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前編:賀古正樹(2)

 『人気アーティストが集結! 秋の特別音楽祭5時間スペシャル』。


 オーディションの日と被ってしまって俺の夢を妨害したのは、そんなタイトルの生放送番組だった。

 出られるだけで名誉な番組で、予定も組まれているため出演を辞退できるわけもなく、俺は仕事用の笑顔で番組のオープニング映像に映っていた。

 最初に出演者全員がスタジオに集まって、それから順番に曲を披露していくのだ。

 司会を担当しているタレントが順番に出演者の名前を呼んで紹介していく。LUCKも呼ばれ、俺はシュンと一緒にカメラとスタジオ観覧者の両方に向かって両手を振った。

 それからスタッフの指示に従って一番最初に歌う歌手以外は裏に捌けていく。

 俺はそのまま出演者や関係者たちの人混みにまぎれてスタジオを出た。廊下を早歩きで進み、LUCKの控え室に飛び込む。

 白いシャツと黒いスラックスという衣装の上からジャケットを羽織り、バッグを手にする。

 小走りでドアに突進して控え室を出ようとしたところで、俺がドアノブを触る前にドアが開いた。


「っ……」


 俺とお揃いの衣装を着たシュンが立っていた。


「どこ行くの?」

「……ちょっと、コンビニ」


 横をすり抜けて部屋を出ようとすると、強い力で腕を掴まれた。顔を上げると、シュンはいつものように笑ってはいなかった。


「あの映画のオーディション、あきらめたんじゃなかったの?」


 思わず舌打ちしたくなる。こいつには俺の考えなんか全部ばれていたということか。


「俺たちの出番まで3時間ある。ここからオーディション会場まではそんなに遠くないし、行って戻って来ても間に合う」

「速水さんは知ってるの?」

「知らないよ! だから見つかったらやばいから離せ! あの人が戻ってくる前に行かなきゃなんないんだよ」

「でもここに正樹くんがいなかったら速水さんだってすぐに気づくよ」

「それでもいいよ、戻って来てから謝るから! 俺、どうしてもあの作品に挑戦したいんだよ! 行かなかったら絶対に後悔する。なあ、だから……」


 シュンと目を合わせて睨み付けながらそう言うと、彼の瞳の奥で何かを考えるように揺らめく。

 そしてほんの少しだけ腕をつかむ力が緩んだ。


「万が一遅れそうとか、何かあったら絶対に連絡して。なんとかするから」

「なんとかって何を……」

「いいから。わかった?」

「あ、ああ」


 シュンの腕が離れる。俺は戸惑いつつ、彼に背を向けて歩き出した。


「早く戻って来てね!」


 後ろから、不安そうなシュンの声が聞こえた。





「やっば……」


 数時間後。俺は駅で電光掲示板を見ながら立ち往生していた。

 まさかの人身事故で運転見合わせ。運転再開見込みなし。これでは番組のスタジオに戻れない。

 腕時計を見ると、LUCKの出演時間まで1時間を切っていた。ここで電車が動くのを待っていると間に合わないかもしれない。タクシーでも捕まえれば余裕だが、みんな考えることは同じで駅前にはタクシーを待つ電車利用客の列ができていた。

 まさかこんなことになるなんて。


 オーディション自体は結構上手くいったのに。結果が出るのはまだ先だけど、演技テストは失敗しなかったし、そこに立ち会っていた監督や面接官たちの反応も悪くはなかった、と、思う。

 とまあ、こんなときに一人反省会をしている場合ではない。バスだ。路線バスに乗ろう。そうすれば出番の30分前には到着できるはず。

 俺は急いで駅前のバス停に向かい、タイミングよくやって来たバスに乗り込んだ。これからのアクシデントを予想できるわけもなく。

 運が悪いことに、まさかの道路も交通事故の影響で渋滞していた。ここ数年で車も電車も自動運転車がかなり普及して自動ブレーキの性能も上がったため、事故件数は少なくなっていると最近テレビのニュースが言っていたのに、俺の周りで短時間のあいだに2件も。

