第四話 英雄
ひと通りの授業が終了し、学園は昼休みムードへと突入していた。
『竜也さん、お昼ご飯はどうするのですか?』
白雪が俺に話しかける。
白雪もイリス同様、擬人化が可能である。
「おう白雪。そこら辺の食堂ででも食べようかな、と」
『食堂のパンならもう売り切れてるぞ?』
イリスが俺に地獄のような発言をする。
そんなことはないはずだ。
600人も在園生がいるんだ、そう売り切れはしないだろう、と恐る恐る食堂の構買コーナーを覗くが、そこにパンは無かった。
「うそ…だろ…?」
『竜也よ、だから私は言ったのだ。『早く食べ物を探せ』と』
「イリスの言う通りにするべきだった…」
と、俺が落胆している時だった。
「やあ、剣崎竜也君」
背後から誰かに喋りかけられる。
敵意のある者でないのは、感覚的に理解出来た。
「…?」
後ろを振り向くと、金髪のイケメンが立っていた。
「…ああ。自己紹介をしていなかったね。僕は2-aのクリス・アシュリム、クリスと呼んでくれ」
「ああ、俺は朝にも言った通り剣崎竜也だ。それで、なんの用だ?」
「パンなら僕が二つ分買っておいたから食べるかい?」
「ああ!勿論!」
という事で俺は食堂でクリスと一緒にパンを食べていた。
「竜也君、君はこの学園に住まう五人の強者を知っているかい?」
「ああ、アリアなら知ってるが、それ以外は知らない」
「この学園には魔導士「アリア・ソーディ」忍術使い「杉林翠」魔導剣士「ゴールド・イスタン」女剣聖「ミカ・パリーグ」そしてこの僕、剣聖「クリス・アシュリム」の英雄と呼ばれる五人が在籍している」
「なるほど、実技大会ではクリス、アリアを含めたその五人を倒さなければいけない訳か」
「ああ、まあ今年は僕が優勝できるかは分からないがね」
「何故だ?」
「…君だよ、僕は君に負けるかもしれない」
「クリスが俺に?…確かに俺は絶対に勝たなければならない、全力で行かせてもらう」
「…良かったよ。君がそういう性格で」
「え?」
「いや、なんでもない。僕はそろそろ教室へ戻るよ」
「ああ、じゃあな」
といって彼はどこかへ行ってしまった。
なんなんだ?クリスは?
『あれは…あれだな』
『はい、あれですね』
イリスと白雪が口を揃えて言う。
「あれ、とは?」
『俗に言う「ホモ」ってやつだよ』
『同性恋愛者の事ですよ。まあ、私は悪いとは思いませんが』
『おい、白雪まさかお前にはそういう趣味があったのか?』
「あーもういいから、昼休みもそろそろ終わりそうだ、教室へ変えるか」
と言って俺は食堂を後にした。