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紅焔の魔導士と精霊使いの双剣士  作者: 稲葉未翼
第零章 王立学園
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第一話 運命

──俺は今、あまり見慣れのない高級そうな石造りの道路を歩いていた。

そんな事はどうでもいい?

いや、気にしてくれ。

で、因みに何故かと言うと、俺は事情により「王立エスポワール魔導学園」へ転校する事となった。そのために移動している最中だ。

まあ理由としては、学園長に呼び出された。

と、そんなありきたりな理由なのだが、これには深い事情がある。



それは、先週の話だ。



俺は両親の知り合いであった学園長に招きられ、学園長の豪邸で話をしていた。


「竜也君。貴方には願いはないかしら?」


俺に願い…?

全てを失った俺の願い…。


「…そんなの決まってる」


俺は昔に起こったとある事件により親を失くし、姉が行方不明となった。

俺はそれから二年が経過した今も尚、姉を探し続けている。

だが、勿論見つかっていない。

そんな俺の願いはただ一つ。


「…行方不明になった姉と会って幸せに暮らしたい」


と、俺は正直な気持ちを吐露する。


「私ならその願い、叶えられるかもしれないぞ?」


…今この人はなんと言った?

私なら願いが叶えられる?

ふざけているのか?


「行方不明になった姉を何故あなたが俺に合わせられる?」


俺は学園長の胸元を掴んで強く言った。


「…まずはその手を離せ。殺すぞ」


学園長は冷たく言い放った。


「すまない。気が動転していた。許してくれ」


「まあいい、実は竜也君の姉さんの目撃情報が上がった」


「姉の目撃情報?!そんな情報どこから?!」


俺は再び焦りを感じながら返答を求めた。

数年も探し求めたんだ。僅かにでも会える可能性がある。それを捨てるわけにはいかない。


「…それは言えない」


「なっ…!どういう事だ!」


何故言えない?!

やはりこいつが姉を拐った犯人なのか?


「言ってしまったら君はすぐさまそこに向かってしまうだろ?だが安心しろ。私の運営する「王立エスポワール魔導学園」で一年に一度行われる「魔導・剣技実技大会」。これは知ってるな?」


…魔導・剣技実技大会。

当然知っている。これは世界的にも有名な実技大会だ。

優勝に見事輝いたものは絶対的な地位と共に、願いを一つ叶えられるとされている。


「勿論知っている。優勝すれば願いが叶うのだろ?でも、俺が優勝出来ると思うか?」


「ああ、思うさ。君はあの「剣崎龍一」の息子であり、「剣崎流剣技」と「イリス」またの名を「龍碧剣」と呼ばれる精霊を受け継いだのだからな」


イリス…。

俺が親父から受け継いだ精霊の女の子だ。

別称「龍碧剣」と呼ばれ、美しい形をしている刃の鋭い剣だ。


「…分かった。転校してその魔導・剣技実技大会とやらで優勝して姉を見つけ出してやろう」


「その意思だ。今日中に私が転校届けを出しておく。私には誰も逆らえないからな。明日にはこっちに来い」


「明日に…?!いや無理ですよ?俺にも準備やらなんやらありますし」


俺は焦って答える。


「私の言うことが聞こえないのか?」


「…はいはい分かりましたよ」




という事である。

そんな訳でこの学園へ呼び出されたのだ。


『私はこの学園に来るのは余り乗り気じゃなかったんだがな』


と後ろからイリスに喋りかけられる。

精霊は剣状態でも契約者となら話すことが出来る。

他人から見れば俺はおかしいやつにしか見えないわけだが。


「うおっ!ビビったな!いきなり喋りかけんな!」


『すまんすまん。ほら、学園が見えてきたぞ』


イリスに言われるままに前を学園が見えてきた…。


と思いきや、横から人影が見えた。

俺は咄嗟に回避行動を行うが間に合わなかった。


俺はその人の上になるように倒れる。



「いってぇな…ったく、ちゃんと前を見て歩け!」


ん?いや待てよ?なんだこれ…?

手の先には何か柔らかいものが…。

これは…。

…まさか、こいつ女?!

今すぐに離れるか?

どうする?

いや、こんな体験は滅多にない。

ぶつかってきたのは相手だ。

俺には非はないはず。

よし、もっと揉んでおこう。

と、俺は手の先を動かし続ける。

触感が素晴らしい…だが少し小さい?

いや、この程度が丁度いいのか?


「んっ…///ちょ…死ね!このへ、変態!」


と言って女は俺の頬を手の平で思い切り叩く。


「いってぇ!」


俺は叫んだ。


「なっ、なにするのよこの変態!焼き尽くすわよ!」


と言って少女は魔導書を召喚し炎属性魔法の詠唱を始める。


「焔を司る神よ。今こそ我に力を与えたまえ!」


「ちょ!待てって!高位の炎属性魔法は控えめに言って死ねる!落ち着けって!」


「その目に映る全てを焼き払え!インフェルノ!」


チッ…仕方ない。


俺は高位魔法の発動までにかかる時間を利用してイリスの具現化した姿、龍碧剣を引き抜いた。

音を出すこと無くインフェルノの発動の瞬間に剣を斜めに振りかざす。


「剣崎流・鏡華の構え!」


俺は型名を叫ぶと剣をクロス字に振る。

青白く光る美しい斬撃がインフェルノを破壊する。


「インフェルノが無効化された!?」


女の子は酷く焦っている。


「頼みからあんな大技をこんな所で使わないでくれ…」


俺は剣を鞘にしまいながら言う。


「…そ、それはあなたが私のお、おっ…胸を触ってきたから…」


「…それについてはすいません。お願いします許してください出来ることなら多分しますから」


「…にしても私のインフェルノを無効化するとは…あなた、何者?」


「俺は剣崎竜也、竜也でいいよ。今日からここに転校する事となった。よろしく頼む」


俺は何年ぶりになるか分からない自己紹介を行い、手を出す。


「珍しい名前なのね…。私はアリア・ソーディ。特別にアリアと呼ぶことを許可するわ。因みにこの私はこの学園では五本の指の内の一人に数えられるほど強い存在よ」


アリアは俺の手を握る。


「そんなに強かったのか…」


「ええ、だからさっきあなたにインフェルノを無効化された時には驚いたわ。初めての体験だったもの」


…なんか初めての体験って響きがエロいな…。


「そうだ、学園長室に案内してくれよ」


「えぇ…。この私が道案内?いやわよめんどくさいわね」


「そこをなんとかっ…!」


俺は土下座して頼み込む。


「はぁ…。仕方ないわね。この仮はいつか返しなさいよ」


「ありがとな、アリア!」


俺は礼を言って、腕時計を見る。


「時間が無い、行こうぜ」


「ええ」


なんて会話をして、俺達は無言で学園長室へと向かった。


「ここが学園長室よ。」


「ここか学園長室か…。随分と大きな扉だな…」


そこには大きくそびえ立つまるで見るものを威圧するような扉が建っていた。


「じゃ、私は自分の教室に戻るから、後は頑張ってね」


と、言い残してアリアは行ってしまった。

俺はごくりと唾を飲み込み、ゆっくりと手を動かし扉をノックする。


「入れ」


と、学園長の声がする。


俺は大きな扉を力いっぱい拳に力を入れて押し開ける。



ここから、俺のとてつもなくめんどくさい人生が再スタートするのであった。

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