8話
「……アンタ、よく来たね」
真夜中。
自分の経営する宿屋の食事スペース――この宿屋はそもそも、ほぼ食事スペースだが――で、カウンターテーブルを挟んで、女将とロリサキュバスが見つめ合っている。
椅子に座らされたロリサキュバスは、なぜ呼び出されたのかわからない様子でキョトンとしていた。
一方で、唇の分厚い女将の表情は険しい。
「ハッキリ言うよ。ひょっとして、犯人はアンタかい?」
女将は問いかける。
ロリサキュバスはきょとんとした顔で首をかしげていたが……
ジッと女将の碧い瞳に見つめられ続けて。
観念したように、笑った。
「……どうしてわかったんですか?」
「サキュバスに殺された男の死体を見たことがあるのさ。ちょうどあんな風に、ひからびて黒ずんで……なにより、全裸だった」
「……」
「この村には、サキュバスの死体を見たことがある者も少なくない……今はアタシしか真相にたどり着いていないようだけれどね、みんな、気付くよ。いや……とっくに気付いていて、それでも黙っているだけなんだ。なにせ、死者は蘇生するからね。サキュバスに殺される男は極上の快楽の中で死ぬから、一度復活しても、またサキュバスに殺されに行くという……まあ、そういうことで、みんな幸せだからいいやと思っている人は多いんだろうけれど」
「……」
「けれど、ヒトを殺すのは、ルール違反だよ。……ヒトの社会で生きるなら、ルールは守らなくちゃあならない。……わかるね?」
「……はい」
「じゃあ、なぜ、あんなことをしたんだい? あの男が、アンタが村に入るのに最後まで反対していたからかい?」
「いいえ。違います。……女将さん、なぜ、私がこの村に来たか、その理由がわかりますか?」
ロリサキュバスは白黒がヒトと逆になった目を、切なそうに細めた。
女将が不審そうに目を細める。
「……アンタ、ケガをして逃げてるうちに、偶然この村に流れ着いた――ってわけじゃあ、ないんだね」
「はい。私は、偶然ではなく、この村に来たんです」
「……その理由は……」
「復讐」
ロリサキュバスは、悲しげな顔で言った。
その年齢の割に過去を感じさせる切ない表情のまま――
「メイドにされて殺された姉の復讐のために、あの男を追ってきたんです」




