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ゲーム脳盗賊、闇を狩る。  作者: 土の味舐め五郎
第二章 ~アシバ皇国:白ムジナ盗賊団~
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メインクエスト:小目標『墳墓を攻略せよ』7

 

   ◇

 

 大蛇のいた部屋は、下層領域の入り口となる最初の部屋だったようだ。  


 なぜなら、隠し扉の先からはいよいよアンデッドの衛士達の襲撃が始まったからだ。部屋と部屋とを繋ぐ通路で出現する彼らはいわゆる下っ端、『道中の雑魚』に分類されるのだろう。


 しかしゲームのプレイとは違って、実際に自分がその場をくぐり抜けるとなると、敵意を持って向かってくる骸骨達を『雑魚』などとは思えない。油断したら、こちらがやられるかもしれない。そんな風に必要以上に相手を警戒してしまう。

 ただ、それは戦闘に特化していない俺の心情であって、先頭を行くアルミナや背後を守るキリバやサーベイはまた違うのだろう。

 前方からやってくる骸骨達はアルミナによって粉砕され、背後から忍び寄る者達はキリバとサーベイが打ち倒す。万が一防御を掻い潜って来た者がいたとしても、チカが滅してしまう。

 最初にチカが迎撃しようとしたときは味方を巻き込む危険を感じて止めようとしたのだが、さすがのチカもその辺は考慮しているらしく、魔砲のモードチェンジによって光弾をダブルタップで撃ち込むスタイルに変えた為に問題はなかった。まるでサブマシンガンを扱っているように見えた。しかも、小さな弾丸をたった二発当てているだけだというのに、威力はそのままなのか、それとも属性的な相性が良いからか、骸骨達は蒸発するかのように消し飛んでいく。


 俺一人だけ、まるで戦闘の役に立っていない。


 仕方がないとはいえ、なんか、とても、不甲斐ない。


 もちろん。戦闘以外でならばやることはある。未踏の領域である為、目星のスキルを存分に使い、隠された罠やら仕掛けやら通路やらを注意深く探ってはいる。

 ただ、ほとんど意味がない。そういった探知や看破が重要な領域ではないからだろう。敵の気配やらを察知するにしても、それはアルミナが全部やってしまう。


 キュキュキュ。


 首元でサヨが小さく鳴く。


〈やることないなら後々のために体力温存しておきなさいよ〉


 そんな風に言っているような気がした。


 中ボスらしき位置づけの衛士が待ち構えている広い部屋でも、俺は基本的にあまりすることがなかった。

 一つめと二つめの部屋は、群がるスケルトンの衛士を相手にしつつ、ゴーレムと戦う形になった。

 俺はキリバとサーベイとチカに守られながら、アルミナがゴーレムを倒すのを待っていた。もっとも「待つ」というほどの時間は経過してはいない。ただ、アルミナが言うには「結構堅いな」だそうだ。


 三つめの部屋のボスである衛士はアンデッドだった。が、人間の骸骨ではなかった。

 おそらくはトロールなどに分類される魔物だろう。角はないが、口の端から上下に伸びる四本の凶悪な牙が特徴的だ。巨大な棍棒も持っている。

 この時、アルミナがちらっと俺の方を見て「アレならいいか?」と聞くので「まだ駄目だ」と答えた。

 たぶん、例のメイスを使ってもいいかという事だろう。向こうが棍棒を持っているから意識したのかもしれない。

 意外にもこのトロールスケルトンには苦戦した。

 アルミナは一瞬にしてトロールを打ち据え、吹き飛ばし、バラバラにするのだが、先へ進む扉が開かない。そして、トロールは再び復活する。チカが星属性の魔砲で攻撃しても同じだった。

 

「これは何か手順があるな」


 この部屋だけスケルトンの衛士が出現せずボス単体なのも意味深だ。

 円形に広がる部屋を見渡す。壁、床や天井を目を凝らして調べるが、とくに何もない。

 

 そうなるとあのトロールになにかあるのか?


 そう思ってトロールスケルトンを凝視する。


 俺の目に、トロールの両手足にそれぞれ判定があるように白くハイライトされて映った。

 これはもしかすると?


「アルミナ!手足だけを攻撃して無力化してくれ!手足が無くなった後は一切攻撃するなよ!」


 アルミナは即座に実行に移した。聞いていた他の三人も察したような顔をする。


「……手足を破壊した後も向こうが攻撃を仕掛けてきたらどうする?」


 サーベイが少し困り顔で口の端を上げながら聞いて来る。


「ひとまず、逃げ回る」


「だよねぇ敵対しちゃいけないもんねぇ」


 爽快とも言える大きな打撃音が四度響き渡る。

 四肢を失ったトロールスケルトンは前のめりに倒れた。


「そのまま!そのまま待機だぞアルミナ!」


「わかっている」


 トロールは動き出す様子がない。


 だが、扉が開く様子もない。


「この後はどうするんだよ」


 キリバが頭を掻きながら言う。


「とりあえず、扉。よく見てみないか?」


 そう言って俺は扉の前に皆を集めた。


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