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ゲーム脳盗賊、闇を狩る。  作者: 土の味舐め五郎
第二章 ~アシバ皇国:白ムジナ盗賊団~
58/93

墓守の村へ


   ◇


 サーベイ・ランスは俺の泥棒(未遂)を見逃すかわりに自分を遺跡の案内役として雇えと要求してきた。案内役と言っても、魔物やら何やらと出くわした時には戦闘もこなすということだ。

 なにより、何度か遺跡の攻略に挑戦していて途中までなら容易に進めるだろうという話はとても魅力的だった。

 どうして俺みたいな盗賊に雇ってもらおうと思ったのか聞くと「一番は勘だ」との事。それ以外の理由に関しては、いろいろな要因があって遺跡に挑戦する者がなかなかおらず、ここで俺達と共に挑まなければ一生チャンスはないだろうからということらしい。


「遺跡に心残りがあるのか?」


 俺がそう言うと、軽薄そうにしていた男は顔を一瞬だけ曇らせすぐにまたヘラヘラした感じに戻り「ま、そうだねぇ」と言った。 

 雇うことを約束したあとで「俺が約束を破ってとんずらしたらどうする?」と聞いてみたが「どうせ遺跡に行くんだから勝手についていくさ」と焦る様子もない。「それにあんたはそんなことしないだろうしなぁ」と自信満々である。これも勘だろうか。




 そして現在に至る。

 サーベイはもたれかかった柱から背を離しこちらにやってきた。


「地図はなくてもいいだろ?俺がいれば少なくとも遺跡の敷地内の地理はバッチリだ」


「ああ構わない。よろしく頼む」


 握手を交わしていざ出発という所でギルドの中から誰かが走って来る音が聞こえた。


 受付の若い男だ。少し驚いたような顔をして「おい、どこに行くんだよ」とぶっきらぼうに聞いてくる。


「どこにって、こいつらと一緒に遺跡調査のリベンジに行くんだよ」


「……今更行ってどうするんだよ。上手くいくと思ってるのか?」


「うまく行かなくってもいい。やり残したままでいるよりは。それに、こいつらなら突破できそうな気がするんだよな」


「ちっ……勝手にしやがれ」


 受付の男は吐き捨てるようにして踵を返した。


「んじゃ、行こうか」


 白髪交じりの冒険者は活き活きとして再挑戦への一歩を踏み出した。


   ◇


 大森林の入り口にある村は『ハダホイタヤ』と呼ばれている。森を巨大な城とするならば、この村は門の役割を担っていると言えるだろうな。


 ナナトコリを出発してからの道中、サーベイからは遺跡の話以外に墓守の村についても入念に聞いておいた。サーベイは「村での事はそこまで心配しなくてもいいと思うが」と言っていたが、念には念を入れておきたかった。特に盗賊だと知られるのだけは避けたいと強く主張した。


「そりゃあ盗賊だなんて言いふらしたりはしねぇさ」


 当然じゃないかとサーベイは笑ってみせた。

 本当に村について懸案事項は何も無いようだ。それが逆に不安でもある。そもそもこの冒険者が本当に信用できるかどうかもわからないんだ。


 ふと疑問に思った俺はサーベイに「前に遺跡に挑んだ時は村人から反感を買わなかったのか?墓守の村なんだろう?」と聞いてみた。すると「墓を荒らしたら怒られるがなぁ、荒らさなければ問題はないらしい。なんでも、試練を乗り越えた勇者には古代の遺産を褒美として与えるっていう方針で作られた遺跡なんだそうだ」という意外な答えが返って来た。

 

「そんな遺跡があるのか……。ならそこまで心配する必要はないか?」


「遺跡に挑むのに特別警戒されるってことは無いだろうけど、さすがに盗賊だっていうのはバレない方がいいと思うね」


「まあ、それはそうだが」


「それと、遺跡にもいろいろあるけど墓所の試練だけは殆ど最初で躓いてしまってね。それ以外の場所なら役に立つと思うよ」


「そ、そうか」


 正直なところ、これには少々がっかりした。だが、重要なアイテムを手に入れようとしているのにあまりに楽すぎるというのも考えものだなと自分を諫めた。

 それに、遺跡を探索するにあたって墓守の一族からこそこそ隠れるような事をしなくても済みそうなのだから、それだけでも十分だろう。


 ハダホイタヤまでの距離はそう遠くない。間延びした喋り方のサーベイと会話を続けていれば、いつの間にか到着している事だろう。



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