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ゲーム脳盗賊、闇を狩る。  作者: 土の味舐め五郎
幕間
33/93

サイドストーリー:竜魔族『アルミナース』


   ▽


 のんびりと朝食を喰らうアルミナ。


 十分に火が通っているようには見えない魔獣の肉を、それほど大きくもない口に頬張っている。


「ミナ姐さん。そんなゆっくりしてていいんですか?ヤギリの旦那はパストールに行っちゃったんでしょ?」


 三人いる盗賊の内の背の低い太っちょが不安そうにその辺を行ったり来たりしている。他の二人はまだ荷物の準備の最中だ。


「問題ない。ワタシは直ぐに追いつけるからな。お前たちは先に行ってヤギリを探しておけ。今すぐ行け」

 

「わ、わっかりましたー!」


 すっかりアルミナの手下になった三人は脱兎のごとく山を下りて行った。


〈奴らがヤギリを見つけられるとは思わないけどな〉


「ヤギリがあいつらを見つければそれでいい」


〈それもそうだな。で、わかっていると思うがアルミナ。竜気の開放こそまだできないが、力は随分と回復したみたいだ。これならすぐにパストールへ着くだろう〉


「確かにパストールには速く行ける。だが、ヤギリを追う連中が街道を通るかもしれない。ワタシは都市に入る前にそいつらを排除する」


〈パストールで待ち伏せれば良くないか?〉


「そんなことをしたら目立ってしまう。なるべく騒ぎを起こさない方がヤギリの為になるだろう」


〈ほう。お前にしては結構よく考えてるじゃないか〉


「問題あるか」


〈いーやないさ〉


 腹ごしらえが済んだアルミナは衣服を整え、目立たないようフード付きのマントを身につける。もっとも、今はすっかり髪の色素が抜けており、肌も日焼けしたような褐色の為、『加藤美奈』だと気づく者は殆どいないだろう。全体的な印象や雰囲気もまるで別人だ。

 支度が済むとあっという間に山を駆け下りて平地へ出る。


 街道まで()()()()()いいが、それも目立つだろう。


 仕方なく徒歩で街道の方へ向かい、やや時間をかけて到達。背後から来る者に注意しつつパストールを目指す。


 特にに急ぐ事も無く広い道を歩いてゆく。パストール方面からの通行人や馬車は気にも留めない。

 しばらく退屈な思いをしたが、1時間ほどして背後から忙しく路面を叩く蹄鉄の音が聞こえてきた。


 アルミナは三人の家来に用意させたメイスを袋から出し、いつでも使えるようにしておく。

 

(今度のは前より丈夫だといいのだが)


「そこのフードを被っている者!止まれ!顔を見せろ」


 馬上の衛兵がやや強い口調で命令する。

 

 アルミナは特に反抗する様子もなく顔を見せる。


 衛兵は目的の人物でないことをすぐに悟り「呼び止めてすまなかった」と詫びた。そして再び馬を走らせようとしたところで、アルミナは問いかけた。


「誰を追っているんだ」


「ヤギリという国の客人だ。はやく見つけ出して保護せねばならんのだ」


〈この衛兵共は本当の事情を知らされてないな。それに放っておいてもヤギリは捕まえられんだろう)


「……そうだな。()()達は、だが」


 アルミナは不敵な表情を見せると後ろの方にいる衛兵を睨む。


「そこのお前。馬を降りろ」


 若い娘とは思えない強く威圧的な声に衛兵達はたじろいだ。 


 衛兵に扮していた烏泥衆の密偵は怪訝そうな顔をしつつも何かを感じ取り馬を降りる。


「私に何のようか」


「お前はここから先へは通さない」


 マントの陰から、自分の見た目とは明らかに不釣り合いな厳つく大きなメイスを露わにするアルミナ。軽々と手に持ち、素振りのような動作をする。


「貴様只者ではないな。……衛兵殿、私には構わず先を急がれよ」


「わ、わかった」


 危険な猛獣を警戒するような目つきの密偵。


 対照的に涼しい顔で鋭い瞳を向けつつ、ゆったりと構えるアルミナ。


「……なぜ私だけ兵ではないと?それに、邪魔をする理由は何だ」


「ヤギリを追っているからだ」


「その名前を知っているか。その上で障害となると言うなら、貴様にも消えてもらうぞ……!」


 速い。


 兵士の装備をしている者がするような動きではない。

 

 剣を抜いた音も無かった。

 

 瞬時に詰まる間合い。

 

 上段から振り下ろされた刃がアルミナの肩口を狙う。


 金属同士の甲高い衝突音。


 密偵が放った斬撃は簡単に弾かれ、後方の地面に突き刺さる。

 

 しかし、武器を弾かれても密偵は冷静であった。


 無駄の少ない動作ですぐさま短剣を抜き首を狙う。


「見事」


 呟いたアルミナは短剣の刃を左手で掴む。

 尋常ではない握力で押さえられて微動だにしない短剣。出血はおろか皮膚が切れた様子もない。


 密偵はわずかに驚いたがすぐに顔を悔しげに歪ませると、短剣から手を離す。

 自らの運命を悟り諦めたようにその場に佇む。逃げても結果は同じだ。任務、失敗。

 最後にせめて知っておきたいことがある。


「貴様は、何だ……!」


「アルミナース・リンネ・ドルグアフ」


「なッ!?魔帝国の」


 密偵の頭部が吹き飛ぶ。


 首から上の消失した肉体が大地へ倒れこんだ。

 

「密偵という割に、清々しい奴だった。騎士の方が向いていたんじゃないか」


 物言わぬ死体となった戦士へ、自己流の手向けの言葉を送るアルミナ。


「迷わずに逝けよ」


 そして再びパストールへ向けて歩き出したのだった。


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