやほら、アレよ。思わぬところで知り合いに会ったら、なんか気まずかったりするじゃん?」

「うん、まぁ……」


 伊織にもそういった経験はあるが。


(露華って、そういうタイプだったっけ……?)


 むしろ、良い意味で空気を読まずに突撃するイメージである。


(とはいえ、向こうの子たちがそういうタイプかもしれないし……それに、自分がこういうイベントに興味あるって知られたくなっていうのもあるのかな……?)


 そういう風に、納得することも出来たろう。


「おっとぅ? それよりほらお姉! 桃井さんが、すかさず春輝クンの隣をキープしようとしてるよ! ウチらも行かなきゃ! ハリーハリー!」

「あ、うん……」


 けれど、どうにも露華が何かを誤魔化しているような気配が感じられる気がして。


 この件は、伊織の心に引っ掛かりとして残ることとなった。

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