第十話 大戦
「闘飛竜が出現していたという事は周辺区域にも同等レベルの魔獣が居るはずだ。用心しておこう」
「そうですね、用心しておきましょう」
刹那、大地を焦がす程に熱く地を照らしていた蒼穹の青空が一変。
紫の絶望や死を感じさせるような地獄の色へと変化した。
それは世界の終焉を告げている様であり、死神がら生物となる生きる万物に死を宣告しているようだった。
「何!?」
「これは...」
「ああ、二年前の大戦と同じだ」
アリアは驚愕の顔を浮かべ、翠は不安げに空を観察する。そしてクリスは鋭い眼差しで空を見つめて言った。
「二年前の大戦...。俺の姉を奪ったあの闘いがまた始まるというのか...」
「小僧、過去ばかりを見るな。未来を見据えろ」
俺に不安が積もる一方、ゴールドは強かった。
やがて、その絶望と死を象徴する空に巨大な魔術紋章が浮かぶ。
形式から察するに邪属性魔法の召喚魔法であろう。
ここから始まるのだ。
互いの生命を懸けた世界大戦が。
「魔法紋章...。遂に争いが始まるわ」
「ああ、アリア。頑張ろう」
「当たり前でしょ、私は命懸けで闘うわ」
俺とアリアはこうして互いに言葉を交わす。
これが最後の会話...とならないと良いが。
魔術紋章が発光し、魔獣が召喚される。
その殆どはS級であり、突破は困難かと思われた。
魔獣は一斉に飛び立ち、大地を破壊しようと蹂躙し始めた。
「轟雷創造!」
クリスが剣を鞘から引き抜き、魔獣の大群へと突撃する。
「邪闇破壊斬撃!」
ミカもそれに合わせて突撃する。
「チッ...めんどくせぇ、だがそれが面白い」
「神翼なる金属」
ゴールドがそう詠唱すると背中に金属で出来た翼が生成され、それを操り上空へと舞い上がっていった。
「忍法・瞬身の術」
翠は瞬時にしてどこかえ消え去った。
恐らくは魔獣のところへと転移したのだろう。
「達也、私達も行きましょう」
「ああ、俺も早く闘いたい。あのような悲劇をもう二度と起こさない為に」
と言って俺とアリアも先程付与した飛行魔法を行使して神速なる速度で魔獣へと突撃した。