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ゲーム脳盗賊、闇を狩る。  作者: 土の味舐め五郎
第二章 ~アシバ皇国:白ムジナ盗賊団~
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メインクエスト:奪うか奪われるか2


   ◇


 アルミナは強い。


 策などなくても、力で押し通せる。

 

 羨ましいな。ああやって真正面から敵を打ち倒せる力には憧れてしまう。


 あっという間に二人をメイスの餌食にしてしまい、直後の連携攻撃も一息で粉砕した。


 無骨な鈍器が地面にめり込み、土を巻き上げる。


 大振りだ。今まで見てきた中でも一番隙の大きな攻撃だろう。


 俺みたいな戦闘の素人でもそう思ったのだから、歴戦の戦士ともなれば絶対に見逃さないはずだ。


 六人の戦士たちがアルミナの周りを囲むように移動していたのは分かっていた。


 しかし、それぞれが一斉に鎖を放つのは予想していなかった。


 思いもよらぬ行動ではあったが、俺は「たかが鎖でアルミナが捉えられるような事はないだろう」くらいの余裕さで眺めていた。


 油断だった。


 6つの鎖が吸いつくようにしてアルミナの身体を捕え縛り上げる。それによって苦しむような素振りは見せないが、振り解くこともできず、動くことができないでいる。


 嘘だろ?あんな鎖簡単に引きちぎれそうじゃないか!?なにか特殊な能力でアルミナの力を封じているのか?

 アルミナの剛力に頼った結果がこれか……!彼女の不興を買ってでも、せめて相手の装備を調べておくべきだった。


 奴らの中で最も凝った意匠の装備を身につけた魔族が鎖をしっかり握りながらアルミナに近づく。右手の剣を肩に担ぎ、何かを話しかけた。そして剣を振り上げる。


 まずい!!


 俺は咄嗟にステータス画面を展開し時間の進行を止めた。


 何か。何か手はないか?


 今まさに振り下ろされようとしている剣を、まずはどうにかしなくては。


 なら、奪うしかない。


 装備中の武器を奪うのは難しい。ゲームのアクションとして考えても高度なスキルを必要とする部分。

 この四週間、貯まったスキルポイントはまだ使っていない。だが、それを使用したとしても武器奪取のスキルまでは届かない。

 あと残っているのはGNPだけだ。こっちはまだ何にも使っていない。現時点で53ポイントある。

 GNPを消費して得られる効果の一覧は一通り目を通していたが、ほとんど頭には入っていなかったので虱潰しに確認するが、50程度のポイントでは有効な手段となりそうなものは見当たらなかった。


 どうする!どうすればいい!?


 わずかな時間でいい。格上の相手からでも武器を掏る能力があれば……。


 ゲームで言ったら一日に一度の種族固有スキルとかで能力を向上させたりとかあるだろうに!……待て、そういえば俺にそういう物が設定されてるかどうか全く確認してなかったな。自分が所持している能力の一覧から使用可能なスキルを見れないか?

 

 ……あるにはある。一覧自体は。今までステータス画面から選択して発動するスキルなんて使ってなかったから分からなかった。しかし、俺はそういうスキルを何一つ持ってない。


 詰んだか……。


 そう思った瞬間、通知音のようなものが鳴った。


 ログには〈GNPのリストに項目が追加されました〉とある。該当する項目へと直接画面を移動すると【バーストスキル『クロトの指先』解放】という文章が追加されていた。


『クロトの指先』効果:60秒間、あらゆる窃盗に関わる難易度を0にし、盗みの成功率を100%にする。窃盗の対象は物質に限る。発動後、24時間は再使用不可。


 スキル獲得に必要な消費GNPは、30……これしかないだろ!


 迷わず能力を手に入れた。先ほどの所持能力一覧にバーストスキルの項目が追加され『クロトの指先』を使用できるようになっている。


 能力を発動しようとしたところで、ある言葉が脳裏を過った。


『盗むときは殺さない。殺した者からは盗らない』

  

 ……どうすればいい!?


 刺客たちから武器を奪えば、アルミナは助かる。


 そして、アルミナは刺客たちを討ち取るだろう。


 例え俺が直接手を下していなくても、これは、『盗むときは殺さない』の誓いを破ることになるのではないか……?白ムジナの掟を破ることになるのではないか……?


 視界に広がる無機質な文字列の向こうに、鎖に捕らわれたアルミナの姿がある。振り上げられた剣を真っすぐ見つめて、堂々と佇んでいる。


 決めた。


 俺は、アルミナを選ぶ(とる)


『クロトの指先』、発動。



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