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ゲーム脳盗賊、闇を狩る。  作者: 土の味舐め五郎
第二章 ~アシバ皇国:白ムジナ盗賊団~
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メインクエスト:小目標『キリバに助太刀せよ』1


   ◇


『巣穴』に白ムジナの全団員が集まり、俺を一員として承認する際に大事な掟を教えられた。


 それは、盗みの際は『殺さず、犯さず、気づかれず』というものだ。


 この掟を必ず守ると誓いを立て、俺は白ムジナ盗賊団に晴れて迎え入れられた。

 その後は特に小難しいことは無かった。一人一人軽い自己紹介をしたくらいだが、既に全員と顔を合わせていたため特に真新しい情報は無かった。ロウワンの左目が視えず、右目もあまり視力が良くないという事を知ったくらいか。

 そして、もう一つわかったことがある。


 白ムジナ盗賊団は現在、休業期らしい。


 ムヅラが言った「ちょうどいい時期」とはこの事で、盗人家業の者達が盗みをしてない時はどんな暮らしをしてるのかを見て勉強しろという意味らしい。

 あくまでも盗賊団としては盗みをしないという事だから、ニビやトーイのように個人で泥棒やスリをすることもある。ちなみに他の仲間は休業期に盗みをやることはほとんど無いらしい。


 新団員を歓迎する為のちょっとしたご馳走にも満足した。地下の湿気も気にならなかった。酔いが少し回った所でキリバがこの場に来ていないことに気づくも、ムヅラが「あいつは盗人じゃねえからな」という事らしい。「そうなのか」と頷き、再びザウスの錠破り自慢話に付き合う。


 しだいに夜は更け、サローナやアジーが片付けを始める。お開きの時間らしい。ムヅラが解散を宣言し、団員はそれぞれの拠点へと戻って行った。ニビだけはまだまだ元気なようで「えーーもう終わりーー?」とか言ってる。そういえばこいつは酒を呑んでも大丈夫なのか?


「ヤギリ」


「なんだい爺様」


「盗人の生活を覚えろとは言ったが、とりあえず明日はキリバの様子を見てくれねぇか。傭兵の訓練所で周りの連中とどう接してるのか知りてえ」


「わかった」


 どうして自分で見に行かないのかとは聞かなかった。ムヅラ程の人が自分で行けないのにはそれなりの理由があるのだろうから。

 ムヅラも、俺が余計な質問をしないことに満足したようだ。

 

 話が終わったところで後ろからニビが俺の手を引っ掴んできた。


「よーしヤギリ!一緒に寝るぞ!」


「それはダメだ!」 


   ◇


 朝だ。既に外は明るいみたいだが、まだ早朝と言える時間だろう。

 昨日、『巣穴』での酒宴の最中にどこかへ行っていたサヨがいつの間にか戻ってきている。エサでも探しに行っていたのか。


「あ、ヤギリおはよう」


「……」


 ニビもいつの間にか寝床に入ってきている。これはもう容認するしかないのだろうか。

 

 囲炉裏ではムヅラが煙管を吹かしている。この爺様が寝ているところはまだ見たことが無い。まさかずっと起きているわけではないよな?


「おはよう爺様。すこし寝すぎてしまったかな」


「ふっ……」


 爺様が小さく笑う。


「お前さんは早起きな方さ。今頃他のとこで起きてんのはヘンベルとサローナとキリバくれえなもんだろう」


「俺が早起きな方ね……」


 ガメスの就寝システムが無ければその評価は得られなかっただろう。

 

 囲炉裏を挟んでムヅラの正面に座る。少し遅れてニビがやってきて横に座り、俺にパンと燻製したハムのようなものをくれる。


「ありがとう」


「スープも飲んでいいからね!」


 そう言って囲炉裏に置かれた鍋からの器に盛って俺に寄こす。意外と面倒見がいい所があるな。


「ニビは、今日は何をするんだ?」


「あたしはサローナと買い物!」


 ニビはあっという間に朝飯を食べ終え「行ってきます」と言って出て行った。


「店はこんな時間から開いてるのか?」


「いいや」


 ムヅラは笑っているが、呆れているようでもある。ニビはいつもああなのだろう。


 俺が飯を食べ終えたタイミングで、開けっ放しになった玄関の扉の前に誰かが姿を現わした。ムヅラも警戒している。

 その人物はフードを下ろし顔を露わにするが、俺は一瞬それが誰かわからなかった。


「……加藤か!?」


「ああ。探したぞヤギリ」


 見た目も雰囲気も変わっているが、どうやら加藤美奈で間違いないらしい。一体どうして白髪褐色になっているのか?もしかして、変装か?


「ヤギリ。おめぇの連れか」


「ああ、一応そうだ。……ちょっと話をしてくる。ついでにそのままキリバの所に行くよ」


 拠点を出ると、加藤らしき人物を連れて都市の外へと向かった。なるべく周りの人間には聞かれな方がいい思ったからだ。自然と、東の墓場の方へ行くことに。


 

 墓場で俺は、加藤……いや『アルミナ』から衝撃の事実を聞かされることになるとは、思ってもいなかった。



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