第一章 REVIVAL
闇が明けた。
意識が戻った。
まだ歪み霞む視界が、真っ白な眩しさに溢れていたせいで、ジュエル・ナズュールは自分が死んだのではないかとさえ錯覚した。
「……」
体を起こそうとするが、まるで力が入らない。腕を上げようとするが、僅か数センチ上げるだけで精一杯だった。
そのあまりの不自由さに、ジュエルは自分がまだ生きているのだと認識する。
そも、自分は何故死んだと思ったのだろうか。それがどうにも思い出せない。何かショッキングな出来事があったような気がするのだが……
丁度その時、扉が開く音がした。だが未だジュエルの視界は霞んだままで、そこに立つ人影が何者であるのかまではよく見えない。
「誰?」
彼女はなんとか発音した。正直、口を開くのも億劫で、喉は一瞬発声を拒否したが、そこは強く念じて声を形にした。
すると扉の方からも、感嘆の声がした。すぐさま白い人影が、何事か叫びながら走り去っていった。
後に残ったのは、紺色の人影。
その人影は、ジュエルの方へゆっくりと歩み寄ると、ジュエルに穏やかに話し掛けた。
「良かった。目が覚めたのね」
優しい声は、旧友の物であった。
しかしその声を聞いたジュエルは、記憶の底に針を刺されたような気分になった。おぼろげだった彼女の記憶が、徐々に輪郭を帯び……そして、フラッシュバックした。
「!」
ジュエルは息を飲んだ。そうだ、この人物は、あの時!
「あなた……生きてたの?」
昏睡から目覚めたばかりとは思えない発言をする。それを聞いた紺色の服の人物は、またしてもゆっくりと言葉を紡いでいく。
「なんとかね」
ジュエルはその声と言葉に、深く安堵した。途端に、疲れが押し寄せてくる。眠気が強い。ジュエルは霞む目を閉ざし眠りへと落ちながら、話し相手に告げた。
「軍に、戻った方が、安全でしょ……」
返事があったかどうか、ジュエルにはもうわからなかった。次に彼女が目覚めた時、病室には誰もいなかった。