表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/215

第54話 羞恥と断言と

 いつも以上に騒がしくなってしまった夕食を終えて。


「はぁ……何やってんだか、私」


 伊織は、溜め息と共にに自室に戻った。


「うぅぅぅ……! 恥ずかしくて、春輝さんとまともに顔を合わせられないよぅ……!」


 そして、枕に顔を埋めて足をバタバタとさせる。


「なんであんなこと言っちゃったんだろ……!」


 思い出すのは勿論、今朝のあの場面。


 ──私、春輝さんのこと愛してますから!


 愛してますからー……。

 愛してますからー……。

 ますからー……。

 からー……。


 頭の中でずっと、エコーを伴ってリフレインしていた。


「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……!」


 その度に、堪らないくらいに恥ずかしくなってしまうのである。


 流石にこんな風にバタバタするのは一人の時だけだが、内心では常にこんな風に悶えていた。

 特に、春輝と顔を合わせた時の気まずさが半端ではない。

 きっと赤くなってしまっているだろうから、今日一日目が合う度に慌てて顔を逸らしていた。

 にも拘わらず、気がつけば彼の姿を目で追ってしまうのだから困ったものだ。


 コンコンコン。


 とそこで、部屋の中にノックの音が響いた。


「お姉ー? 入るよー?」


 ドア越しに聞こえてくる、露華の声。


「あ、うん。どうぞ」


 慌てて起き上がり、布団の上で姿勢を正しながら返事する。


「お邪魔しまー」

「お邪魔します」


 開いたドアの向こうから露華、続いて白亜が入ってきた。


「どうしたの、二人とも?」


 用件に心当たりがなく、伊織は首を傾げる。


「お姉、さ」


 そんな伊織に対して。


「春輝クン相手に、いつまでその気まずい感じ続ける気なの?」


 露華が、ズバリ切り込んできた。


「そ、それは……その……」


 伊織自身ちょうど考えていたことではあったが、口ごもるしかない。


「そんなの……私にも、わかんない……」


 唇を尖らせて答える様は我ながら子供っぽいかと思ったが、ついついそんな仕草を取ってしまった。

 普段であれば妹たちには見せない姿だが、今は取り繕う余裕もない。


「イオ姉がそういう感じだと、わたしたちもやりづらい。早急な改善を要望する」


 ズビシと指を突きつけてくる白亜の方が、今は大人びていると言えた。


「やりづらい……か」


 口の中で呟きを転がす。


 妹たちの気持ちには、伊織も気付いているつもりだった。

 恐らくは、自分と同じ類の感情を春輝に対して抱いているのだと。

 少なくとも、最初は……この家に来た頃には、そうではなかったはずだが。

 きっかけは恐らく、先日の借金騒動の時だったのだろう。


(あの時の春輝さん、格好良かったもんね……)


 伊織たちが泣いていたところに、颯爽と現れて。

 自分の大切な宝物まで手放して、助けてくれた。

 今でも申し訳無さに胸が痛むけれど、同時に心音が高鳴るのも事実であった。


「貴女たちも……なんだよ、ね……? その……春輝さんのこと……」


 その先を言葉にするのはなんだか気恥ずかしくて、口ごもる。


 なのに。


「うん。好きだよ、春輝クンのこと」

「わたしも、ハル兄のことが好き。男の人として、好き」


 露華と白亜は、あっさりと言い切ったのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版1巻2巻、発売中!
JK3姉妹
※画像クリックで書籍紹介ページに飛びます。


JK3姉妹2
※画像クリックで書籍紹介ページに飛びます。


小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