第5話
「ただいま」
「おかえり」
「はい、お金。それとこれ」
お金と用紙を母親に渡すと、え! と言う顔つきになった。
もしかしてお金が足りないとか?
「お母さん!」
と、お母さんが叫びながら奥の部屋に入って行った。
うん? 慌ててなんだろう?
僕も部屋に行ってみる。
そこには、ベットに横になったおばあちゃんがいた。
「どうしたの?」
「まいったな。これじゃもう薬師としてやっていけないって事か……」
と、おばあちゃんがもらす。
もしかして、レベル5以下だったの!?
「レベルが足りないの?」
「いや、ほれ。私はほとんど歩けないだろう。街までなど無理だ」
おばあちゃんって足が悪いんだ。って、調合していたのって、おばあちゃんだったの!?
「お、お母さんは作れないの?」
首を横に振った。
「そうだ。アキ、お前には調合の才能がある。一応、去年獲得して登録はしてあるだろう。どうだ私の代わりに薬師にならないか」
「え、でも僕、レベル1だと思うけど……」
「今から特訓だ!」
特訓でレベル5まで上がるのかな?
僕は頷いた。
「ではまず、先ほど採取した青薬草を使おう」
「うん? それ使わなかったの?」
「使ったわよ。花粉をね」
僕が質問をすると、母親が答えた。
「いいかい。花びら、葉、茎、そして花粉に分けるんだ」
用意された入れ物に僕は、言われた通りちぎって入れて行く。
凄く単純だけど、めんどくさい作業だよ。
花粉は、ほとんどなかった。
「ここに私が作った中和剤がある。これと花粉を混ぜるんだ。花粉1に対してこれは1だ」
言われた通りの分量をすり鉢に入れた。
後は、ゴリゴリしながら混ぜる。
うん。何か調合って感じだ。
――『調合がレベル2になりました』
「………」
採取もそうだったけど、レベルも簡単に上がるんだな。
調合し終わった粉は、小瓶に入れた。
「次は、花びらだ。これは乾燥させてすり鉢で粉にする。私は、スキルで乾燥させられる。貸してごらん」
すでにすり鉢に入れてある花びらを手に取った。手の上の花びらが段々と干からびて、カサカサに!
「凄い!」
「調合レベルが5になれば、出来る様になる」
「そうなんだ」
乾燥が出来る様になって一人前みたいな感じなのかな?
「ほれ、粉にするんだ」
渡されたすり鉢でゴリゴリと始めると、どんどん花びらが細かくなっていく。
けどこれ、毎回やるとなるとめんどうかも。
これぐらいでいいかな?
「粗いな。もっとだ」
おばあちゃん、厳しいんだけど……。
ゴリゴリ……。
「よしいいだろう」
気づけば、砂より細かいサラサラの青い粉になっていた。
――『調合レベルが3になりました』
まじ!? お手軽にレベルが上がっていく!
――『総合ランクが2になりました』
うん? 総合ランク? なんだろう。後で色々確認してみないと分かんない事だらけだ。
次は、葉。これも花びらと同じだ。そう言っておばあちゃんは、葉も乾燥させた。
そして、それもゴリゴリとする。また砂より細かいサラサラの緑の粉になった。
「では、この粉と花びらの粉、葉の粉を1:1:1の割合で混ぜ合わせる」
ごりごりと混ぜると、凄く綺麗な色になった。エメラルドグリーンっていうの?
「ムラなく混ざったな」
――『調合レベル4になりました』
あ、また上がった。
「さて、魔石粉がほとんどなくなったな。今度は、これを粉にしてもらおうかな」
渡されたのは、赤っぽい石だ。
「これにゴリゴリとすれば、粉になるはずだ」
これって大根おろしの要領で、粉にするみたい。石なのに粉になって行く。
「その石はな、魔石と言われていて薬の調合に欠かせないものだ。純度が高い物ぼど、薬の質も高くなる。まあそれは、最低ランクのものだかな。あとは、それを先ほどの様にすり鉢でさらに細かくする」
言われた通りすり鉢でゴリゴリとしていく。またサラサラの粉になった。なぜか真っ白になったけど。
――『調合レベル5になりました』
――『乾燥』を獲得しました。
――『総合ランクが3になりました』
やったぁ! レベル5になった! 総合も上がった!
「では最後に茎だ。乾燥させれば……」
「待って! 乾燥やってみたい!」
「何? もうレベル5になったのか!」
驚くおばあちゃんの言葉に、僕は頷く。
「素質があるようだな。乾燥は触れている物を乾燥させられる」
「うん。わかった」
茎を僕は受け取った。
「乾燥」
ばあちゃんの様にすぐにはカサカサにならなかったけど、見事に乾燥させる事ができた。
そして、これも粉にする。最後に、先ほどの白い粉と混ぜ合わせた。
――『調合レベルが6になりました』
あ、上がった!
あれ? そういえば乾燥って一回で上がらなかったなぁ。乾燥にはレベルないのかな?
おばあちゃんとお母さんは、嬉しそうにしているのだった。