7話
「任せろ。俺は元勇者パーティーのSSSランク僧侶だ。蘇生ぐらいお手の物さ」
「いいや、若いの。ここはワシに任せてもらおうか……ワシは、勇者パーティーの中でもその実力が評価されなかっただけで、実力的にはSSSランクのさらに上に位置する僧侶……生前より美しい体に蘇生してやろう……そう、美少女になあ!」
「フン、これだから男どもはいつまで経ってもガキだっていうんだよ! アタイに任せな! アタイはSSSランクの武闘僧! 生前より強い男に仕上げてやるよ!」
SSSランクが多い村(人口百万人のうち七割以上が元勇者パーティーのSSSランク)なので、蘇生程度こなせるヒトがざらにいる。
なので死者が出た場合、蘇生術を久々に使いたい僧侶職たちがこぞって『自分にやらせろ』と主張し、彼らが話し合いを経て殴り合いに発展し最強の者が蘇生役を射止めるまで、だいたい七日ほどかかるのだ。
この七日の中には殴り倒され決着がついたあとで敗者が『いや、俺はまだ負けてねぇ。――見せてやるよ、俺の本気を!』と言いながら復活するフェイズもふくまれるので、七日のうち実に六日が殴り合いであり、そのうち四日が敗者が勝手に復活し殴り合いに交ざるというゾンビ行為フェイズである。
我が強く負けるのが嫌いな人が多いのだ。
だいたいの場合において、この我の強さが勇者パーティー追放のゆえんである。
かくして死者が出てから、死者が真相を語れる状態になるまで――七日。
知能に自信を持つ者たちにとっては格好の推理期間が確保されるわけである。
「まず、被害者は元SSSランクの戦士……これを殺せるとなると、候補が絞られる」
「この村(人口百万人)にいる、『SSSランク戦士を倒せそうな者』は――ざっと七十万人ほどか」
「さらに被害者の状況から見るに、物理攻撃ではなく、なにか特殊な攻撃方法で……ひからびた状態? にできそうな者は……三十万人ほどだな」
「魔法か呪いか……あるいは聖職者の仕業ということも考えられる」
「ふーむ……もしくは戦士系でスキルを隠しているのかも……」
「容疑者のステータスを閲覧させてもらおう」
「しかしみな、ステータスの開示は嫌がる……だからこそ『ステータスを隠さない』ロリサキュバスちゃんのお店に安心感を覚えて入り浸ったのだ」
「自分より弱い相手というだけで安心できるものな」
「ロリサキュバスはいいぞ」
「来世は俺もロリサキュバス」
「ああ……すなわちロリサキュバスが世界を救うということだ」
みなキメ顔で賢そう(と本人が思うこと)を述べているだけで、議論は進まない。
だが、その中で、容疑者をたった一人に絞り込んだ者がいた。
「もしかして――」
その者は、唇の分厚い宿屋(主な収入源は定食)の女将で……
彼女はサキュバスとの戦闘経験があった。
だから知っていたのだ。
ひからびた男の死体。
それはちょうど、サキュバスにやられた男性の死体によく似ている、と。