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ゲーム脳盗賊、闇を狩る。  作者: 土の味舐め五郎
第二章 ~アシバ皇国:白ムジナ盗賊団~
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メインクエスト:小目標『墳墓を攻略せよ』6

 

  ◇


 地下の空洞をうまく遺跡に利用したような、広い空間に出た。神殿最下層の儀式の間と同じくらい広い。一見暗いのだが、不思議な明るさに包まれている。いくつかの岩や石が、淡く、白く、発光しているのか、限りなく目を刺激しない、やわらかな照明だ。

 湿気は強いが、とても涼しい。むしろ寒いくらい。

 

「大蛇が、いないねぇ」

 

「よかったじゃん!」


「前はどこら辺にいたんだ?」


「ほら、奥にあるあの穴の前」

 

「じゃああの先に行けばいいのか」


 キュキャキャッ!!キャキャキャキャキャ!


 急にサヨが怒りだした。そして飛ぶように地面に着地すると奥の穴の方へ走り出し、途中で右の壁の方へ向き直ると「シャーーっ!!」と威嚇を始めた。


 何かいるのか?


 そう思ったとき、壁だと思っていたモノが動き出した。


 人の胴よりも太い縄を思わせる黒い影。壁から床にスルスルと伸びるように下りて行き、小さなサヨと向かい合う形になる。まちがいない。あれが大蛇だ。


「サヨっ!!!」


 俺は慌てて走り出した。


 何やってるんだサヨ!そんな大蛇に喧嘩なんか売ったら、一飲みにされるか尻尾で叩き潰されるに決まってる!

 サヨは大蛇の巨体にまるで怯む様子がなく、ひたすらシャーシャーと怒っている。

 俺は、今にも大蛇が大口を開けてサヨに襲いかかるのではないかと焦っていた。

 後ろから誰かが俺を抜き去った。

 アルミナだ。

 例の木製メイスを片手に持ち、颯爽と大蛇へ迫る。この速度なら、大蛇に一撃を加えて吹き飛ばすことができるかもしれない。


「アルミナ!頼む!」

 

 任せろ。という意思を表すように、アルミナの強靭な脚が一際強く地面を蹴った。


 大蛇は目前。 


 メイスを振りかぶり。


 直前で、アルミナは急に動きを止めた。


 どうした!?


 そう思ったのも束の間、大蛇が何事もなかったかのように奥の穴の方へ這いずって行った。


 それを見届けたアルミナはこっちへゆっくり戻ってきた。非常につまらなそうな顔をしている。


「どうしたんだあの蛇は?お前の気迫に圧されて逃げてったのか?」


「いや、そうではなさそうだ。サヨに何か言われて仕方なく帰って行ったようにも見えたぞ」


「サヨはなんて言ってたんだ?」


「わかるわけがないだろう」


「そ、そうだな。ありがとうアルミナ」


「礼を言われるよな事はできていない」


「サヨを助けようとしてくれただろ?俺は嬉しかったよ」 


「そうか」


 サーベイ達もやってきて「大蛇がなんでおとなしく引き下がったんだ?」と聞いてきたが「サヨが何か蛇と話してたっぽい」としか言いようがなかった。案の定、皆首を傾げている。


 功労者であるサヨは大蛇が張り付いていた壁の前で休憩している。


「大蛇はいなくなったけどさー?あそこの穴の向こうに行ったらまた遭遇しちゃうんじゃないの?」


 確かにチカの言う通りだ。


「けど他に道は無さそうだぞ」


 キュキュッ!


 サヨが呼んでいる。壁を二本の前足でカリカリと引っ搔きながら。

 大蛇が張り付いていた壁……なにか仕掛けがあるのか?

 全員でサヨの元に行き、壁を調べる。

 突き出ているいくつかの発光石が怪しい。そう思って見ていると、目星のスキルによる反応がある石を見つけた。


「これを、どうするんだ?」


 なんとなく押してみると、石が壁にめり込んでいった。

 ゴゴゴゴ……と音がして、反対側の壁だと持っていた部分が地面に沈んで道が出来ていた。


「これってさ。石を押しただけでこんな簡単に開いちゃっていいのかな?」


 チカが言う。


「だから壁に大蛇がくっついてたんじゃないかい?」


 サーベイが答える。


「もし気が付かなったら、奥の穴の方に進んでたんだよな俺ら」


 キリバの言葉に、その場合どうなっていたのかを、皆が一瞬想像した。


 たぶん、罠が待ち受けていたんだろう。


 いやそれとも、そう思わせてこっちが罠だったり?さすがにそれは考えすぎかもしれないな。


 ……でも。


「こっから先は本当に、未知の領域ってわけだ。アルミナ。先頭頼む」


「ああ。任せろ」


 いつも通りの受け答えだったが、アルミナの表情がとても嬉しそうに見えた。


 薄暗い場所だったから、もしかしたら俺の見間違いかもしれないな。



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