メインクエスト:小目標『墳墓を攻略せよ』10
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骸骨の衛士……ピキリーナガーディアンとでも名付けようか。この強そうな相手と一対一で戦って勝つことが、俺にできるのだろうか。
今までは不意打ちを徹底してきたからこそなんとか敵を倒すことができたが、正々堂々一騎打ちとなると俺に勝ち目は無い。
以前キリバに助太刀した時でさえ、傭兵達にボコボコにされたのに、どうすればいいんだ?あのとき相手は複数人だったけれど、武器は持ってなかった。
それに、どう見ても戦闘力が段違い……ん?
目覚めた衛士の動きは思っていたよりもゆっくりだ。道中の骸骨達より少し速いくらい。それに、仕掛けの起動と同時に発していた圧力も弱まり、ほとんどオーラを感じない。
まるで、俺の強さに合わせてくれているかのようだ。
「まさかな」
ゆっくりといっても、剣による攻撃はもちろんしてくるので油断はできない。
注意しながら、ガーディアンが大振りした隙を突いて首元にダガーを突き立てる。しかし、効かない。
よく考えてみれば、骨の身体をダガーで小突いたところで有効なダメージなど与えられないだろう。鈍器でぶっ叩いた方が良さそうだ。
だけど、そんな武器はないし、今はアルミナに借りることもできない。
「どうすりゃいいかな」
キュキュキュッ!
サヨがガーディアンに飛びかかり、剣を持っている手に齧り付く。
ガーディアンはサヨを気にすることなく、そのまま剣を振りかぶる。
剣を避けると、サヨはタイミング良く飛んで俺の首に戻ってきた。
「ああ、あるな。ちょうどいい武器が。ありがとうサヨ」
キュッ!
盗賊は盗賊らしく、盗みで勝負するべきだよな。
魔帝国の戦士と戦ったときは、クロトの指先を発動しなければ不可能だったが、このガーディアン相手なら、現在の能力値で勝負できるかもしれない。
次の大振りが勝負だ。
小刻みに間合いへ踏み込む素振りを見せ、攻撃を誘う。
ガーディアンが剣を上段に構え、振り下ろした。
呼吸を止め、地面を這うように屈み込んでガーディアンの右手側へ肉薄する。
ガーディアンは一瞬、相手を見失ったように顔を左右に動かした。
ダガーを左手に持ち替え、右手でガーディアンの剣を握る手に触れる。
時間が停止し、スリのタイマーが始動する。猶予は五秒。
『右手:茨の剣』
欲張って他の装備に手を出す余裕は無い。即座に選択して実行する。
ガーディアンの手をすり抜けるようにして、俺は剣の柄を掴んだ。
よしっ!!
咄嗟に奪った剣で踏み込んでいるガーディアンの右足を斬りつける。
体勢が悪く、あまり体重を乗せられなかったのでそれほどダメージを与えたようには見えなかった。
「イマイチか!」
俺は大きく距離をとり、ダガーを鞘に収めて茨の剣を両手で構える。片手剣だと思うが、妙に重くて扱いづらい。適正とかの問題かもしれないな。
考えを巡らせながらすぐに動けるよう神経を研ぎ澄ます。しかし、ガーディアンは動かない。
「……なんだ?」
「次は俺かもな」
そう言ったのはキリバだ。結界が解除されたらしく、既に台座から下りてきている。
「なるほど、決着がつくと交代ってわけか。それも、台座の高さの順で」
「その剣、返した方がいいんじゃないか?正々堂々やるんだろ」
「ああそうだな」
茨の剣をガーディアンの足下に置いてキリバがいた台座へと乗る。
……なにも起こらない。
「なんで俺だと駄目なんだ!?」
「あのさヤギリ氏。もしかしてサヨちゃんがいるからじゃない?」
「あ」
キュ?と鳴きながらサヨが顔を出す。たぶん「呼んだ?」と言っている。
「サヨ……少しの間キリバにくっついてな」
おもむろにサヨを引っ掴んでキリバに向かって投げてやった。
直後、再び台座が赤く光り出し、ガーディアンが動き出す。
やっぱりサヨが一緒だったのが駄目だったのか。台座に二人分乗っていると判定されてたわけだ。
一方、急にぶん投げられたサヨは、不機嫌そうにキャキャッ!と鳴きながらもしっかりキリバの顔に着地している。
「ッて!顔にひっつくな!大人しくしてろ!」
キュッ!
反抗的に鳴いたサヨは渋々とキリバの背中にしがみついた。
隙無く構えるキリバに、ガーディアンが距離を詰めてくる。
速い。
俺と戦ったときとは動きが違う。
「あ~。これはそういう感じかなぁ」
サーベイの言葉に俺も「もしかして」と呟く。
「あの衛士は台座の高さに比例して強くなるんじゃ無いかなぁ」
俺も同じことを思った。
そして、もう一つ。
『正しい戦闘力の順で台座に乗る』が条件だったら、ちょっと、悲しい




