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ゲーム脳盗賊、闇を狩る。  作者: 土の味舐め五郎
第二章 ~アシバ皇国:白ムジナ盗賊団~
37/93

メインクエスト:小目標『白ムジナ盗賊団に入団せよ』3

 

   ◇


 最初に訪れたのは、ムヅラが住んでいる家とほとんど変わらない建物。

 中にいたのは二人の若い男性で、どちらも俺と歳が近いように感じた。

 

 ザウスはとても調子のいい奴で「お!久しぶりに新しい仲間が増えるのかい?いいねー!これから仲良くしようぜ~~!」という感じで肩を叩いてきた。

 

 ヘンベルは対照的に、凄く静かで「……。よろしく」と一言だけだった。


 ニビが言うにはこの家にはもう一人いるらしいのだが、今はスリに出かけていて夜まで帰ってこないという。


 仕方がないので次の拠点に向かう。


 二件目の家は少し大きかった。

 扉を開けて中に入ると女性が一人、昼飯の支度をしている。


「サローナ!ちょっと紹介したいやっ」


 サローナと呼ばれた女性はこちらに気づくと瞬時に突進してきてニビに抱きついた。


「もう~ニビ~!またアシバに出稼ぎに行ってたんでしょ~!三日もあんたがいなくって困ってたんだから~~」


「んもがもが……っぷはぁ!三日ぐらい我慢しなよ!それより他の三人は?」


「今日はみんな用事があってね、まだ帰ってきてないんだ。お昼は?まだならここで食べなよ。アジーとクラップはもうすぐ戻って来るはずだから。キー坊は夕方ごろになると思う。で……そっちの兄さんは?もしかして、ニビが勧誘した新しい仲間ってところ?へー……なかなかいい男じゃない。名前はなんていうの?」


 露骨に色目を使われているのがわかり、平静を装いながらも少し後ずさる。


「ヤギリだよ!こっちはサローナ!男好きだから気をつけなよヤギリ!」


「わかった。気を付ける」


「もぉ~別に気を付けなくてもいいのに~」


「それよりもお腹空いたよサローナ」


「はいはいちょっと待ってて。ヤギリも食べるでしょ?」


「ああ」


 どうやら色目を使うのは、初対面の男に対していつもやってる事らしい。昼飯をご馳走になって以降、こちらにその気が無いとわかると普通に接してくれるようになった。


 サローナの作った料理をご馳走になりながらニビが昨日の夜の出来事を話していると、女と男が家に入って来た。


「ただいま~」「ただいま」  


 この二人がさっき言っていたアジーとクラップだろう。 


「ふたりともおかえりー!」

「あれ、ニビじゃん。ていうか、そっちの男の人は誰?」

「ちょうどいいじゃない。今ニビがその話をしてくれてたのよ」

「そうそう!昨日の夜パストールでさぁ!」


 ニビが事情を説明してくれるのを俺は静かに聞いていた。時々内容を脚色しそうになるからその都度訂正したりもしたが……。


「ふーんなるほどね。で、まだ入団の課題をこなしてもいない内にアンタは皆にヤギリの事を触れて回ってるわけだ」とアジーが呆れる。


「まあ、いつものことだな」

 

 クラップが溜息をつく。


「ヤギリは入団の条件とか聞いたの?」


「いや、何も。ただ、入れてやるとはまだ言われてないから、これから何か試験があるのかとは思っていた」


「そこまで考えてるならよかった」


「まだムロノスに来て半日も経ってなくて分からない事だらけなのにこいつが、皆に紹介する!!って言いだしていきなり連れまわされてな」


「「「そういう子なんだよ」」」


「まだトーイとキリバに紹介出来てないけどね!」


「トーイは今頃酒でも飲んでるでしょ。目立たないように生活はしてるけれど、相変わらず手癖の悪さは抑えられないみたいだからね」


「そのトーイっていう団員は、スリが得意なのか?」


「あれは得意とかいうより病気の一種だよ。盗まずにはいられないっていう。根っからの盗人だね」


 アジーがやれやれという感じで話す。だが、少し頼もしそうにも見える。


「俺は、スリとかは苦手な方だ」


「じゃあ、何が得意?」


 サローナがニコニコしながら聞く。


「……隠れるのと、逃げるのと、危険を察知するのが得意かな?」


「盗人に一番必要な能力だな」


 クラップが感心したように言う。


「ヘンベルと気が合いそうね」

 

 ヘンベル……。さっきの家であったあの静かな男のことか。


「それで、入団するためにはやっぱり……やって見せるわけだよな。スリやら何やらを」


「まあざっくり言えばそうだね。でも、全員が同じことを要求されるわけじゃないよ。なんせ、今ここにいる内の三人は盗む技術に関しては何にも持ってないようなもんだからね」


「そう、なのか……?」


 この中の三人と言ったら、サローナとアジーとクラップって事だろうか。


「私らは白ムジナの雑用係みたいなもんなのよ」


「とか言って、サローナは密偵とか侵入の手引きとかしたりするじゃーん。本当の雑用係は私とクラップみたいなのを言うんだよ」


「雑用でもなんでも、役割があるっていうのはいいことだ。誰かから必要とされてるんだからな」


「ああ。俺もそう思う」


 クラップの言葉に俺は同意した。


「そんでさ!ヤギリは自信ある?」


「さあな。俺は新米の盗賊だからなんとも言えない」


「ふーん?」


「でもまあ、白ムジナに入団できないと俺は困るからな。団員の皆を納得させられるだけの事はするつもりだ」


 我ながら、なかなか強気な事を言ってしまった気がする。


「楽しみにしてるよヤギリ!」

 

 ニビがこの場の全員の気持ちを代弁するかのように笑った。



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