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第73話 公演と邂逅と

 白亜が四人分のチケットを引き当てた小枝ちゃんのライブ、その当日。


「いやぁ、久々だなぁ……小枝ちゃんのライブなんてさ」


 会場入りした春輝は、年甲斐もなくワクワクした表情を浮かべていた。


「でも白亜、本当に私まで来てよかったの……? その……私、たぶんまだファンって呼べるような存在じゃないと思うんだけど……」


 その隣、伊織は少し申し訳なさそうな顔で白亜に尋ねる。


「イオ姉たちにも来てほしいから四人分で申し込んだんだし、ファンじゃなきゃ来ちゃいけないなんてこともない。むしろこのライブを通じてファンになってくれると嬉しい」

「そっか……うん、ありがとうね白亜。私、葛巻小枝さんのこともっと知りたいと思ってたから。誘ってくれて、嬉しいよ」


 伊織の表情が、白亜の言葉で笑顔に変わった。


「ウチ、ライブって初めてだからアガるわー。あっ、ねぇねぇ白亜、ウチのスマホで写真撮ってよ写真。ウチの初ライブ記念ってことでさ」

「流石にロカ姉はもう少し謙虚にすべき」


 はしゃいだ声を上げる露華には、ジト目を向ける白亜。


 そんな白亜へと、露華がそっと顔を寄せた。


「しかし考えたね白亜。確かに、趣味を攻めるってのはいい線だわ。楽しい思い出の共有にもなるしね。上がったテンションで、ワンチャン吊り橋効果的なのも狙えるかもだし」

「当然、わたしの考えに穴はない」


 珍しく露華から褒められたからか、ムフーと白亜はご満悦の表情である。


「ま、普通にライブに行きたくて応募してたのがたまたま良い感じに働きそうなだけだろう……って点には、目を瞑っといてあげるよ」

「……む」


 しかし、露華の言葉にそのドヤ顔が固まる。図星だったのか、反論はなかった。


 と、そのタイミングで軽快な音楽が流れ始める。


《みーんなぁ! 今日は、来てくれてありがとう!》


 直後に、スピーカー越しに聞こえてくる可愛らしい声。


『小枝ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!』


 観客のボルテージが一気に上がり、叫びが会場を震わせる。

 その中には春輝と、コロッと表情を変えキラキラと目を輝かせる白亜の声も混じっていた。


「ラ、ライブって、最初からこんな盛り上がるんだね……」

「ちょっと、ウチらとじゃ温度差がある感じだね……」


 なんて、少し肩身が狭そうに苦笑を浮かべていた伊織と露華だったが──



   ◆   ◆   ◆



 数時間の後、ライブが終わる頃には。


「小枝さん、歌だけじゃなくてダンスもあんなに踊れるんだね!」

「場の盛り上げも上手くって、ノせられちゃったよねー!」


 二人も頬を上気させて、テンション高くライブを振り返っていた。


「いやぁ、いいライブだったなぁ」


 もちろん、春輝の顔も非常に満足げなものである。


「うん、今回も小枝ちゃんは最高だった」


 白亜も、珍しく満面の笑みがキープされていた。


「イオ姉とロカ姉も、またライブに……あたっ」


 会話に気を取られて前方不注意となっていたらしい白亜が、前を行く人の背中に顔をぶつける。


「す、すみません……」


 白亜は謝罪を口にするが、前の人はぶつかられたことにも気付いていない様子だ。


 トラブルに発展するようなこともなく、それは良かったのだが。


「あっ、サイリウム……」

「俺が取ってくるよ。白亜ちゃん、周りにちゃんと気をつけてな」


 ぶつかった拍子に手放してしまったサイリウムを追いかけようとする白亜を、押し止める。

 人の波の中、小柄な白亜が下手に屈んだりすると蹴飛ばされかねなかった。


「ん、ありがとうハル兄……」


 白亜の礼を背に、人にぶつからないよう気をつけながらサイリウムの行方を追う。

 転がっていった先、サイリウムはそこにいた女性の靴に当たって止まった。

 件の女性が、サイリウムを拾う。


「はい、どうぞ」


 そして、春輝に向けて差し出してくれた。


「どうも、ありがとうございます」


 軽く笑みを浮かべてそれを受け取る春輝。

 ……だったが、ふいにその表情が固まった。


「えっ……?」

「あれ……?」


 春輝の疑問の声と、女性の意外そうな声が重なる。

 二人に共通するのは、その表情が驚きで満ちているという点である。


 なぜならば。


「桃井……!?」

「先輩……?」


 お互いに、見知った顔だったためである。

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