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9話

 サキュバスは露出度を下げると死ぬ。


 これはもはや『一般常識』として浸透しているほどの『サキュバス対策』であり、また、サキュバスはコスプレえっちも可なので、まずコスプレ要求を断らない。


『着たら死ぬなら着るなよ』――そういう冷静な声もあったが、それは実戦を知らない素人の考えだ。


 サキュバスが男の精を絞る。

 精を絞られた男は死ぬ。


 これもまた一般常識と言えるほど浸透したサキュバスの生態であり、ようするにサキュバス対策は簡単なのだ。


 えっちしない。


 見かけたら物理で殺す。


 以上対策をとられるとサキュバスはどうしようもない。

 なにせ、戦闘能力は高くない。

 生物としての進化段階で魅力に全振りしてしまった悲しき生命の神秘なのだ。


 だから現在サキュバスは『多少無理でもえっちしてくれる可能性があるなら対応する』『精をもらえるならたいていの要求には応える』というところまで追い詰められており、そんな中で出された『コスプレ要求』を断れるはずもない。


 着衣or(ダイ)

 いや、着衣すなわち死でもあるから、死or死。


 その理不尽な、選択とさえ呼べない選択に『さっさと済ませればセーフかも知れない』と応じるまでに種として追い詰められた悲しき存在――サキュバス。


 ……あるサキュバスがいた。


 胸は小さかった。

 腰はくびれていたけれど、尻も大きくないので、全体的に『痩せている』という印象のサキュバスだ。


 背だけが他のサキュバスより高く、『細長い』と揶揄され、サキュバス内では『落ちこぼれ』扱いを受けていた女だった。


「精を、精をください。もう十日ももらっていないんです」


 前線で哀れに精を請う様子は敵味方から笑いものにされており、『鶏ガラサキュバス』と揶揄されてもいた。


 そんな彼女にある日、目をつけた男がいたのだ。


 その男こそ――先頃、ロリサキュバスが絞り殺した存在だ。


「俺はメイド萌えなんだ。しかもロングスカートのメイド以外は邪道だと思っている」


 なんという残酷な仕打ちか!

 露出を減らせば死ぬサキュバスに、ロングスカートをはかせようなどと!


 しかし、背に腹は変えられない。

 メイド服とにらみあう彼女に――姉に、ロリサキュバスはもちろん、懇願した。


「お姉ちゃん、そんな長いスカートなんかはいたら死んじゃうよ!」


 だけれど、姉は力ない、幽鬼のような顔で微笑むのだ。


「大丈夫よ。きっと(ごはん)をもらってみせるわ」


 ……今思えば、凄絶な決意の宿った笑みだった。

 姉は細身の自分用サイズに仕立て直したメイド服を手に、メイド萌えの男のもとへと向かった。


 その後、帰らない。

 きっと服に着られてしまった(※サキュバス用語で『死んでしまった』の暗喩)のだろう。


 それから、ロリサキュバスは『メイド萌えの男』を探し――

 ついに、見つけ出す。


 復讐のため。

 姉の行方を――姉の最期の様子を聞き出すため、彼女は男を夜道で誘惑し、殺したのだ。


 その殺人行為に後悔はない。

 ただ、唯一、反省点があるとすれば――


 田んぼのそばでの青姦は、虫に食われてかゆくなる。


 あと、蛙がうるさくてムードもへったくれもないので、二度とやらないと、そういうことだけだった。

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