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ゲーム脳盗賊、闇を狩る。  作者: 土の味舐め五郎
第一章 ~カマルナム王国脱出~
21/93

メインクエスト:小目標『コサの町へ向かう』2


   △


 町に入ろうとしたところでボレックは衛兵に停められた。

 馬に跨った兵士達はこれといって険悪な様子では無い。それどころか「手間をかけさせてすまないな」などと言った。


「実はジグスレイ城に招かれていた客人が一昨日の夜に行方をくらましたらしく、今必死に探しているのだ」


 衛兵はそこそこ似ているヤギリの人相書きを手渡し、服装についても教えた。


「濃い緑を基調とした服で、胸当てと手甲とブーツはリザーラの革製だ。身ぐるみはがされて服装が違う可能性もある。もし見かけたらできる限り早く教えてくれ。礼は弾むと国王からもお言葉が……どうした?」


 似顔絵を薄目で見たり顔から遠ざけたりしているボレックに衛兵は訝し気な目を向ける。


「いやあ……たぶんこの人なら知ってますよ。服はボロボロで胸当てや手甲はしてなかったはずだが、顔はこんな感じだったな。途中まで荷台に乗せてたんですがね、町が近づいたら急に降ろしてくれって言うんで、降ろしましたよ」


「何!それはどの辺だ?」


 衛兵は喜びと驚きの入り混じった声を上げ、乗っている馬がすこし驚いたように身を震わせた。ボレックの馬二頭は地面に草が生えていないか探している。


「ええと、街道から左手に見えた山への分かれ道を過ぎたあたりだったかな?時間はだいぶ前になりますけどね」


「どこへ行ったかわかるか?」


「さすがにそこまでは……行先については聞いてませんし。そもそもほとんど喋らなくって、せっかくタダで乗せてやったのに礼も何も言わなかったんで気分が悪かったですよ」


「そうか……しかたないな。呼び止めてすまなかった。情報感謝する」


 衛兵は銀貨一枚を取り出してボレックに渡した。


「お客人は誘拐でもされたんですかい?」


「詳しくは我々も聞かされていないのだが、攫われた可能性が高いとは言われているな」


「ああそういえば!確か、山賊だかに攫われかけて必死に逃げてきたとか言っていたような……」


「やはりそうなのか!?はやく保護しなくては!」


 兵士たちは慌てて馬を走らせ街道の方へと消えていった。

 ボレックは兵士たちの気配が完全に無くなってから荷台へと話しかけた。


「だ、そうだぜカゲミチ」


「……町の中へ入りましょう」


 声は荷台にかぶせた布の下に隠れるヤギリのものだった。


   ▽


 一方その頃、コサの町から南東にある山では三人の男達がこき使われていた。


 三人は盗賊であった。共和国とモーガットの民衆を恐怖に陥れている『ゴズマシラ一家』の一員……であったのだが。この下っ端三人は、一家が女子供も容赦なく犯し殺し、目障りと思ったら衛兵にすら喧嘩を売るというあまりの過激さに嫌気が差し、カマルナムへ逃げて来たのだ。

 しかし、比較的気の小さいこの三人組は「カマルナムでは盗賊が厳しく取り締まられて壊滅した」という噂を聞いていたもので、当初はビビって仕方なく山に籠っていた。

 三人は盗人としては中の下と言ったところだが生存能力に関しては高かったらしく、麓に近い所を西へ移動しながら比較的おとなしい種類の魔獣を狩りつつ生活。

 そしてある時、転機が訪れる。

 魔獣を追っている最中に洞窟と麓へ続く獣道を見つけた三人。

 洞窟の入り口も獣道もどちらも長い間人が寄り付いていないためか草木が茂ってわかりづらくなっている。

 まず三人は洞窟の中へ入ってみた。中は広くもなく狭くもなく真っすぐ続いており、ちょうど入り口の光が届かなくなったところに夜の神クロトの小さな石像があった。その手前の低い所には台座に乗った器のような物体が置かれている。


 「こりゃあ俺達ついてるぞ!」


 盗賊の守り神でもあり幸運ももたらすとされているクロトの石像を見つけたことで三人は歓喜する。

 石像の周りを掃除して洞窟の入り口も綺麗にした。(もっとも『綺麗』なのは三人の主観でだが……)そして三人は外に拠点となる野営地を作ると、荒れた獣道を下って平地に出ると周囲の地形を探り始める。すぐにコサの町を見つけると、夜に一仕事やろうという話になった。

 

 新天地での三人の最初の盗みは驚くほど上手くいった。

 カマルナムに住む人々の盗賊への危機感が薄い事や、三人が徹底して争い事を避ける方針出会った事、町の外側の建物は戸締りがお粗末な所が多い事などが泥棒大成功の要因だ。

 だが三人は「クロトのおかげだ!」と幸運を神に感謝していた。


 コサの町での最初泥棒成功から少し時間が経ち、クロトの祠とその隣の野営地がそれなりに小綺麗になった頃。


「女を抱きてぇな……」


 三人の男たちは女に飢えていた。

 彼らの泥棒家業は上手くいっており衣食住も安定してきていたのだが、彼らの控えめな性格もあり大きな稼ぎは無く、金銭が貯まらないことから町の娼館を利用するという事ができなかった。畜生働きを嫌う男達であったため女を襲ったり攫ったりという事もできず、彼らは性欲を持て余していた。

 ある時、辛抱できなくなった一人が狩った魔獣を使()()()処理使用したところをまだ正気を保っていた二人に止められた事もある。


「すっ裸の女が山の中に迷い込んで来ねーかな……」


「そんなイカれた女がいるもんかよ」


 果たして彼らの願いをクロトが聞き入れたのだろうか。


 翌日になって「なんか狩りがしたくなったな」ということで東の方面へと歩いていた三人の目の前に、衣服をほぼ何も纏っていない若い女が現れたのだ。

 

「あっ……」


 獣姦未遂の山賊は、女のあられもない姿とむき出しになった豊満な乳房を見たことで思わず()()()しまった。

 他の二人は怪しい色気を放つ女に向かって走り出す。放心していた男も慌ててそれに続いた。女は襲わないと決めていたが、状況が状況だけに我慢できなかった。

 三人の山賊がツイていたのはここまでだった。

 女は武器を持った三人の男を軽く捻り上げ、たちまちに伸してしまった。

 山賊達の運命はここまでかと思われたが……。

 

 その翌日、元気な姿をした山賊三人が山を歩いている。ちょうど魔獣の大物を仕留めて野営地に戻っているところだ。


「これだけ大きけりゃ姐さんも満足してくれるだろう!」


 彼らはすっかり女の手下となり、腹を空かせた彼女の為に魔獣を狩って肉を提供しているのだ。ちなみに、昨夜の内に急いで女物の衣服を盗んできたりもした。

 

「ただいま戻りました姐さん!」

 

 三人が『姐さん』と呼ぶ女は、『加藤美奈』であった。

 


隠密レベル1上昇、隠蔽スキル+1 PLv1上昇


アチーブメント:初めての隠蔽工作

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