 まったく動かないバスの中で時間を確認すると、本来ならスタジオに到着しているはずの時間、つまり出番30分前になっていた。

 どうしよう。もしも出番に間に合わなかったらどうなるんだろう。シュンが一人で歌うのか。そして俺はステージに立てなくて、代わりに悪い評判が立って……。

 ふと、シュンの言葉が真っ白になった頭の中で再生された。



 万が一遅れそうとか、何かあったら絶対に連絡して。なんとかするから。



 なんとかするってどういうことだろうか。俺が来られない言い訳でも考えてくれるのだろうか。

 わからないけれど、迷っている場合ではない。俺はオーディション中に鳴らないよう切っていた携帯電話の電源を入れ、シュンの連絡先をタップした。

 数回のコールののち、通話状態になる。


「シュン、」

「正樹くん? どうなった? あとどれくらいで戻ってくる?」


 焦ったような彼の声に、唇をかむ。


「悪い、道が渋滞していて……もう無理かも」

「え!? ちょっと待って、正樹くんのケータイと僕の脳で通信してGPS解析するから……」


 したって意味ないよ。……いや、まだ方法があるかもしれない。


「シュン、走ったら間に合うかな」

「今計算する。うーん、今の正樹くんの位置からだと成人男性の平均速度の1.32倍のスピードで走れば間に合う」


 1.32倍ってどれくらいだよ、わかんねえっつの。心の中でつぶやきつつ、俺はバスにICカードを通して歩道に降りた。


「わかった、走ってみる。もし間に合わなかったらほんとにごめん」

「了解。ちなみに速水さんはすごく怒ってるから」


 うわ。まあしょうがないか。あの人が怒ったところ、見たことないから想像がつかなくて怖い。本気で走ろう。

 歩行者が少ない歩道を全速力で駆け出す。途中、しんどくなったら少し歩いて、また走って。脇腹が痛くなってくるけれど、休むわけにもいかなかった。

 走って、歩いて、走って、また歩いて。

 体力はそこそこあるほうだと思う。そのおかげか気力の問題か、思っていたよりも早く俺の足は進み、出番10分前にはスタジオのビルが目の前に見えるところまで来た。あと一つ横断歩道を渡ればビルの中に入れる。


 ほっと安心しかけたそのとき、赤信号だった目の前の横断歩道に猫が飛び出すのが見えた。それを慌てたように、飼い主らしき小学生くらいの女の子が追いかける。

 それと同時に自動運転の無人トラックがこちらに走ってくるのが見えた。

 普通なら道路に障害物があれば、センサーが反応して緊急停止するはずのそれは、なぜかスピードを緩めることなく横断歩道に突っ込もうとしていた。

 猫を抱えた女の子が、トラックに気づいて目を見開くのがスローモーションになって俺に目に映る。

 センサーは? 緊急ブレーキは? 停止しねえのか?

 俺は無意識に走り出していた。道路に飛び出し、女の子の背中を押す。真横にトラックが迫っているのを、音と風で感じる。

 これで今日の交通事故は3件目、しかも俺が被害者になりそう。嘘だろ? ついてなさすぎる。そんなに、あのオーディションに行くのが良くないことだったのか? 速水さんに黙って行ったから罰が当たった?

