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ゲーム脳盗賊、闇を狩る。  作者: 土の味舐め五郎
第二章 ~アシバ皇国:白ムジナ盗賊団~
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儀式と夢と竜の涙


   △


〈そんじゃァさっさとやっちまうか〉


 ヴァスコーの言葉に従い、アルミナは奉神火台へと登る。割れたメイスを炉の中に置き、指示を待つ。


〈俺様の名を呼び、祈りを捧げろ。お前が今望んでいることを強く祈れ。祈ったら今度はお前の竜の炎でメイスに火をつけろ。あまり強く焼くなよ。じっくり燃やすつもりでな〉


「わかった。……ヴァスコーよ。ワタシの祈りを聞け」


 破壊と開拓を司る神の名を呼び、アルミナは目を閉じる。

 自分本来の力を解放し、竜魔族としての肉体を取り戻したい。

 そう、祈った。

 ふぅと息を吐く。薄緑の魔力が空気と混ざり、炉へと放り込まれる。メイスに触れた魔力は一気に燃え上がり翡翠に輝く炎となった。

 

〈よーしいい感じダ。後は供物が焼け終わるまで祈り続けるんだ。祈祷自体は昔何度かやったことがあるから感覚はわかるだろォ?〉


「あれはやらされたんだ。お前に」


〈細かいこと気にスンナよ!それよりほら早く祈った方がいいゼ?〉


 アルミナは再び瞑目し、祈りはじめる。

 自分の内側の奥深くに意識を向け、光の亀裂をこじ開ける想像をする。

 身体から、炎と同じ翡翠の光が溢れ出す。傍目からは大気中の魔力が包み込んでいるように見えているだろう。


 深く。深く。ワタシの肉体を、呼び醒ます。

 亀裂に深く爪を食い込ませる。


 開け。開け。開けッ!!


 バチッ。


 光が弾けた。

 閉じていた視界が真っ白になる。

 アルミナは目を開いたが、世界は真っ白なままだ。

 仕方が無いから、ヴァスコーが良いと言うまで祈り続けることにした。

 そのうち自分の心の声も遠くなって、白い世界が少しずつ暗くなっていく。

 暗闇が全てを包んで、アルミナは意識を失った。




 少女が泣いている。悲しそうに。

 巨大な黒い手が、少女の頭を撫でている。




 おぉおぉ、怖かったな。熱かったな。苦しかったな。

 大丈夫だ。ここにはもうお前を苦しめる者はいない。

 お前を酷い目に遭わせた奴らは我が罰を与えておいたからな。

 心配するな。我は人を喰ったりしない。そもそも我は人のために生まれた神だぞ。人を生け贄に寄越されて喜ぶわけがなかろう。それ故にあの地上の者どもは我の怒りを知る事になったのだ。

 泣くな。気分が滅入る。ひとまずそこでゆっくり寝ていろ。


 ……おいガメス!なにかないのか!?人の女子の気を紛らわせるようなのは!なんだこれは?カード?トランプ?これで遊べばいいのか?どうやって遊ぶんだ!ババ抜き?ええい!貴様もこっちに来て教えろ!




 ぬぅ……。

 どっちだ?どっちなのだ?こっちか?

 わからん!ええいこうなったら……。


 ビビーッ!反則行為を確認!スクォーンの負け!そして赤符一枚追加!


 なにっ!?駄目なのか?!


 当たり前だろう!その子が勝てなくなるじゃないか!相手の表情や仕草や気配をよく見て考えるんだよ!というかわからなかったら運に任せて引きたまえ!

 

 うぬぉぉ……ラクナハプナに縋る事になるとは……!


 フフフ。


 む?ようやく笑ったなお前。よし、この勝負は我の勝ちということで。


 駄目に決まってるだろう。


 むぅ……。


 アハハハハ。


 そういえば、お前の名前を聞いてなかったな。ずぅっとお前お前と呼ぶのも気分が良くない。何というのだ?


 私は、リンネです。スクォーン様。


 様をつけんで良い。ここに来たのならもう人と神の関係ではないのだからな。


 ほ、本当にですか?


 本当だ。


 す、スクォーン……様。


 おい。


 まぁ待てスク。まだここに来たばかりで慣れていないんだ。それに君の見た目も良くない。ムリに呼ばせることもないだろう?時間なんぞの概念はないんだから、気長にやったらいい。


 それもそうだな。……我の見た目は良くないのか?


 さて、私もやることがあるのでね。審判を置いていくからじっくり楽しんでくれたまえ。


 ……よし。続きをやるぞ。


 ハイ!




 荒ぶる開拓の神と、人であった少女は、悠久なる遊戯の時を過ごした。




 チッ!あともう少しだったのになァ!結局お前に勝ち越されたかァ!


 危なかったぁ。スクに負けたまま生まれ変わるのは絶対嫌だったもの。


 なかなか言うようになったじゃネェか!次からは勝敗はリセットだからナ!リンネが戻ってくるまでとことんゲームをやりこんでやるからヨ!


 あー!ずるい!


 つってもガメスの事だから絶対に精密なバランス調整してくるんだろうけどよ……。まぁそれまでのお楽しみって事デ!


 うん!……じゃあ、行ってくるね。


 ……どうした立ち止まって。怖くなったか?


 私、また生け贄にされたりするのかな。


 アアン?そんなわきャねーだろォ?エクリュイアにいろいろ頼んでおいたんだからヨ!お前は炎を恐れる必要もねぇ、非力さを嘆くこともねぇ、人様の言いなりになることもねぇ、そもそも人間にはならねぇから安心しろ!


 人間に生まれ変わるんじゃないんだ?


 アッ。まぁ、そうだな……。見た目は人間だ!アレだ!とにかく強い種族になるから!


 フフフ。……ありがとうスク。またね。


 アア。……またナ。


 


 少女が泣いている。嬉しそうに。

 巨大な黒い手が、少女の頭を撫でる。

 そして、そっと、背中を押した。 




「……スク」


〈……オ、おォ!目を覚ましたな!〉


「ワタシは寝ていたのか?」


〈そうダ!しかも立ったままなァ!〉


「夢を見た気がする」


〈……どんなだ?〉


「忘れた」


〈ハハッ!そりゃ残念だなァ!〉


「残念なのか」


〈俺様じゃなくてお前がなァ〉


「?別に残念ではない」


〈そうかァ?ならイイんだけどなァ〉


「変なヤツだ」


「ハハハッ!お前も、なァ!」 


 ヴァスコーの言い方がアルミナには引っかかった。

 ふと、頬に違和感を感じ触れてみると、濡れていた。

 

 なんだこれは。……涙?

 確かに、これは変だ。

 別に悲しいことなど、無いのにな。

 

 それは、アルミナが魔族として生まれてから、初めて流した涙であった。


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