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ゲーム脳盗賊、闇を狩る。  作者: 土の味舐め五郎
第二章 ~アシバ皇国:白ムジナ盗賊団~
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メインクエスト:小目標『神殿を攻略せよ』2


   ◇


 そこから下層まではただアルミナが扉を開けたり振り子刃などの仕掛けを止めたりして真っすぐ進んで行くだけだった。本来行くべきはずだった幾つもの部屋には一体どのような謎解き要素があったのかは想像するしかない。


 下層は頭を使った戦闘になるということだから、流石にここからは気を引き締めて行かなければならないだろう。


 アルミナが扉を開けようとしていた所で、後ろの方から近づいてくる気配があったので振り向くとペイダンが小走りでこっちに来ている。


「ペイダンさん?墓守は挑戦者と接触しちゃダメだって……」


 息を切らしながらペイダンは「いやいや……これは……もう。試練って……いうか、はぁはぁ……実はだね、墓守に代々言い伝えられていることがあって、そのうちの一つが、『神殿を管理する側の力を持った者が試練に訪れた場合は、その行く末を見守るべし』と」


「そういう挑戦者が現れることを予測してたような言い伝えですね」 


「どういう意図で伝えらたことなのかまではわからない。アルミナ様がこの試練の最後の間に行くと何かが起こるという事なのか……どのみちこの目で確かめなければ」


 儀礼用のメイスが欲しいだけですよ。とは言えなかった。


 ……でも、実際最後の間で何もなかったらペイダンはがっかりするのでは?ちょっとそれは申し訳ないな。




 下層の試練では強力な衛士と戦うことになる。

 

 だというのに、未だにぐっすり眠っているチカを背負ったまま戦闘に入るのは少々不安だ。キリバ、サーベイの二人が守ってくれるのならなんとかなるだろうけれど。

 

 いや、守られるとかいう前にアルミナが全て蹴散らしてしまう可能性が高いか?それに、司祭ということにしているアルミナの獅子奮迅の戦いぶりをペイダンが見たら、腰を抜かしてしまうかもしれない。そっちの方が心配だ。


 実際に下層の領域で起こったことは、想像していたのとは違った。


 何が起こった、というよりは何も起こらなかったと言う方が正しい。

 挑戦者達へ襲いかかってくるはずの衛士達の気配はほとんど感じらぬまま、上中層と比べて非常に明かりが少なく視界の悪い広間を進んでいくと、何かが左右の壁際にずらっと蹲っている。

 よく見るとそれは蹲っているのではなく、跪いているのであった。

 

 驚くべき事に、壁際で整然と並び跪いているのは武装した骸骨(スケルトン)石人形(ストーンゴーレム)樹人形(ウッドゴーレム)、そして巨大な化け鼠(ラットキング)を筆頭にしたさまざまな獣達である。

 おそらく、試練の衛士達だ。

 アルミナは下層の試練をも無条件で通ることを許されたのだ。許されたどころか、衛士達に歓迎すらされているようだ。

 ペイダンは腰を抜かさなかった。そのかわりに興奮気味に紙と筆を取り出し、その目で見た光景を必死に記録している。

 

 階段を二つ降りて最下層へと辿り着いた。途中にあった二つの試練の間も、最初と同じように衛士たちが跪いていた。

 最後の部屋は巨大な儀式の間のようだった。

 いつから灯っているのか、壁や天井、細長い石灯籠などにはめ込まれた小さな宝玉からは穏やかな光が放たれている。

 照らし出された部屋の内装は、神殿の地味な外観とは打って変わって、壁の模様や細かな部分の意匠も凝った造りになっている。祭壇の周りに騒然と並べられた調度品などは、定期的に掃除されているかのように綺麗で古代の代物とは思えない程。

 

 部屋の奥にある祭壇の周りには横長の台座がいくつかあって、その上には調度品の他にもさまざまな宝物や呪具のようなものが並んでいる。さらに台座の左右の壁際には無造作に宝箱のようなものが置かれている。祭壇は高いところにあって、その上に何があるのかは、ここからじゃ分からない。

 

 広間の中央辺りでアルミナが立ち止まって祭壇の方を見ている。

 

「どうしたアルミナ」


「ヤギリ。こいつがお前のことを見たがってる」


 こいつ?


 他に誰もいないと思っていた儀式の間に、何者かが、いた。

令和4年9月14日内容追加済み。

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