 覚悟を決めて目をつむる。


 けれど、やってきたのは固い車に跳ね飛ばされる感触ではなく、誰かに抱き上げられたような浮遊感だった。

 それと同時に、ゴンと鈍い音が聞こえた。でも自分には何も衝撃がない。

 うっすらと目を開けると、シュンが俺を抱きかかえたまま歩道に転がっていた。トラックはスピードを緩めることなく行ってしまったみたいでもう姿は見えなかった。


「しゅ、シュン……」

「正樹くん、大丈夫?」


 シュンは何事もなかったかのように立ち上がり、俺に手を差し伸べた。その手を取りながら、彼をまじまじと見つめる。


「あの、さ、トラックに当たったよな? ケガは……」

「僕、アンドロイドだから。ある程度の衝撃には耐えられるように設計されてる」

「そ、そう……ありがとう」


 俺を守ってくれた彼はにこりといつものように微笑むと、俺の足元にしゃがみこんでいた女の子にも手を差し伸べた。


「大丈夫? ケガはない?」


 女の子がうなずくのを確認すると、シュンの指がビルを差す。


「とりあえずこの子は受付に預けて、僕たちは急ごう。本番まであと5分だよ」





 スタジオに戻ると、まず口をへの字に曲げた速水さんが待っていて、俺が何か言う前に思いっきり頬をはたかれた。それを見ていた番組のスタッフさんが、駆け寄る。


「ちょ、ちょ、速水ちゃん! 顔はダメだって。今から出番なんだから腫れたらどうすんの」

「……すみません。でも、我慢できなくて。ごめんなさい、賀古さん」


 低く唸るように謝る彼女と隣でおろおろしているスタッフさんに対して、俺は深く頭を下げた。


「俺こそ、すみませんでした。あの……ほんとに、すみませんでした」

「いいって、いいって。なんか大事な用事だったんでしょ? 次から気を付けてくれれば。ね、速水ちゃん?」

「……」


 速水さんが黙っているうちにスタッフさんは名前を呼ばれ、もう一度「ほんとに大丈夫だから」と俺に声をかけてから仕事に戻っていってしまった。

 頭を上げるタイミングがわからず、90度の姿勢のまま固まっていると、頭上から「賀古さん」と速水さんの声が聞こえた。恐る恐る顔を上げると、彼女の口はまだへの字だった。


「出番、後ろの順番のタレントさんと代わってもらいました。あと15分ほど余裕あります、準備してください。衣装は着たままですね。番組が終わったらご迷惑をおかけした皆さんに謝りに行きましょう」

「……はい」

「それから、事務所の許可なくオーディション、受けないでください。そんなに挑戦したかったのなら、そう私に言ってくれれば私も対処を考えました。あなたの気持ちに気づいてあげられなかったのは私の落ち度です、すみません。でも、これからは絶対に勝手なことはしないでください」

「はい」

「オーディション、どうでしたか」

「……え?」


 なんと言われたのかわからず訊き返すと、より強い口調でもう一度尋ねられる。


「オーディションの出来です。上手くいきましたか」

「あ……はい」


 ぼんやりとうなずくと、速水さんは「良かったです」と、微笑んだ。

 この一連のやり取りのあいだ、シュンは少し離れた場所で俺と速水さんをを見ていた。





「続いては、LUCKのお二人です!」


 紹介されて、俺とシュンは司会者のそばにお辞儀をしながら歩み寄る。

 これから歌う新曲についていくつか質問され、笑顔で受け答えしていると、司会のタレントさんがもったいぶたように「実はここで一つ、発表があります」と告げた。

 なんだ、何も聞いていないけど。ちらりと横に立つシュンを見るけれど、こんなときに限ってこいつはロボットらしく無表情だった。つまり、何か知っているということ。

 すると、観覧席がにわかにざわつく。なんだろうと思っていると、


「賀古くん」

「うあっ?」


 突然背後から声がして振り向けば、桜木さんがゆったりとした笑顔で立っていた。

 どうして、ここに。

 驚いて口をぱくぱくさせていると、桜木さんは司会者からマイクを受け取って低く心地よい声で話し始めた。


「賀古正樹くんに、サプライズの発表です。なんと、1月から始まる連続ドラマで、おれ、桜木康弘とこの賀古正樹くんが、ダブル主演を、努めます! 彼はドラマ初主演です、おめでとう! そして今日LUCKに披露してもらう新曲は、そのドラマの主題歌に決定しました! LUCKおめでとう!」


