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ゲーム脳盗賊、闇を狩る。  作者: 土の味舐め五郎
第二章 ~アシバ皇国:白ムジナ盗賊団~
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不穏な村


   △


 村へと無事戻ったヤギリ達はまず墓守の長ペイダンの元へ向かった。

 ペイダンは最初に驚いた表情を見せ、その後で五人の無事の帰還を喜んだ。そして、試練を乗り越えた者達を労いつつ「森の賢者とはどのような話をしたのか」と訪ねた。

 ヤギリ達は困惑した。森の賢者と呼ばれる者とは全く会っていなかったからだ。

 それを聞いてペイダンは再び驚いた。試練を乗り越えた者は森の賢者に招かれ、対話を経た上で森の道が開かれると聞かされていたからだ。同時に、自力で抜け出してきたヤギリ達を賞賛もした。


「何はともあれ、お疲れ様でした。あなた方はピキリーナの試練を突破した史上初めての方達です。今宵は祭りを開いておもてなし致しますので、それまでゆっくりおくつろぎください」


 ペイダンからの申し出を快く受け入れたヤギリ達は、祭りが始まるまでそれぞれ時間を潰すことにした。

 ヤギリは寝所で会った王の霊についてペイダンから聞こうと思った。だが「……その話でしたら祭りが始まってからの方が良いでしょう。ピキリーナの歴史と絡めて詳しくお話致します。では私は準備がありますので」と言われて断念せざるを得なかった。


 二人の様子を窺っていたサーベイがヤギリに近づき小声で呟いた。


「実は森の賢者のこと、知ってたんだよね。ただ、口外しないように釘を刺されてたから。昔の試練の時にね。危うく口走りそうになったけど」


「もしかして、最初に森を案内されてるときに言いかけたアレか」


「そう。で、実際は全然賢者に招かれてる感じなんてなかったじゃない?何か変だなぁと思ってさ。それに、村の男達がなんかやけに少ないのも気になる。狩りに出かけてるっていう話だけど」


「気になるって、どういう……」


「なんとなくだけど、不穏なものを感じるなぁってこと」


「不穏ねぇ。……墓守達が俺たちの手に入れた宝を横取りしようと企んでるとか?」


「あまり考えたくはないけどね。前に来たときはそんな気配全くなかったし、結構世話になったからさ」 


「うーん……。わかった。とにかく気をつけておく。他の三人には?」


「まだだよ」


「じゃあアルミナとチカには俺が言っておくから、そっちはキリバを」


「りょーかい」


 二人は村の者に気取られないよう仲間と情報を共有した。

 キリバとアルミナは問題なかった。ただ、チカに馬鹿正直に伝えると不測の事態が発生するかもしれないと思ったヤギリは、アルミナにチカと行動を共にするように頼んだ。加えて、サーベイとキリバにもチカの行動を気にかけるように伝えた。


 昼頃になると狩りに出ていたという男達が帰ってきた。確かに、いくらかの獣を獲ってきてはいるので全くのデタラメではないし、特に異様な雰囲気も感じられない。

 聞くと、祭りで振る舞うための肉だというので、ヤギリ達は少し警戒を弱めた。


「よくよく考えたんだけど、宝を奪うなら墓所の裏口で待ち伏せしてたほうが確実かなって。それに女子供はいたって普通だし」


 サーベイもそんな風に呟いた。

 男達が戻ってきてからは、あっという間に祭りの準備が進んだ。日が暮れ始めると火が焚かれ、開拓神の木像が広場に祀られた。


 そして、祭りが始まった。


 肉や酒が振る舞われ、女達は踊り、夜の村は大いに賑わう。

 ヤギリ達も、毒を盛られる事も無ければ酔ったところに不意打ちをかけられることも無く、酒を飲まないキリバやチカも十分に祭りを楽しんでいた。

 ペイダンの頼みで、どんな宝を手に入れたのかを話して聞かせたり、可能な範囲で実物を見せたりもしたが、その時も無理に奪われるような素振りは無かった。

 夜が更けると女子供はそれぞれ家に帰り始め、祭りの喧噪は止み、広場は静かになった。


「俺たちもそろそろ休むか」


 ヤギリが言うとペイダンや村長が立ち上がり「それでは皆さんの寝所となるところへ案内します」と申し出た。そして座っているヤギリの所へやって来て軽く肩を叩いた。


「あっ。そう言えば例の王の霊の話は……」


 チクリ。と首の辺りに微かな痛みを感じ、ヤギリは言葉を止めた。

 直後、彼は急激な眠気に襲われはじめた。

 まずい!と気づいたときにはもう遅く、ヤギリの意識は心地よい眠りの中へと沈んでいった。 

  

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