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第27話 女心と満足と

 以前の風呂での件に触れられ、顔を赤くして去っていった露華。

 その背中を、春輝が半笑いで見送っていると。


「……実際、ハル兄は女心をもっと学ぶべき」


 ここまで黙って二人のやり取りを見ていた白亜が、ポツリと呟いた。


「確かに今のはロカ姉の自爆だけど、ハル兄も古傷を抉るような真似は感心しない」

「う……すみません……」


 ド正論に対して、春輝としては謝罪するしかなかった。

 なお、言うまでもないことではあるが、相手は一回りほど年下の少女である。


「……よろしい。大人の女性であるこのわたしが、ハル兄に女心の何たるかを教える」


 得意げな表情で、白亜がその薄い胸を張る。


「お願いします、先生」


 若干冗談めかしてではあるが、春輝も素直に頭を下げた。


「それじゃハル兄、まずはそこのソファに座る」

「はい」


 ここも素直に指示に従い、ソファへと腰を下ろす。


「もう少し足を広げて……そう」


 指示に従って足の位置を調整していると、白亜がトテトテと歩み寄ってきて。


「そこに、こう」


 春輝の足の間に、ストンと座った。


「これが、女性と接する際の基本姿勢」


 ムフー、と白亜は満足げな表情である。


「お、おぅ……」


 流石の春輝も、これが間違っていることだけはわかった。


(というかこれは、むしろ子供との接し方では……?)


 実際、体格差的に傍から見れば親子でも通じそうな感じだ。


「そしてハル兄は、わたしの頭を撫でる」

「お、おぅ……」


 とりあえず言われた通り、眼下に見える小さな頭を撫でてみる。


 ムフー。

 白亜の鼻息は、やはり満足げであった。


「それから、ギュッとしたりもする」

「お、おぅ……」


 今度は、後ろから白亜の肩の辺りに手を回す。

 伊織や露華相手が相手だったならば、とても平静ではいられなかったろう。

 だが、女性らしいとはちょっと言い難い白亜の身体であれば抵抗なく抱きしめることが出来た。

 なんだったら、今腕の中にいるのは自分の娘なのでは……? という謎の錯覚さえも生まれ始めている。


 ムフン。

 白亜の鼻息の種類が少し変わった。

 これまでより、更に満足度が高そうな雰囲気。


「時には、このままわたしの方に体重をかけてきたりもする」

「お、おぅ……」


 ぐぐっと、少しずつ前のめりになって白亜の方に体重を預けていく。


「……ふふっ。ハル兄、重い~」

「あぁ、悪い」


 白亜の言葉に身体を戻そうとすると、頬を膨らませた白亜が振り返ってきた。


「むぅ。ハル兄、やっぱり女心がわかっていない。今のは、もっとやれのサイン。口で言ったことが真実とは限らないのが大人の女性というもの」

「お、おぅ……?」


 確かにこれについては、女心っぽいような気がした。

 気がしただけかもしれない。


「というわけで、もっとやるべき」

「お、おぅ……」


 促されて、再び体重を白亜の背に預けていく。

 本当に苦しくならないよう、注意は払いながら。


「……ハル兄」


 今度は、鼻息の音は聞こえてこない。


 代わりに……なのかは、わからないが。


「温かいね」


 背中越しに、穏やかな声と。

 白亜の笑う気配が、伝わってきた。

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