 え、え、なんて? 思考が追いつかないうちに、司会者や共演者、観客たちが拍手とともに何か言い始める。おめでとう、正樹頑張って、LUCK最高。そんなお祝いの言葉たち。

 たぶんそれ、前に受けたミステリードラマのオーディションだ。連絡ないからダメだったと思ってたやつ。てか、え、主題歌? この曲はタイアップなしなんじゃなかったのかよ。

 司会者が手を叩きながら俺を見る。


「賀古さん、今のお気持ちはどうですか?」

「お、お、お気持ち!? え、えっと……わかんない、けど嬉しいです、わかんないっすけど!」


 明らかに混乱してしどろもどろになっている俺を、みんなが笑う。暖かな雰囲気でスタジオが満たされていく。


「今日は桜木さんも新曲のお披露目、見守ってくださるんですよね?」

「はい、ここでばっちり聴いてますよ~」

「それではLUCKのお二人、スタンバイお願いします」


 なかば放心状態のままステージへ移動したが、曲の最初のポーズをとると集中力が戻ってきた。曲が始まって歌いながら踊れば、みんなが手拍子をしてくれる。

 デビューしてから何度も経験してきたスポットライトの光や、こちらを興奮した目で見つめる観客、マイクを通してスピーカーから会場に響き渡る俺とシュンの歌声、俺たちの一瞬の表情も逃すまいと動き回るカメラ。そういったものが、なぜか初めての光景に思える。

 曲のサビが終わり間奏に入るところで、隣で踊っていたシュンがふいによろめいた。とっさに両手で彼の肩を支えると、女性の観客から黄色い歓声が上がった。


「ありがとう」


 シュンが小声でそう言って、すっと離れていく。珍しいな、こいつがステップをミスするなんて。

 でもなんか、さっきは俺が助けられて今は俺が助けて、柄にもなく相棒っぽことやってんじゃん、俺とこいつ。距離が縮まったような気がしないでもない。

 あっという間に俺たちの歌は終わり、今の今まで俺たちを照らしていた照明が暗くなった。

 拍手をもらいながらステージから裏に戻ると、一緒に捌けてきた桜木さんに肩をつつかれた。


「賀古くん、今日の騒動、聞いたよ。普段の君が礼儀正しい良い子でよかった。みんな怒ってなかったろ? いつもルーズなやつだとまたかって干されかねないんだよなあ」

「……もう絶対にこんなことしません。すみませんでした」

「ま、おれはそういう無茶する感じ、嫌いじゃないけどね。もうすぐ撮影始まって忙しくなるぞ、そんな感じのパワフルな意気込みでよろしく」


 小さくなる俺とは逆に、桜木さんは愉快そうに笑った。


「シュン、さっきよろけてたけど、大丈夫か? いつもはあんなことないのに」


 速水さんと一緒に現場関係者に謝罪して回って控室に帰ってきてから、先に戻っていたシュンに尋ねると、シュンは大丈夫と笑いながら頭を触った。


「ちょっとトラックとぶつかったときに、平衡感覚機能が狂っちゃったみたいでさ。明日オフだからメンテナンスしてもらってくる」

「あ、そうだったのか……ごめんな。俺のせいだ。今日はやたら交通事故に振り回されたし、あんな無茶してオーディションに行くなっていう神のお告げだったのかもしれない。トラックの緊急ブレーキだかセンサーだかわかんないけど故障しててぶつかるって、運悪すぎだし」

「……僕もそうだけど、機械にだってバグや故障はあるから。みんな正常に作動するのが当たり前だと思ってるけど、ブレーキが利かなくて事故を起こす車だってあるし、完ぺきに踊るために作られたのによろめくアンドロイドもいる。修理しても直らなければ、廃棄。そこが人間とは違うところだよね」

