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ゲーム脳盗賊、闇を狩る。  作者: 土の味舐め五郎
第二章 ~アシバ皇国:白ムジナ盗賊団~
43/93

メインクエスト:小目標『傭兵ギルドに潜入せよ』


   ◇


 傭兵ギルドの敷地はそれなりに広かった。


 半分は傭兵訓練用の施設だそうだ


 ギルドの玄関口でもあり集会所でもある広間にはあまり人が居なかったが、そこを過ぎて施設の奥へ進むと、傭兵を志す若者達がたくさんいた。


 もちろん、受付などはしていない。


 隠密状態で忍び込み、屋外闘技場の観客席に何食わぬ顔で座った。アルミナは施設の壁を登って侵入した。人には見られないよう注意したらしく、今のところ誰にもバレてはいない。観客席の中でも一番外側だから大丈夫なはずだ。


「意外に観客が多くて助かった。みんな模擬戦に夢中でこっちは見てない」

 

「さっきの子供がこれから戦うのか?」


「途中すれ違った奴らの話じゃ、今日がちょうど訓練生同士の模擬戦らしい。たぶんキリバも出てくるだろう」


「キリバというのかあの子供は。それで、模擬戦を見てどうするんだ?」


「模擬戦を見に来たわけじゃない。ムヅラの爺様からキリバの様子を見てくれって言われてるんだ。訓練所で他の奴らとどう接してるのか知りたいって」


「なら、今控えているキリバを監視していた方がいいのではないか」


「……確かにそうだな」


 つい観戦気分で腰を下ろしてしまっていた。


「アルミナはここで待っていてくれ」


「ああ」


   ◇


 こっそりと闘技場周りの施設を捜索していると、訓練場にいるキリバを発見した。試合前に仮想敵相手に戦っているようだ。


 他の訓練生はもう控室で待っているはずだが、模擬戦前に緊張でもしているのか?


 数分様子を見守っていると、集会所の方へ続く通路から男がやってきた。


「キリバ!」


「……教官」


「もうすぐお前の番だぞ。試合前に体力を使い果たすつもりか?」


「いえ……、これくらいは平気です!」


「ならいいが、遅れたら失格になるからな。気をつけろよ」


「はい!」


 目つきの鋭い迫力のある顔の教官は、その雰囲気とは違って穏やかな口調でキリバに注意すると闘技場の方へと歩いて行った。


 キリバの眼差しはとてもわかりやすく「尊敬しています」という感じだった。


 なるほど……。


 教官が見えなくなると、キリバは忠告通り練習をやめ、控室の方へと向かって行った。


 控室は、酷いものだった。


 全員がキリバの敵と言ってもいい。


 口をきくものなど皆無。他の訓練生達は敵意の視線を向けてくるか、存在を無視するかのどちらかだ。ただ、無視をする者達の中には仕方なくそうしているというだけの者も幾人かいるようではあった。


 訓練生のボスみたいなやつに反発した結果、仲間外れにされた……ってところか。

 

 雰囲気こそ最悪だったが、その後キリバの出番までになにか争い事が起こるようなことは無かった。

 流石に傭兵の訓練施設内での乱闘騒ぎは御法度なのだろう。だからこそ、さっきのように目立たない場所で喧嘩などしていたのだ。


 ムヅラに報告すべき情報ではこれが一番重要な所か、後はさっきの教官の事くらいか……。


   ◇


「どうだったヤギリ」


「キリバは、同期の訓練生から仲間外れにされているみたいだ。理由はわからないが、たぶん訓練生のボスに嫌われたとかじゃないか」


「どうするつもりだ?」


「俺が頼まれたのは様子を探って報告することだけだ。それに、これから傭兵になろうって男に過保護な真似をしても為にはならないだろう。あいつに恨まれたくもないしな。手を貸すことがあるとしたら、命が危ない時だ」


「ワタシにはお前が十分過保護に思える」


「……そうかな?」


 キリバを見ると歳の離れた弟を思い出すからだろうか。なんとなく気にかけてしまう。


「ま、白ムジナの仲間だからな」


 答えに困って誤魔化した。


 アルミナが納得したかはわからない。



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