第10話
「マードさん」
「アキちゃんか。もしかして、もう調合したのか?」
「うん。あの普通とちょっと違うのもあるんだけど……」
「どれどれ」
瓶は全部で六つある。マードさんは、それの蓋を開けて覗き込む。
その中の一つは、黄色い花と葉を調合したもの。色は、やわらかい黄緑色だ。
「これは……」
ドキドキして待っていると、その黄色い花と葉を調合した粉を見たマードさんが呟いた。そして、僕を見る。
「これ、アキちゃんが作ったんだな?」
「あ、はい」
「アレンジで作ったんだよな?」
「え? ……はい」
アレンジって事になるのか?
「君、素質あるよ。是非薬師組合に登録した方がいい。紹介状を渡すからさ。それがあれば、めんどくさい試験なしで入れるから」
「え? ありがとうございます!」
試験なんてあったんだ。
「あ、そうだ。登録料っていくらですか?」
「2万だ。ちょっと高いがレシピ本も貰えるし、仕事に困る事もない」
「レシピ本?」
「あぁ。レシピ本と言っても共有のレシピだ。アレンジは載ってない。普通ポーションの素は、青薬草で作る。でも才能ある者は、レシピを改良してオリジナルのポーションの素を作る事ができるんだ。つまりアキちゃんには、その才能がある!」
あの粉って、ポーションの素だったのか。レシピ本にポーションの作り方も載っているのかな? だったらほしいかも!
「はい。640Gと紹介状」
「ありがとうございます! あ、そうだ。瓶がほしかったんだ」
「瓶? いくついるかな?」
「持てるだけ下さい!」
で、鞄に入ったのが15個だった。
瓶は、頑張れば片手で三つ持つことが出来る程小さいのに、15個しか入らない。
鞄の容量は20で、煙玉が2個で4、ガイド本が1。それで瓶が1個1だから15個しか入らなかった。まあ売りに来た時に、瓶を買って帰ればいいか。
瓶代は、1個10Gなので150G。
因みに紹介状は、手で持っている。
今回の儲けは490Gで、これを繰り返すと21回で1万Gちょいに……。マジ!? 20回以上も繰り返さないとダメなのか?
いや、黄色い花のは少し高いよね?
「あの! アレンジのって買い取り高が少しだけ高いですよね?」
「あぁ。そうだな、茎の部分のは一緒だけど、1.2倍の120Gだ」
「ありがとう!」
アレンジだけで1.2倍!
黄色い花だけで調合すればいいかもしれない! 帰りに摘んで帰ろう。
帰りに薬草の小さな森に寄って、黄色い花を3本採取。手に持てるのが3本だった。
家に帰ると早速調合を始める。
調合をするのは、茎を抜かした部分。なので今回も瓶6個になった。それを持ってマードさんの元へ急ぐ。
720Gになった。今回は瓶を買わずに帰り、薬草の小さな森で黄色い花を採取して帰る事にした。
黄色い花は、青より少ない。3本採取したけど、この辺りにはもう生えてなさそう。
僕は、マップを確認する。近くにはモンスターはいない。ちょっとだけ森へ入る事にした。
何とかモンスターに会わずに、更に4本採取して家に戻った。
よしこれでいっぺんに作れる。7本あるから14個。瓶もちょうど14個ある。次は、瓶を買って来ないとだめだな。
うん? ふと机の上に置いてあった青い花が萎れているのに気がついた。
花って放置すると萎れるの!? これ調合に使えるのかな?
そうだ。おばちゃんに聞いてみよう!
萎れた青い花を持って僕は、おばあちゃんの部屋に向かった。
「おばあちゃん! 花が萎れちゃったんだけど、これ使える?」
「そうか。伝え忘れていた。ごめんよ。そのまま放置しておくと枯れる。そうなると、乾燥が上手くいかず、調合しても綺麗な粉にならないからそうなったら捨てるしかないだろうな」
「え! そんな……」
使う分だけしか採取できないのか……。
「採取袋というのがある。それに入れれば枯れる事はないが、私が持っていた袋は穴が空いてな。使っていなかったしすっかり忘れておった。マードさんの所にも売っていると思う」
「そっか。買えるんだね。ありがとう」
「頑張れよ」
「うん!」
仕方ない。作れるだけ作って持って行こう。そして、袋を買ってそれに入れるようにしよう。
僕は、採取した黄色い花を茎だけ残し調合した。
『乾燥』が一つ上がって3レベルに、『調合』も一つ上がって9レベルになった。そして、『応用』もあがった!




