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隔たりの向こう側

作者: ZOE

小説の練習用に作成してみました。

肌に擦る様な痛みが走る程、乾燥した日だった。

遠くから五月蠅い蝉の鳴き声が聞こえる季節だというのに。


今日は私の勤めている会社が、珍しく休みで良いと突然通達を送付して来たのでその日は特に何かをする訳でもなく過ごしていた。何故突然休みにするんだ、と憤りを感じていたが、あの蝉の様に喧しい上司が居ないので良しとした。


そこで私は久しく会っていなかった親友の家へと行こう、と決める。そう決めたからには早速今着ている服から外出用への服へと着替える。そして緑色の色褪せた冷蔵庫の扉を開け、炭酸飲料を一本飲みほした。

歯を適当に磨き髪を整えてから、玄関から出、自転車に跨り地面を駆けだす。


親友の家はそう遠くなく、自転車であれば、5分とかからない距離であった。

自転車は二年しか使っていないのにもう既にあちこち錆びていた。ペダルを漕ぐと鱨の鳴き声の様な音を出す。そろそろ買い替えるべきだなと感じた。


そうこう考えている内に、親友の家の前へと着く。自転車をガレージの所へと置き、玄関前に立つ。

親友の家は周りの集合住宅の家とは違い、灰色を基調とした広くて立派な家であった。玄関もそれに比例して赤銅色の大きく分厚いドアであった。ドアの周りは中が見えづらいように細工されたガラスが張られていた。


ドアの左側にあるチャイムを鳴らして親友を呼ぶ。


「おおい、いるかぁ?」


暫くしても、何の反応もなかった。

広い空に私の声が空気を振動させて虚しく響いただけであった。


寝ているのか、または出かけているのかのどちらかであろう。


再度、先ほどと同じように大声で呼ぶ。

残念ながら、結果は同じであった。


「残念、居ないか」


そう呟きながら、ドアから離れ、背を向けた時だった。


  ガチャッ


と鍵の開く音が聞こえる。何だ、居たのかと振り向くとドアは開いてなかったが隙間から鍵が解錠していたのが見える。


「居るなら声かけろよ」


ははは、と笑いながらドアに近づく。が、


  ガチャリ


鍵を閉まる。どうやら、親友は悪戯をしたいようだ


「おい、ふざけてないで早く開けてくれないか。暑いんだ」


親友の悪戯に笑いながらも自分の心境を言う。


   ガチャッ 


言葉が届いたのか、鍵がまた開く。


「お」


ガチャリ


が、すぐ閉まる。そんなに悪戯がしたいのだろうか。


「もう帰っていいか?」


そう言い、帰ろうと思った。


   ガチャ


また鍵が開く。今度はもう閉めないだろう。


試しに近づいてみる。


閉まらない。


「入るぞー」


と、ドアノブに手をかけようとした瞬間、


           ガチャリ


また鍵が閉まる。


背中を一筋の汗が流れる。何かがおかしい。親友はこんなことをする人間だっただろうか、と頭の中が色々な考えが巡る。確かに親友はふざけた男だったが、ここまでいたずらを繰り返す様な男だっただろうか。

しかし、年を重ねたので、性格が変わったのかもしれないとそう思うことにした。


ドアノブから手を離し、ドアから目線を外さないでそのまま後ろに下がる。


覗き穴から確認しているに違いない。覗き穴を睨むが当然向こう側の反応は分からない。


するとまた

 

      ガチャッ


鍵が開く。こちらの反応に合わせて鍵を動かしているようである。


緩やかにとドアに近づく。鍵は閉まらない。


「おるぁ!」


鍵が閉まる前にドアノブを掴んで強引に開けようと思ったが


   ガチャリ!!


ドアノブに触れた瞬間に鍵が閉まる。


「おい…いい加減にしないか。」


だんだんと苛立ってくる。只でさえ日差しが強烈なのにこんなことをやっている場合ではないのだ。


ドアノブから手を離す。その瞬間、


   ガチャッ!


鍵が開く。


瞬間的にドアノブを握るも


   ガチャリ


直ぐに鍵が閉まる。


「ああん?」


頭の血管が沸騰してくるのがわかる程に苛立つ。


怒りに任せて思わずドアを蹴ってしまう。


しかし、ドアの向こう側からは何の反応もない。


沸騰した血管が徐々に冷め、あることに気が付く。



人の気配がない。全くと言っていいほど人の気配がないのだ。


不気味さを感じ始める。


ドアから離れ鍵の所を見る。


  ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

  ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ


凄まじい勢いでドアの鍵が開け閉めされる。その異常な動きに恐怖を覚え始め、足が震え始める。

何だこれは。何だこれは。親友は気が狂ったのだろうか。そしてもう一つ、あることに気がつく。


ドアの周りのガラスの向こう側に白いタオルのようなものがふわふわと浮遊していた。

棒の先に白い布でもつけて動かしているのかと思ったが、一つだけなく、三個に増える。

一体何が起きているのだろうか。これは何なのだろうか。全く理解できない。


恐怖が体を襲いはじめ、ドアから離れ、自転車に乗ろうとしたその時

一台の車がやってくる。


運転席には親友が乗っていた。車のドアのガラスを開け、


「よう!何やってんだ?家には誰もいないぞ!」


親友は大声で笑いながら話してくる。


嗚呼、ドアの鍵を開け閉めしてたのは一体誰だったのだろうか。


白いタオルのようなものは何だったのだろうか。


一体、あのドアの向こう側は何が居たんだろうか。


あの赤銅色の分厚い隔たりの向こう側を想像したくなかった。


だって、それを考えてしまうと、世の中の理を超えた存在が居ることを認めてしまうんだもの。

実はこれ、僕の体験談。

設定とかはかなり異なっていますが、起きたことはすべて実話です。

普段僕は幽霊や妖怪を信じません。

この話を信じるか信じないかはあなた次第。

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