メインクエスト:小目標『ムヅラから情報を得る』2
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死にたくなければ、遺跡を守る墓守の一族に盗賊という素性がバレてはいけない。
本当にバレたとしてアルミナがいれば死ぬことは免れそうだが、ムヅラが言いたいのはそういう事ではないだろう。有益な情報も得られず、遺跡の探索以外に厄介な問題が増える。……という事態になるのは絶対に避けろというわけだ。
俺だってそんな事になるのはごめんだ。
「それで肝心のお宝だがな。お前さん達にとって必要になりそうなもんの情報は2つ……。いや、3つって所だな。特に欲張らねぇならそれだけ手に入れてさっさと切り上げればいい」
ムヅラの言うお宝の1つ目は『儀礼用メイス』。ピキリーナが大森林を切り拓いて国を打ち建てた初期の頃からある神殿に納められている。『開拓の神』が祀られていたその神殿に眠るその武具は『儀礼用』とあるとおり特殊な儀式の時に用いられ、扱う者に不思議な力を与えたという。武器として使えるかどうかはわからないらしい。
2つ目は『神の目の地図』。これに関してはそう呼ばれている地図があるという事しか分からず、具体的に何の地図なのかは名前から推測するしかないらしい。『神の目』というお宝の場所が記されているのか、あるいはそういう名称の土地の地図なのか。とにかく貴重な物らしいとムヅラは言った。
俺にはピンとくるものがあった。これはおそらく『マップ』に相当するものだろうと。あえて何も言わず、ムヅラの言葉に頷いておいた。
3つ目は『伝説の盗賊白ムジナに関するなにか』。どんどん具体的な情報から遠ざかっているが、かつて『白ムジナ』が古代遺跡付近で活動していた記録は確かにあるそうだ。ただ、白ムジナ所縁の装備が遺跡に残されているとか直筆の文献が残ってるだとかの情報は噂話に近く、はっきりとどんな物があるかは分からないらしい。それでも、『白ムジナ』に関する物があるのなら確保しておきたいという願望は未だあるという。
「謎ではあるんだよ。ピキリーナという国が存在した時代と白ムジナが活躍した時代はあまりにも離れすぎてるからな。あの遺跡に白ムジナに関わるものがあるっていう情報は怪しい。だが、本当に全く関連がないなら、そもそもそんな情報は出回らない。考えられるとしたら、白ムジナもお宝を手に入れようとして、遺跡の中で大事なものを無くしたとかな。だから、少なくとも白ムジナに関連する何かはあると判断した」
「爺様がそう言うなら、その判断を信じるよ。というか、他に当てもないからな」
「それにアタシらが知らないお宝だってあるかもしれないじゃん。手あたり次第見つけて、いいと思ったものだけ持って帰ればいいよ」
「ニビ!?お前いつから」
「重要なお宝の話の辺りから」
ムヅラは気づいていたみたいで全く驚いていない。
「で、いつ出発するの?明日?」
「あ、ああ。明日には出ようと思ってたけど」
「楽しみだなあ~。あっちの方に行くの久しぶりだから!」
「おめぇは留守番だニビ」
ムヅラが有無を言わさぬ声音で告げる。「言うだろうと思った」と半分呆れたような顔で。
「ええーー!なんでだよ!暇なんだからいいじゃんか!ケチじい!」
「普通の盗みに行くのとはワケが違ぇんだぞ。どっちかっていうと冒険者の領分だ。ヤギリの足手まといになりてえか?」
「うっ……それは……嫌だ」
わかりやすくションボリしたニビは遺跡への同行をしぶしぶ諦めた。「俺の足手まとい」とムヅラは言ったが、俺自体がアルミナの足手まといになりそうではある。それと、『冒険者』という単語をこの世界に来て初めて聞いた。どこかで聞いたかもしれないが、殆ど記憶に残らないくらい印象が薄い。いるのか『冒険者』?
「そういえば爺様。墓守との争いは絶対に避けるとして、遺跡で人間と戦う事になったら当然殺しちゃいけないよな。間違って殺めたら、遺跡のお宝は諦めるしかないか」
ムヅラは笑い出した。あまり今まで見たことが無い笑い方だ。
「や、ヤギリ……。お前さん随分面白いことを言うようになったな……くくく」
「俺、なにか変な事言ったか……?」
「あのなぁヤギリ。少なくとも、遺跡の中で墓荒らしを待ち構えてるような人間がいるとしたら、そいつらはもう死んでる」
「……あ」
つまり、俺は遺跡でアンデッドど戦う事になるのだと、今更気づいた。




