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ゲーム脳盗賊、闇を狩る。  作者: 土の味舐め五郎
第二章 ~アシバ皇国:白ムジナ盗賊団~
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竜魔族の角

 

 ◇


 アルミナは包んでいた光が消えてから10分近く経っても動かないままだった。

 ヴァスコーが「問題ねェからおとなしくしてナ」というから待ってはいるが……。


「あ、動いた!」


 チカの言葉を聞いて直ぐにアルミナを見る。儀式は無事終わったようだ。

 アルミナはヴァスコーと少し話をしてからこっちに降りてきた。


「どうだっ……お?」


「なんだ。ワタシの顔に何かついてるか」


「いやそうじゃなくて、肌の色が前より濃くなってるな。髪も随分白くなった」


「ラテン系?よりももっと濃い感じだね!」


「ラテンケイってなんだよ」


「ラテン系はラテン系だよ!」


「チカの言うことはあまり気にしないでくれちょっと頭がアレなんだ」


「それは知ってる」


「キリバまでヒドイッ!?」


「南西の大陸にいる民族に似てるねぇ」


「行ったことあるのか?」


「まぁ、ちょっとだけね」


 俺は三人の会話よりもアルミナの姿が気になって仕方がなかった。

 やっぱり、こっちの方が断然、イイ。

 欲を言えば、竜気を解放したときが一番だが、これはこれで素晴らしい。

 そういえば角はどうなっているんだろう。前に魔族の戦士と戦った時は竜気と共に発現していたけど、生えたりはしないんだろうか。


「アルミナちょっといいか」


「なんだ」


 手を伸ばし、アルミナの前髪の上から額に触れる。両端のあたりに、見た目ではわかりづらいが骨張った物が少し隆起していた。


「やっぱり力を解放すると角が生えてくるんだな」


 …………。


 …………。


 ……………………。


 ……えッ?なにこの沈黙。


「えっ!?なにこの沈黙は!?」


 チカも全く同じ事を思ったようだ。


「あ」


 迂闊だった。アルミナが魔族だっていうことは隠していたのに、角がどうとか言ったらバレてしまうじゃないか。

 

「あぁ!違うなこれは!角だと思ったけどたんこぶだ!なんだアルミナいつのまに頭をぶつけてたんだ?」


 俺は咄嗟に誤魔化そうとした。


「別にぶつけていないが」


 ああ!察してくれアルミナ!!


「いやしかし!」


「あ~~ちょっといいかなヤギリ?必死になってるところ悪いんだけどね、彼女が魔族だってのはわかってたよ」


 だから角の事を隠す必要はないとサーベイは言う。


「えっ?うそ、なんで?」


「最初からあまり司祭っぽくないとは思ってたんだけどねぇ。それはまぁいいとして、遺跡での戦闘を見た辺りから人並み外れてるって気づいて、そんでさっきヴァスコーの最高司祭だって聞いたので確信したかな」


「確信って……『破壊神を祀る最高司祭は魔族』みたいな情報を知ってるのか?」


「アルミナース・ドルグアフは有名だよ。興味の無い人もいるだろうけど、この大陸の国に生まれたなら嫌でも知ることになるはずさ。特に冒険者みたいな連中は破壊魔アルミナの話が好きなヤツは多いからね。そもそも最高司祭っていう役職がヴァスコー信者の中では特殊すぎるんだよ。ようするに、一人しかいない」


「そうだったのかアルミナ!?」


「知らない」


〈知るわきャねえよなァ。何もネェ時は大体屋敷に籠もってたんだからヨ。魔帝国のことはともかく他の国の人間から自分がどう見られてるか、思われてるかなんてコイツにゃァ興味ねえのサ〉


「なるほど……。で、話を戻すけど、魔族だってバレてたのはとりあえずわかった。じゃあさっきの沈黙はいったい何だったんだ?」


「そうだそうだ!教えろー!」


 チカが一緒になって囃し立てるも、再び沈黙が俺たちを包む。


「……なに?そんなに話しづらいことなの?」


 キリバですら「理解しがたい」という顔をしている。


 俺はなにか、とんでもない事をしてしまったのだろうか。


「えーっと……すまなかったアルミナ。なにか。良くないことをしてしまって」


「ワタシは気にしていない」


「そこなんだよねぇ」


「そこって何!?変に焦らさないで、誰か説明してくれよ!」


〈……クッ……ハハハハハハハッ!アーハッハッハ!笑うの堪えてたけどもうムリだァーハッハッハ!お前がそういう竜魔族にまつわる事を知らねぇのはわかってたがァ!コイツはァ傑作だぜェ!!ヒャーハハハ!!!〉


「そんなに笑ってるなら教えてくれるんですよねヴァスコー?」


〈もちろん教えてやってもいいぜェヤギリ?その気持ち悪い敬語をやめるんならナァ!〉


「わかったやめる」


〈ヨォシ。いいか?まず竜魔族同士の場合だが、角と角をぶつけるのは友好の証だ。そして手で触ろうとするのは侮辱や挑発にあたるんダ。異性と同性とで若干の違いもあるがナ。実際に手で触れた場合、強く拒絶されれば一種の呪いみたいなのを被る事になる。手が切れたり、酷いときは苦痛に悶えることになァる〉


「人間の場合は……?」


〈魔族でもねぇヤツが角に触ったりしたらまァ死ぬだろうなァ!〉


「死ッッ!?」


〈物理的に報復されるって事だがなァ?もっとも普通は触る前にぶっ殺される!だァが!それはあくまでも拒絶されていればの話だァ!気を許している相手になら触らせてやる事だってあらァ!〉


「なんだ……それならいいじゃないか?」


〈ところがそうなってくるとまた話は変わってくる。竜魔族が気を許して角を触らせるなんてのはよっぽど好意を持っている相手に対してだけだァ!ぶっちゃけて言うとなァ、人間同士で言ったら性器を触らせてやってるようなもんだぜェ!〉


「セイキ……ん?性器だって!?」


 アルミナの顔を見る。なぜか本人も不思議そうな顔でヴァスコーの話を聞いていた。


「なに。そうなのか」


「なんでアルミナちゃんもわかってないの!?」


〈コイツは結構世間知らずだしそういうのに無頓着だからしょうがねェ。だが、ヤギリの方は早いうちにそこの二人から聞いておいた方がいいんじゃないかァ?いろいろとヨォ〉


 確かにそうするべきみたいだ。

 とりあえずさっきの沈黙の理由はわかった。

 サーベイとキリバは竜魔族の角の事を知っており、俺が気軽に触ってしかもアルミナがそれを拒否しなかったことへの驚きと戸惑いで言葉を失ったということか。


「まぁ、その、なんだ。今度からは気をつけるよアルミナ……」


「……そうか」


 アルミナが一瞬残念そうな顔をしたような気がした。


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