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紅焔の魔導士と精霊使いの双剣士  作者: 稲葉未翼
第一章 ロンゴロ前線
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第六話 動揺

先程の事件によって校舎が損壊してしまったのと学園周辺が危険指定区域になった為に生徒は寮で待機となった。


因みに俺の荷物は宅配業者に頼んで既に移動が完了している。


俺は自室に向かって歩いていた。


『にしてもあの剣聖二人、恐らく竜也が考えているよりずっと強いぞ』


『ですね、頑張りましょう!竜也さん!』


「ああ、どっちにしろ俺には勝利しかないからな」


喋っているうちに部屋の前に到着し、俺は予め学園長に渡されていたカードキーを利用し、部屋のロックを解除し、室内へと入る。


『にしても質素な部屋だなぁ、竜也らしくないぞ?』


「いやまあまだ引っ越したばかりだからね…」


現在、俺の部屋には生活に最低限必要な物とダンボールの山しかない。

確かに俺らしくないと言えば、そうなのかもしれない。


「にしても、お前ら腹は空かないのか?」


俺は先程から思っていた事を口にする。

契約精霊はその力を発揮する事に体力を失う。

普通ならばもう腹が減っていてもおかしくはないはずだ。


『え、いや?決して竜也さんが貧乏さんだから気遣ってーなんて事はないですよ?ねぇイリス?』


『あ、ああ、そうだな白雪。私達は腹など減っておらんわ』


「はぁ、食いたいんだろ?そこのダンボールの中に、いろいろ食べ物入ってるから食っていいぞ」


『優しいですね竜也さん、では私はお言葉に甘えて、と』


『じゃあ私も何か食べようかね』


二人は精霊状態から存在のある擬人化状態に移行する。

精霊は基本的に契約者となら存在のない精霊状態でも会話する事ができ、戦う際には具現化し剣やその精霊に対応した武器となる。そして時には人間として具現化し、周りと交流を深めることも可能である。


と、俺はダンボールの中に食べ物が入っている事を伝えると、ベットに寝っ転がる。


「というより、今回の件の事だが前線のヤツらは何やってたんだろうな」


『恐らく、気が緩んでいたか、S級魔獣を対処している場合では無くなったか、だな』


『どんな状況になっても白雪は竜也さんを御守りします!』


「ああ、イリスも白雪もいつもありがとな」


『べ、別に礼を言われることでもないわ』


『はい、私はいつでも竜也さんと一緒に…』


俺は一日の疲れのせいか、そのままベッドで熟睡してしまった。

体力を使い過ぎたのだろう。

日頃からトレーニングはしているつもりだが、急激に力を使用するとやはり睡眠欲が出てしまうのだ。







俺は数時間後に起きた。

既にもう空は暗くなっていた。

横を見ると、イリスと白雪が眠っていた。

俺は疲れたのだろうと思い、二人の頭を撫で、机の上を見る。

どうやら煎餅を食べたようだ。

俺はベッドから起き上がり、台所に行き、コーヒーメーカーでコーヒーを作り、コーヒーカップに注ぐ。

そして、飲もうとした時だった。

部屋のチャイムが鳴った。

こんな時間に誰だろうか?

俺はインターホンのカメラを起動し、訪問者を確認する。

そこにはアリアが居た。


「おうアリア、今日はどういう要件だ?」


「竜也、今回の件で話したい事があるの、少しいいかしら?」


「ああ、入ってくれ」


と言って俺はインターホンを操作し、ドアのロックを解除する。


「お邪魔するわね。って、何も無いじゃないの」


「…入って一言目がそれか」


と言って俺は歩きながら机に案内する。

しかし、俺は重要なことに気付いていなかった。


「ちょっと、竜也?貴方なんで部屋に女の子が二人居て更に貴方のベッドで寝ているのかしら?」


「えっと、そうですね…」


俺はどう返答しようか困る。

特に言ってしまっても問題はないのだが、基本的に擬人化のできる契約精霊を連れている者は強いとされているので、あまり情報をアリアには教えたくないのだ。


「ええ、確かに私達は今日あったばかりで貴方に胸を揉まれた関係でしかないわ?でも限度ってものがあるんじゃないかしら?もしかして貴方、草薙の言う通り「女たらし」なのかしら?」


「それに関してはすまない…!ベッド寝てる二人は実は…」


と、俺は隠していてもしょうがないと判断し、アリアにそれを伝える。


「成程…。にしても精霊二人と同時契約…、貴方相当強いわぬ?」


「…それに関しては突っ込まないでくれ。で、今回の件で話したい事とはなんだ?」


「ええ、話が逸れてしまったわね。今日のS級魔獣が学園まで来たのはおかしいと思わないかしら?」


「ああ、如何にこの学園が前線に近いからといっても流石にあの魔獣を前線部隊が逃すはずがない…」


この学園は最終防衛ラインであった現在最前線のロンゴロ防衛線近くに設立されてあるだけあって魔獣は侵入してくる可能性はあるが、それなりに達人レベルの猛者達による手厚い防衛があったはずだ。


「実はロンゴロ防衛線近くで魔獣の大量発生と魔力の爆発が確認されているわ」


「魔獣の大量発生に魔力の爆発?!五年前の大戦と全く同じじゃないか?!」


「ええ、前衛部隊が全力を尽くして討伐しているが僅かなとり逃しがある可能性があると私達「英雄」にも報告されていたわ」


「そんな時に国家は何をやっている?!前線では死者がとてつもない程出てるじゃないのか?!」


「どうやら国家は国民の暴走を恐れて公表していないみたい」


「そんな?!それじゃあまた…また俺は大切な人を失わなければいけないのか?!」


「…大丈夫だわ。貴方の過去に何があったかは知らないし敢えて突っ込む気はないけれど「英雄」として私達が貴方を守るわ」


「駄目なんだよそれじゃあ!俺はもう誰かに守られて生きるのは嫌なんだ!「英雄」には恐らく出撃命令が出されるはずだ。学園長に相談して俺も出撃させて貰う」


俺は過去の俺を隠すように、逃げる様に焦る。

誰かに守られて生きるのはもう嫌だ。

自分の身は自分で守って大切な人も守りたい。


「…恐らく学園長はそんな状態の竜也を戦場に出させる判断はしないはずよ。幾ら貴方が英雄に匹敵する力を持っているとしてもその様な覚悟では無理よ」


確かに正論であった。

冷静に落ち着いていなければS級魔獣にまともに相対出来る訳が無かった。


「それもそうだな…。アリア、済まなかった」


「な、何よ。これくらい当然の事よ…」


『そうですよ竜也さん。私達もいますから』


『ああ、私達を少しは頼れ』


後ろを振り向くといつの間にかイリスと白雪が居た。

確かに俺には仲間がいる。

一人ではないはずだ。

一人で抱え込むより仲間と解決した方が早いに決まっている。


「…ああ、そうだな。イリス、白雪、ありがとな」


「じゃあ、アリア。俺、学園長に相談しに行ってくる」


「…私も行くわ。私が居た方が少しは確率が上がるはずよ。べ、別に貴方の為にやる訳じゃないんだからね、あくまでも私の為よ私の為」


「ああ、ありがとなアリア」







そう言って俺達は学園長室へ向かったのであった。

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