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眠たい目をこすりながら

作者: さいた真央

夜に職場を出てスーツのまま家の近くの公園のベンチで100円の缶コーヒーとタバコを吸うのが日課だ。

学生の頃は講義が終わってみんなで安い居酒屋に集まって、色つきの泥水のような不味い酒とくさい給食のような料理を注文して朝まで騒いでいた。でももうそんな元気はない。

就職してはや6年。今年で28になる。

あぁ、冷たい夜風と草の擦れる音を聞きながら空を見上げる。雲なんてない綺麗な空、でも星なんて見えない。そんな空を眺めながらタバコを吸う。

別に人生がつまらないわけでもない。苦しいわけでもない。ただ何もしたくないのだ。何もしたくないのだ。


ある日いつもの日課をこなしていると、横に若い男の人が座ってきた。彼は突然泣き出した。別に声をかける気もないし、心配にもならない。ただただソレを見ていた。ソレは何も無い日常に入りこんできた非日常だった。しばらくすると彼は去っていった。次の日公園の近くで投身自殺があったらしい。彼だろう。何が起きたんだろうな、死ぬほど悲しいことって何だろう。


またある日いつものように日課をこなしていると、横に若い男の人が座ってきた。自殺したと思っていた彼だった。彼は泣いてはいなかった。ただ、悲しそうな顔をしていた。突然声をかけたくなった。彼に声をかけようとすると彼は突然泣き出した。何も言えずに見ていた。見ていることしか出来なかった見ていることしか、私は見ていることしか出来ない。いつだって、どんなときも考えることが出来ても、辛い人がそばにいても見ていることしか出来ない。何でだろうか、考えてもわからない。

そろそろ朝になる。私は タバコに火をつけようとライターを取りだした。何でだろう、私は眠たい目をこすりながら朝を迎えた。

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