メインクエスト:小目標『キリバに助太刀せよ』2
◇
「ワタシは加藤美奈ではない。『アルミナ』だ」
「加藤じゃないって……?それは一体いつから!?」
「最初からだ」
アルミナなる者が言うには、カマルナムでの召喚の儀式に特殊な方法で介入を試みた結果、本来召喚されるはずだった加藤美奈の器に魂が入り込む形になったのだという。
その際、本来の加藤美奈の魂は弾かれ現世に戻ったが、それ以外の部分とは融合してしてしまい、当初はほぼ『加藤美奈』としての意識を持って行動。
アルミナとしての意識が芽生え始めたのは地下の独房で衛兵に襲われかけた時で、城の外に出た時は概ね元の自我を取り戻していたのだそうだ。
「じゃあ、意識を失った俺を助けたのは……」
「ワタシだ」
「俺を襲った奴らはどうなった?」
「死んだ。パストールへ向かっていた追っ手も何人か排除しておいたぞ」
「そう、か。助けてくれてありがとう……と言った方がいいのか?」
「最初の借りを返しただけだ。あの時はまだ力がほとんどなかったから、抗う事もできなかった。お前が助けてくれなければ、つまらない連中の慰み者になっていただろうからな。感謝している」
「それはわかったけど……。お前の目的は何だ?なんのために召喚に介入を?」
「先に言っておこう。ワタシは魔族だ。魔帝国のな」
なんとなく、そんな気はしていた。
「魔帝国で力を持っている御三家の中で、ワタシの家、特にワタシにだけ、何も知らされていなかったのだ。魔帝国がカマルナムを利用して企んでいることをな。秘密裏に何かを行っているとは思っていたが、まさか異世界から生贄を召喚して帝国にフォルマをもたらそうとしていたとは……」
「フォルマ?」
「簡単に言えば魔力の事だ。この世界の物ではない魔力の事を『フォルマ』という。……それで、ワタシとしては魔帝国が今やってることは看過できない。だから全力で叩き潰すつもりだ。ヤギリも一矢報いるつもりでいるのだろう?なら、ワタシを手伝え」
「ああ。それは構わないが……。俺にはまだ戦うほどの能力は無い。しばらくは白ムジナ盗賊団で生活しながら力をつけるつもりだ。それでも大丈夫か?」
「ワタシも万全ではない。この身体は脆すぎるし、力も全く足りない。……どうにかして以前の力を取り戻したい。だから、まずはその方法を知るために手を貸してくれ。かわりにワタシは、貧弱なお前が死なないように守ってやろう」
貧弱という言葉に少し傷つく。魔族からしたらそう見えるのは仕方がないか。
「あ、ああ。わかった。これからよろしく頼むアルミナ」
手を差し出す。
アルミナは一瞬わからなそうな顔をしたが、何かを思い出したように握手をする。
「よろしくなヤギリ」
「そういえば、あの三人の手下はどうしたんだ?まさか、死んだり……」
「パストールに置いて来た」
「そうか……」
◇
一旦ムヅラの元に戻り、アルミナの事を説明する。同じ場所には居られないかとも思ったがそんなことは無く「儂らが盗賊団だってことを吹聴しなけりゃ構わん。それに、そっちのお嬢さんもあんまり目立たねぇ方がいい身分だろう」と許可された。爺様はなんでもお見通しなのだろうか。懐が深い人で本当に良かった。
アルミナと共に活動する事を承認してもらった後、言われていた通りキリバの様子を探りに行った。
サローナが忙しなく朝食を用意している所へ顔を出す。なにか言われると思ったのでアルミナは外に待たせていた。
「おはようヤギリ。キリバならもう傭兵ギルドに行ったよ。何か食ってく?」
「いや、朝はもう食べた。すぐキリバの所に行くよ」
「じゃあこれだけ持って行きな」
布袋を渡された。中には小さ目の青リンゴのような果物がいくつか入っている。
「ありがとう。貰っていくよ」
「夜にはまた家に来な」
「ああ」
◇
傭兵ギルドへ向かう途中、アルミナが質問をしてきた。
「ワタシが加藤美奈ではないと言った時、あまり驚いているように見えなかったが、なぜだ?」
「なぜって言われても……。そもそも加藤の事もよく知っているわけじゃなかったからな。城を出た後にお前と再会した時も、無事で良かったって安心してて他の事を気にしてる余裕もなかったし、正体を明かされても『あーそうだったのかー』としか思わなかったな」
「恐ろしいとは思わなかったか?ワタシは魔族だぞ」
「ハハハッ。何度も助けてもらってるのにか?それに、その白髪も褐色の肌も山吹色の目も、見た目がかなり俺の好みだし、今のところ怖がる要素は無いなぁ」
「…………」
「どうした?納得いかなかったか……?」
「ああ、納得いかん」
「なんでかなぁ……」
そんなやり取りをしながら、目標地点のマーカーまで来た。少し狭い路地を通った向こう側に空地のような場所に行けばいいらしい。
「おいヤギリどこへ行く。傭兵ギルドはそっちじゃないぞ?」
「えっ?」
ちょうどその時、空地の方から声が聞こえてきた。
あまり穏やかな雰囲気ではない。むしろ、争いあうような鈍い音や怒声が聞こえる。
「まさか……」
そのまさかだった。
空き地ではキリバが数人の男たちと喧嘩をしていたのだ。