「シュン……?」


 珍しく暗い表情で変なことを言う。心配になって顔をのぞき込もうとすると、彼はすぐに明るい顔に戻った。


「速水さんは?」

「お手洗い。たぶんもうすぐ戻ってくる。そしたら帰るって」

「そっか。あ、そうだ。ドラマの主演おめでとう。正樹くんの携帯、たくさん通知が鳴ってたよ」


 テーブルの上に置かれた携帯電話を指差されたから手に取ってみると、さっきの放送を見ていたらしいSNSのフォロワーたちからのお祝いのメッセージや、友達からのメールが大量に来ていた。そんなに喜んでくれるんだ。所詮、他人のことなのに、こんなにたくさんのおめでとうや嬉しい、絶対見ますという文章。


「……みんな、LUCKとシュンに興味があるだけで、俺のことなんか誰も気にしてないと思ってた」

「なんでそう思うの?」


 シュンが呆れたように笑う。俺は彼の向かいのソファに座り、背もたれに背中を預けて目を閉じた。今までのことを思い返す。


「だって、アンドロイドが珍しいから。シュンは踊りも歌も上手い、完ぺきなアイドルだから。俺はその隣でよくミスをする、ただの人間だから」


 一瞬の沈黙ののち、シュンが息を吐くのが空気で感じられた。


「バカだなあ、正樹くんは」


 目を開けると、親しみのこもった目でシュンが俺を見ていた。


「僕が……I-droidが、なぜ製造されたか知ってる?」

「……知らない」

「人間みたいに不完全じゃないし間違いを起こさないからだよ。正樹くんが言う通り、歌も踊りも一度みたら完ぺきにコピーして間違えないようにプログラムされている。恋愛感情が設定されていないから、絶対に熱愛スキャンダルも起こさない。時間に遅刻したりしない。SNSで失言もしないし炎上もしない。ファンが求める完ぺきなアイドル。それが僕」


 シュンが歌うように言葉を紡ぐ。


「だけど、僕を作った開発者は、何もわかっていないんだ。君と一緒に活動しているうちに、そう思うようになった。賀古正樹というアイドルは、アンドロイドに比べたら歌も踊りも間違えるし今日みたいに騒ぎも起こす。完ぺきとはいえない」

「おい、ナチュラルにディスんな」

「だけど、みんな正樹くんのことが好きなんだよね。未熟だから、ファンは応援してる。ドラマの主演が決まったら良かったおめでとうって自分のことのように喜ぶ。最初から完ぺきなんじゃなくて、少しずつ努力してレベルアップしていくその過程も含めて、正樹くんなんだよ。僕にはない、君の、魅力なんだよ」


 俺を見つめるシュンの瞳の奥に、何か悲し気な光が宿っているような気がして、俺は一瞬言葉を失った。アンドロイドにはない、人間の魅力。

 だけど、それでも。


「やっぱり俺は、お前が羨ましいけどなあ……」

「ないものねだりだね。僕だって正樹くんが、人間が羨ましいよ」

「じゃあお互いに持ってない魅力を補い合えるし、いいんじゃないの」

「最初は僕と組むの嫌そうだったのに、どうしたの?」

「うっさい。お前がナチュラルに褒めるからその気になっただけだよ」


 ディスったと思ったら嬉しいことを言ってくれるし、悔しいけどほだされかけている。

 でもまあ、もう意地張らなくてもいいか。最初ほどこいつのこと嫌いじゃないし。


「お待たせしました、帰りましょう……って、お二人ともご機嫌そうですね、どうされたんですか? 急に仲良しになりました……?」


 ドアが開き、中に入ってきた速水さんが戸惑った顔で俺たちを見る。


「どうもしないです」

「正樹くんがそういうなら、そうです」」

「え? え? 本当ですか? 何かありましたよね?」


 不安そうな彼女の様子に、ついシュンと目を合わせてさらに笑ってしまいそうになる。

 結局、俺にとってのLUCKは不運だったのか幸運だったのか、正直まだ判断がつかない。

 だけど今、星風シュンという相棒と、ようやく本物のコンビとしてのスタートを切れたような気がした。

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