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ゲーム脳盗賊、闇を狩る。  作者: 土の味舐め五郎
第二章 ~アシバ皇国:白ムジナ盗賊団~
35/93

メインクエスト:小目標『白ムジナ盗賊団に入団せよ』1

 

   ◇

 

 アシバ国境の都市『ムロノス』の東のはずれにある墓地を抜け、綺麗な街並みの中へ。

 まだ日の出前で暗い道を、自称:白ムジナ盗賊団の頭領『ニビ』の後ろにくっついて歩く。


 パストールと比べて建物があまり大きくない。 その代わり平坦で通路が広く、区画の整備がきっちりされている。木造の建物も多い。街中には水路が張り巡らされていて。そのいくつかは西の海岸へと向かっているようだ。


 ニビに案内された家は、他の家と特別違ったところは無い。

 扉を開けると部屋の少し右奥にある囲炉裏のようなものがまず目につく。小さく火が焚かれており、その脇には初老の男性が座っているのがわかった。

 煙管だろうか、右手に持った特徴的な棒から微かに煙が立ち上っている。


「じっちゃんただいまー!」


 朝っぱらから元気な声で「じっちゃん」と呼ばれた初老の男性が煙管を咥え、そしてたっぷりと煙を吐いた。

 

 一瞬、貫禄のある双眸がこちらを向く。穏やかな視線だが、射抜かれたような感覚を覚える。そして老人は何かを見てわずかに目を大きくしたように見えた


 もしかして、首に巻いてるサヨが気になったのか?


「ニビ。随分と時間が掛かったみたいだが、後ろにいる若者となにか関係があるのかい?」


「そうそう!こいつはヤギリっていうんだ!パストールで兵士に追われてたから助けてやったんだ!」


「ちょっと気になる言い方だが、概ね間違いじゃない」


「え?なんかおかしかった?」


「ヤギリさん、その子は少々大雑把でな。良ければあんたの口から説明してくれんかの?」


「わかりました」


 貫禄のある老人にこれまでの経緯を話す。あくまでも盗賊として追われているという設定で。


 

「なるほど。おおよその事情はわかった。……ところでヤギリさん。お前さんは、儂らがどういうもんか、わかってるかい?」


 やけに凄みのある聞き方をしてくるな。


「ニビが『白ムジナ盗賊団』と言っていました。それを信じる信じないの問題以前に、俺はこの辺の盗賊の事は全くわからないんです。遠い東の島国から旅をしてきた者なので……、それに、俺は盗賊としても赤ん坊みたいなもんです」


「ほうほう……。確かに、そういう事なら得心がいく。それで、お前さんはこれからどうするつもりだ?」


 墓場で更新された大目標が脳裏にチラつく。


『白ムジナ盗賊団で盗みの極意を学べ』


 これは間違いなく盗賊団の一員になれという事だろう。どうしたいのかと聞かれれば、答えは簡単だ。


「俺を、白ムジナ盗賊団に入れてほしい。盗みの技や心得を、学ばせてください!」


 深々と頭を下げる。


「ふむ……」


「なに考え込んでるんだよじっちゃ~ん!あたしが連れて来たんだから文句ないでしょ?」


 それは頭領だからっていうことか?


「お前と儂が良くっても、他の連中にも見てもらってからじゃなきゃいけねぇよ。今までもそうしてきただろう?」


「そんじゃあ皆に会わせて来るね!」


「バカタレ……。こんな時間に他の家を訊ねるんじゃねえ。それに、ヤギリさんの疲労の事も考えなさい」


「ああ~それもそっか~。じゃあ昼になったらいいよね?よし!それじゃ寝る所に案内するからこっち来てヤギリ!」


「ああ、でもその前に……、あなたの名前をまだ聞いていなかった」


「ムヅラだ」


「ムヅラさん。それではまた後ほど」


「ほらほら!はやくこっち!」


「わかったって!お前ずっと元気だな……」


「へへ~凄いでしょ~!」


 得意げに胸を張りながら歩くニビに案内され、俺は寝室として宛がわれた小さな部屋に入った。

 脇の方に畳のような長方形の厚い敷物があって、その上に薄い布団のようなものがある。

 

「あそこで寝ればいいんだよな」


「そうだよ!」


「わかった。ありがとう」


 寝床を確保して安心したからか、急に眠気が襲ってきた。しばらく気を張りっぱなしだったからな……。加藤と盗賊の三人も心配だが、今はまず体力と気力を回復させなくちゃな……。おっと、サヨを潰すと悪いから首から剥がしておかないと。


 そうして俺は安心して眠りについた。

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