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ゲーム脳盗賊、闇を狩る。  作者: 土の味舐め五郎
第二章 ~アシバ皇国:白ムジナ盗賊団~
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場末の冒険者ギルド


    ◇


 大森林に最も近い町『ナナトコリ』の冒険者ギルドの入り口で中の様子を窺う。閑散としているというのが率直な感想だ。

 冒険者らしき壮年の男が右端にあるテーブルで今にも居眠りしそうに右腕で支えた頭を揺らしている。左側にあるカウンターには受付らしき若い男がいて、さすがに居眠りなどしていないがこちらに背を向け椅子に座ってのんびり読書をしてるようだ。他に人はいない。

 入り口から数歩カウンターの方に近づいてようやく受付の男はこちらの存在に気づいたのだが、慌てる素振りもなく本を閉じてからゆっくりと振り返った。


「……いらっしゃい」


 場末のスナックにいる店員のくたびれた挨拶を思わせるテンションの低さに俺は面食らった。……場末のスナックに行った事はないが。


 これが冒険者ギルドか……?


 アルミナとキリバをその場に残し、俺は一度外に出て看板を見た。確かに『ナナトコリ冒険者ギルド』と書かれている。

 

「おーい兄さん。ここは冒険者ギルドで間違いないよ。こんな有り様だけどな」

 

 おそらくこういう反応をされたことが何度もあるのだろう。俺の行動に対して「慣れている」といった口ぶりだ。


「この辺の冒険者ギルドはこういうものなのか?私達は遠い島国から旅をしてきたものでそういう情報には疎くて」


「冒険者っていうのはな。職業としてはアシバを含めた周辺の国じゃかなり前から廃れてきてるんだよ。それなのにうちみたいにギルドが残ってるのは数少ない『純粋な冒険者』と、有益な情報や資料を管理する為だな。冒険者が廃れていった歴史とかそういう詳しいことが知りたいなら皇都の国立資料館にでも行った方がいい。」


「いや、そこまでは別にいい。私たちが知りたいのは別の事だ」


「……あんたらは冒険者なのか?」


 受付の男は後ろにいるアルミナとキリバの方をチラッと見る。俺はともかく、後ろの二人はパッと見て司祭と剣士とわかる格好だからそう思ったのだろう。

 俺は男に自分たちの目的について軽く説明した。

 東の果てにある島国から司祭を連れた巡礼の旅をしている事、巡礼の他にフサヅノ地方にある遺跡の神殿を調査もすることになっている事。

 無論、それらはガメスによる選択肢の補助があって口から出ている方便である。


「調査?……たった三人でか?」


 受付の男は訝しんでいる。少々厳しいか?というか、普通に情報量払って遺跡の事を聞くだけのはずなのに何故か説得が必要な流れになっているのはなんだ?こういうイベントなのか?


〈GNP+1〉


 あっ。これは予想が当たってるってことだな。


「……一番の目的はあくまで巡礼だ。本格的な調査は私たちが本国に帰って報告をしてからになる。今回私達に求められているのは、古い文献にある内容がどこまで正しいかの確認程度だ。もし実際に遺跡の神殿にまで立ち入れたのならこの上ない僥倖ではあるが……」


「……なるほど。それで東の島国とは具体的に何という国だ?調査してどうするつもりなんだ?」


 めちゃくちゃこっちの情報聞き出そうとしてくるなコイツ……。


「できればこちらからの情報は最低限にしたいんだがな。大森林の遺跡について知るのにどうしても必要な条件なのか……?」


「ふん……」


 男は思案するように腕を組んだ。


 思わぬところで手間をとりそうだ。もし無理そうならさっさと大森林の村に赴いてそこで情報を集めた方が良さそうだな。


 そんな風に考えていた所に突如割り込む声があった。


「いいじゃねーかよぉ!ちょっと前にも得体の知れない女魔術師にいろいろ教えてただろ~?」


 テーブルで眠そうにしていた男だ。酒を呑んでいるわけでもないのに酔っているような喋り方が不思議だった。


「おいっ……!全くロクに仕事はしねーのに余計な口は挟みやがって」


 受付の男が忌々しそうに呟く。


「得体の知れない女魔術師?そいつには情報を教えたのに私達には教えてくれないのか?」


「あの女は結構な金を払ってたからな~」


「チッ……」


 憎らし気にテーブルの男を片目で睨む受付。


「情報料が必要なのはわかっている。いくらならいいんだ?」


 俺は受付の男を宥めるように話しかけた。


「……銀貨5枚だ」


「それは、遺跡に関する情報全てでか……?」


 ぼったくられるかもしれないと思って聞き返したのだが、杞憂だった。


「安心しろよ。俺が嘘をついてもどうせあそこの馬鹿が余計な事を言うから」


「ああ……なるほど?」


「おいおい~馬鹿はないだろう~?」


「黙れバカ」


 俺は二人のやりとりを見ていて、ふと思った事を口にしたくなってしまった。


「あんた達、仲がいいのか?」


「そんなわけないだろう!」「やっぱりわかるかい?」


 予想通りの反応が返って来て俺は満足した。



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