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ゲーム脳盗賊、闇を狩る。  作者: 土の味舐め五郎
第二章 ~アシバ皇国:白ムジナ盗賊団~
57/93

『サーベイ・ランス』


   ◇


 先に結論を述べよう。俺は失敗した。

 冒険者ギルドへの侵入は成功したが、待ち伏せされていた俺は呆気なく犯行現場を見られ、地図は入手できなかった。


 しかし、結果的には良い方に転んだ。


 朝、宿で遅めの朝食をとり荷物をまとめ支払いを済ませた後、俺達3人は冒険者ギルドへと向かった。キリバは「大丈夫なんだろうな。3人まとめて取っ捕まるなんてことになったら……」と心配している。その時は強行突破するしかないと言ってやった。


「よぉ。遅かったな」


 俺達の到着を待っていたのは、昨日ギルドの端のテーブルで暇を持て余していた男だ。

『サーベイ・ランス』という名の中年冒険者は入り口の柱にもたれかかり、あいかわらず気だるそうにしている。ヘラヘラした軽薄な若者がそのまま歳をとったような印象だ。


 昨晩、ギルドに侵入した俺を待ち伏せていたのはサーベイだった。

 俺が地図を盗みに来るのを予測し阻止しようとしているのかと思ったが、本人が言うには「地図はどうでもいい」との事。ではなぜ俺を待ち伏せしていたのかと問うと「盗んだ手帳を返してくれ」と言う。

『盗んだ手帳』の事までバレていたのかと俺は苦い表情をした。

 昼間の話に戻るが、受付の男に頼んで遺跡の地図を見せてもらった時の事だ。

 持ち出しはできないと言われ、男が地図を元の場所に戻そうと後ろを向いた瞬間、俺は『クロトの指先』を発動し掏ろうと試みた。しかし、地図は受付の所持品という判定ではなかった。あるいはスリが不可能なアイテムという設定だったのかもしれない。

 俺は一日に一度のバーストスキルを無駄に使ってしまう事が許せず、なにかしら盗めないかと思った。しかし受付は金銭はおろか有用な物をほとんど何も持っていなかった。

 ならば、暇そうにしているあの冒険者はどうだ?

 そう思った俺は、受付から情報を聞き出す為に助け舟を出してくれた事への礼を言う(てい)で冒険者に近づき、肩に軽く手を置いた。……冒険者の所持品もロクな物がなかった。財布に金貨を忍ばせてやりたくなるほどに。

 ただ、手帳だけが気になった。

 欲しいと思ったわけじゃないが、スキルを使って何も手に入れられなかったという結果が嫌で手帳を掏ったのだ。

 

「……どうして俺が手帳を掏ったと?」


「今日、俺に触れる機会があったのは君だけだからなぁ。しばらく経ってからやっと気づいた。それほど腕のある奴なら、夜に地図も盗みに来るんじゃねーかって思ってね。待ってたわけだ。ま、半分は勘だな」


 やる気の無さそうな冒険者だと思っていたが、それなりの経験を詰んだベテランなのだろうか。

 しかし、それにしてもだ。夜であれば隠密状態でなかったとしても存在を気づかせないくらいの自信があったのに。……もしかしたらこれも強制的なイベントかもしれない。


〈+1〉


「やれやれ……バレちゃうとはね」


「ところでなんだがぁ、……メモ帳の中身は見たかい?」


「表紙を捲って最初のページの名前みたいなのだけは見た。『サーベイ』……なんとかって」


「サーベイ・ランス。俺の名前たよ。他の部分は?」


「見てないって。こういう言い方は悪いけど、正直、手帳にはそんなに興味なかったんだ。……地図が持ちだせないって言われて面白くなかったもんだから何か掏ってやろうかと思ってね。最初は受付の彼を狙ったんだけど、全然良いものを持って無さそうで」


「代わりに俺から掏ろうとしたわけだ……嬉しいね」


「ん?」今、嬉しいって言ったか?


「ああ、いや、なんでもない。それで、手帳を返してもらえるかい?」


 俺は素直に手帳を返した。


「盗んでおいて言うのもなんだが、すまない。大事な物だったか」


「大事、大事か……。まあそうだな。あまり見られたくないものではあるねぇ」 


「そうか……。さて、これからどうする?衛兵にでも突き出すかい?」


 相手に促すような言い方をしてみたが、目の前の男はそんなことをしないだろうという確信があった。これが強制イベントなのだとしたら、何か、持ちかけてくるはずだ。


〈+1〉


「いいやそんな事はしないさ。ただ、条件がある」


 やはりそうきたか。


「……どんな?」


「俺を雇ってくれよ。遺跡の案内役としてな」



GNP+2

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