第7話
僕は、薬問屋を覗き込む。マードさんがいる。
「あの……。これ……」
「おや、アキちゃんじゃないか。ごめんな。あの用紙を渡した以降は、登録し直さないと買い取りは出来ないんだ」
「これ、僕が作って……登録したら売れますか?」
マードさんが驚いた顔をして僕を見ている。
「アキちゃんって、レベルいくつ?」
「6です」
「そっか。じゃそこに座って」
指をさされた椅子に座った。
マードさんは、僕の目の前に調合の道具と材料を持って来て置いた。
「これを使って調合をしてみてほしい。これがレシピだ」
そう言ってメモもテーブルに置く。
毒消しらしい。
まず花びらを調合。花びらは、乾燥からしなくてはいけないみたいだ。
僕は、花びらを手の平に乗せた。
「乾燥」
花びらは、干からびて行く。
よし、後はゴリゴリするだけだ。
花びらは、サラサラ赤いの粉になった。前より早く粉になった気がする。
後は、瓶に入っている中和剤と混ぜるだけ。
比率は、1:1。
混ぜ合わせて行くとうっすらと赤く色づいた粉になった。
「出来た」
「うん。合格だ。スキルも確認させてもらったが、言う通り6だった」
やったぁ。合格だ!
「薬師として登録しておくよ。さっき持って来たのも引き取ろう」
「ありがとうございます」
「でだ。ここで薬師として登録になったが、国のどこでも薬師としてやっていくなら別に登録が必要だ。それには登録料がかかる。それと、証明書を発行するから登録する場合にはそれも必要だ」
「はい」
僕は頷いた。
暫くして『薬問屋モード薬師証明書』と代金300Gを貰った。ゴールドじゃなくてギンとう単位らしい。
100のコインが3枚。それを財布代わりにしている巾着に入れ、鞄にしまった。
「じゃ、また頼むよ」
「はい!」
やったぁ。薬師だって。
さて、帰って報告するかな。
というか、どこまでがチュートリアルなんだろう?
ドン。
人とぶつかって危なく転ぶところだった。
びっくりした。
普通に、ぶつかるもんなんだ。
「いたたた……」
って、感心していたらぶつかった人を取り押さえている人がいる。
「ほらこれ、君のだろう?」
紺のサラサラの髪に瞳。髪より明るい紺色の服を着たお兄さんが、巾着を持って来た。
僕と変わらない年齢って……。
「あれ? それ僕の?」
「たぶんね。確認してみて」
僕は慌てて鞄を開けて見てみると、確かに入れたはずなのに入っていなかった。すられたんだ!
凄いな。鞄から取るなんて……。
「ありがとうございます」
「うーん。君、名前は?」
巾着を返しつつ聞かれたけど、何故かジロジロと僕を見ている。
「アキですけど……」
「やっぱり?」
え? やっぱり?
もしかして、涼華?
「俺、リョウ。宜しくな」
「宜しくなって……」
握手を求められて、一応握手を交わすも意味がわからない。
「知り合いだって事は内緒で」
ボソッと、涼華に言われた。
「なんで?」
「どうした?」
「何でもないよ。アキだって」
「秋? 何が?」
「名前が……」
涼華がそう言うと、もう一人の男の人があぁっと頷いた。
この人は、銀の髪に瞳。同じ服を着ている。
「あ、名前か。アキちゃんて言うのか。俺は、マモ。宜しく」
「あ、はい。宜しくお願いします」
「で、アキは、何してるの?」
「何って……おつかい? で、さっきの人がすりだってよくわかったね」
「俺達は、パトロール中。張っていたんだ。というか、君ら知り合い?」
ギク。フレンドリーに話しすぎたみたい?
「いや、今会ったばかりだろう? それよりさ。フレンド登録しない?」
「する!」
涼華言われ、僕は頷いた。
これで連絡が取り合える!
僕は、二人とフレンド登録をした。
二人共、竜族だ。僕の予想は当たった。
『なんでエルフじゃないのさ!』
突然涼華から念話が送られて来て、驚いてビクッとしてしまう。
「どうした?」
「いえ、別に何でも……」
マモさんが不思議そうに僕を見た。
って、これってどうやって返事返すの?
わからなくて、チラッと涼華を見れば大きなため息をつかれた。
「あ、俺、ちょっとログアウトするわ」
「え? あぁ、おつかれさん」
突然、涼華がそう言うと、マモさんが頷く。
「じゃ、僕はこれで……」
『アキもログアウトしてよ! 話がある!』
あぁ、もう。エルフじゃないから小言を言われそうだよ。
僕は、家に走って帰り、取りあえずお金を渡して自分の部屋に入ってログアウトした。
涼華か出会えたけど、知り合いだって隠さないといけないのはなぜだ!