メインクエスト:奪うか奪われるか1
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最初の魔族の戦士を退けてから三日目の朝、ヤギリの小目標に変化がある。
『魔族の戦士十人からの襲撃に備えよ』
これにはヤギリも焦った。それほどの数になればアルミナでも苦戦するのではないかと思ったからだ。
「もしも、三日前に襲ってきたようなのが十人一度に襲ってきたら対処できるか?」
アルミナにそう質問した。他にも戦う際の場所、相手の装備の予想、こちらが用意すべき物、様々な事を訊ねたが……。
「小細工などする必要はない」
と、泰然自若に腕を組んでいる。
ヤギリは「せめて有利に戦えそうな場所で迎え撃つ形にしたい」と食い下がり、アルミナは了承する。その際アルミナは「なぜ魔族が十人来るとわかる?」と聞くが、ヤギリは誤魔化す。
「お前はわかりやすいから誤魔化しても無駄だ。話せない理由があるなら、はっきり話せないと言え」
「……そのうち話す。今は聞かないでくれ」
「わかった」
二人は海岸近くの背の高い草地で待ち受けることにした。襲撃者たちは悉く居場所を特定してくる為、日の高いうちから人目につかぬ場所にいれば問題ないだろうと考えたからだ。
襲撃者たちは予想よりも遥かに早い時間にやって来た。
ヤギリの隠密状態は草むらのおかげでしっかり機能している。見晴らしの良い場所だったら敵に見破られていたかもしれない。
襲撃者たちは慎重で、アルミナが動くのを待っている。
アルミナは相手の思惑など意に介さず即座に動いた。
前方で構えていた二人の戦士は防御に徹したが、一撃を受けバランスを崩す。かばう様に、左右の後ろに控えていた二人が斧による攻撃を仕掛けてくるが、アルミナは右側の戦士を粉砕する。
続けざま左側の戦士の攻撃をいなしつつ、バックステップからの突進とメイスの一撃で二人目を吹き飛ばす。直後、体勢を崩していた二人が上下に分かれてのコンビネーションで剣による突きを繰り出して来たが、アルミナはメイスを思い切り振り下ろし纏めて潰した。
その地面に叩きつける大振りを狙われていた。
おそらく、今のアルミナにとって最も大きな隙だったろう。
機会を窺っていた六人の戦士は一斉に鎖を放った。
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過信というのは、こういうことを言うのだろう。
四人は葬った。
だが前回よりも強力な魔術を施された装備で固めた魔族の戦士達を複数相手どるのは予想以上に面倒だった。四人はほぼ捨て身で、残りの六人はわずかな隙をついて私の動きを封じてきた。呪詛の込められた鎖が身体に食い込んで不愉快だ。
今の自分には本来の力がないとは知っていたが、まだもう少しやれるとは思っていた。
ヤギリにいい所を見せようとしたのもまずかった。
まだ手は残っているが、できればそれは使いたくない。
一人の戦士が近づいてきて剣を振り上げる。
「貴殿……いや、お前が本当にあのアルミナースなら、我らの一撃で死ぬことは無いと思うが」
いや、この身体では耐えられないだろう。致命傷ですら瞬時に癒すことはできるが、おそらく二度が限界。
さて、どうしたものか……。
ヤギリ……ヤギリ?
あいつの気配が無い。どこへ行った?
まさか……。
「どうした。仲間でも待っているのか?だが、もう遅い!」
言い切ると同時に剣が振り下ろされる。
ワタシの身体を切り裂くはずの剣は、どこかへと消失していた。




